研究課題/領域番号 |
20K12221
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64020:環境負荷低減技術および保全修復技術関連
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
井上 雅裕 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 研究員 (80203256)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 植物の金属耐性 / 植物の金属集積 / ファイトリメディエーション / ナトリウムイオン / リチウムイオン / セシウムイオン / バイオリガンド / 植物の金属集積性 / ナトリウム(Na)イオン / リチウム(Li)イオン / セシウム(Cs)イオン / 植物の金属イオン集積 / 植物環境汚染修復技術 / リチウムイオン (Li) / セシウムイオン (Cs) / ナトリウムイオン (Na) |
研究開始時の研究の概要 |
モデル植物(トマト、スベリヒユ、アイスプラント)3種を中心に、有害金属3種(Na, Li, Cs)の吸収・輸送・集積および塩耐性と成長、形態変化を解析する。さらに、各器官の生理・代謝活性に対する各金属の作用を比較し、金属毒性の原因と金属集積・耐性機構を解明する。2年目からは、各植物の組織・細胞培養も導入し、Kと上記アルカリ金属4種間の相互作用に焦点をあてる。特に、輸送体、有機リガンド、無機アニオンの果たす機能を解明する。さらに、地表面に分布する野生植物にも研究調査を広げる。全体の研究成果に基づいて植物科学研究の発展に貢献し、高塩環境下における植物環境浄化技術の確立に向けて情報を発信する。
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研究実績の概要 |
2020年度(初年度)の研究では、主に、ナス科のモデル植物であるトマト(マイクロトム品種)を用いて水耕栽培を行い根から与えたLiイオンの影響を調べ、各器官の成長 と形態変化、吸水・蒸散速度の変化、Liの吸収輸送と分布変化等について解明を行なった。 2021年度の研究では、トマトの植物体(芽生え)だけでなくその培養細胞(懸濁細胞)も用いてNa、Li、Csイオンの影響を比較検証することで、各金属イオンの持つ特異的な作用と共通する作用、そして、それら金属イオンに対する細胞レベルでの耐性機構の解明を行なった。その成果の一部を3件の国内学会(中国四国植物学会、日本植物学会、日本植物生理学会)のオンライン発表で公開した。また、双子葉植物のトマトに加えて、金属集積性に優れる単子葉イネ科植物のイネとコケ植物蘚類のユミダイゴケ(原系体)についても各々に特異的な金属集積・耐性機構を解明し、成果の一部を計5件の国内学会オンライン発表により公開した。 2022年度の研究では、まず、2021年度から新たに実施を計画していたアオウキクサの4種について基礎実験を行い、アルカリ金属Na, Li, Csと重金属Niのイオン吸収及び耐性評価に関する有益な成果を得た。さらに、当初計画から予定していた条件的CAM植物2種(アイスプラントとスベリヒユ)と恒常的CAM植物2種(コダカラソウとキンチョウ)を用いて、アルカリ金属の吸収・集積特性および金属耐性評価を行なった。また金属結合性バイオリガンドである有機酸の定量分析も行い、リンゴ酸ではなくクエン酸の重要性を明らかにした。これらの成果を国内学会(日本植物学会・日本植物生理学会)での発表により公開した。また、論文1編を共同研究者として公表した。 以上が研究実績の報告です。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度も2020・2021年度と同様にコロナ禍の影響で当初計画通りに進めない部分が多かった。特に予定した出張などは殆ど行うことができなかった。学会発表なども全てオンライン発表で対応した。ただし、JSPP外国人招聘研究者(短期)事業に基づいて共同研究者(外国人研究者)1名を2022年9月の30日間、本学部に向かえることができて、共同研究と研究交流、学内セミナー、学会参加(日本植物学会京都大会)等を実施した。しかし、その後、2月当初に計画していた海外出張(デリー・コルカタでの研究交流とセミナー)は世界情勢と日程再調整の不調のため中止を余儀なくされた。その他の調査研究等に関わる出張も殆ど行えなかった。一方、室内における植物の成長・栽培実験および一部のサンプルの有機酸分析についてはほぼ予定通りに実施できた。しかし、本学共同利用施設の機器を利用して行う予定の元素分析やバイオリガンド分析は機材の故障や老朽化もあって遅れが生じたためまだ完了していない。本年3月に2023年度末まで本事業の補助事業期間延長が承諾されたので、2023年度も研究を継続してこの間に必要なデータの収集と成果の取りまとめと公開に注力したい。
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今後の研究の推進方策 |
2020-2021年度の研究からアルカリ金属のうち特にNaとLiについてはかなりの情報を得ることができた。2022年度には、CsとNiについての情報を得ることができたが、また総括できる状態には至っていない。 今後、期間延長が承諾された2023年度は他の重金属や軽金属イオンについても注目して研究成果をまとめ、本研究の最終目標である植物環境修復技術(PR)の改善に資することができる情報提供に結びつける予定である。2022年9月にはJSPS及び愛媛大学IIRスタッフと理学部チームの尽力でPR専門家である海外共同研究者1名を招聘することができた。これからも同氏と十分な考察と議論を重ね共同研究の形で成果を総括する計画である。その一つとして、7月末には共同編集者として植物のLi・Ni集積に関する専門書「Lithium and Nickel in Plants and the Environment」をWorld Scientific Publishing社から出版する予定である。9月には日本植物学会、12月にはインドへの海外出張などによって研究成果を公開する計画である。 2023年度に実施する実験として、条件的・恒常的CAM植物4種を中心に金属分析および各金属における結合物質・集積物質分析を進める。特に、有機リガンドのうち有機酸とアミド(ヒスチジン/プロリン)の相関解析を進めこれらと塩集積性との関連性およびPR技術に応用可能な原理について総括を行う。
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