研究課題/領域番号 |
20K12229
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64020:環境負荷低減技術および保全修復技術関連
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研究機関 | 愛知工業大学 |
研究代表者 |
西村 聡子 愛知工業大学, 工学部, 准教授 (90609322)
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研究分担者 |
飯島 信司 愛知工業大学, 工学部, 教授 (00168056)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | アンモニア酸化細菌 / 環状ジヌクレオチド / バイオフィルム / 生物学的窒素処理 / 生物的硝化・脱窒 / 脱窒菌 / 環状ジグアニル酸 / 廃水処理 / 生物学的硝化・脱窒 |
研究開始時の研究の概要 |
生活・工業廃水中に含まれる種々の窒素化合物は河川や湖沼、内海の富栄養化を引き起こすため、大きな環境問題となっている。これらの窒素化合物を処理する方法として、アンモニア酸化細菌や硝化菌などを用いた生物学的硝化・脱窒法が広く利用されている。 一般に細菌はバイオフィルムと呼ばれる立体的な膜構造を形成することで、環境の変化に強くなることが知られている。そのため、生物学的硝化・脱窒に関わる細菌のバイオフィルム形成制御は、廃水処理において重要な意味を持つ。 本研究は、アンモニア酸化細菌や硝化菌のバイオフィルム形成の制御機構を解析することで、生物学的硝化・脱窒過程の高効率化をめざすものである。
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研究実績の概要 |
廃水中の窒素化合物処理のため、微生物を用いた生物学的硝化・脱窒法が広く利用されている。このうち硝化・脱窒の過程においてそれぞれ重要な役割を果たしているアンモニア酸化細菌Nitrosomonas europaeaおよび脱窒菌Paracoccus denitrificansは、廃水処理プラント内でバイオフィルムを形成していると考えられる。本研究では、このバイオフィルム形成制御機構を明らかにすることで、生物的硝化・脱窒過程の高効率化をめざす。特にN. europaeaは極めて生育速度が遅く、種々の環境要因によって増殖効率が大きく影響を受けることから、生物学的窒素処理の課題となっている。今年度は主にアンモニア酸化細菌に焦点をあてた検討を行った。 1)c-di-GMP代謝関連遺伝子の解析:多くの細菌で環状ジグアニル酸(c-di-GMP)がバイオフィルム制御に関与することが知られていることから、N. europaeaのc-di-GMP代謝関連遺伝子のクローニングを行っている。クローニングが完了したc-di-GMP合成・分解遺伝子についてタンパク質発現を確認し、また酵素活性を確認した。さらにin vivoでの活性確認のため、swarming活性測定用の菌株へのクローニングを進めた。また、c-di-GMP合成・分解酵素は種々のセンサードメインをあわせもつものが見られることから、培養条件による遺伝子発現の変化について検討を行った。 2)N. europaeaへの遺伝子導入に向けた検討: 昨年度に引き続き、アンモニア酸化細菌への遺伝子導入のため、固体培地でのコロニー形成条件を検討し、安定してコロニーを単離することが可能となった。 3)細菌内c-di-GMPの定量:昨年度に引き続き、細菌内c-di-GMPの定量法の検討を進め、大腸菌と比較し高レベルのc-di-GMPが存在することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)c-di-GMP代謝酵素遺伝子のクローニングおよび酵素活性の検討: 前年度に引き続き、N. europaeaのc-di-GMP合成酵素・分解酵素遺伝子のクローニングをさらに進めた。得られた発現プラスミドを大腸菌に形質転換し、大腸菌での大量発現を行い十分量のタンパク質を得た。また酵素活性を確認するため、基質GTPからのc-di-GMP合成反応、あるいはc-di-GMP分解反応を行い、in vitroでの酵素活性を確認した。さらにin vivoでの活性確認のため、swarming活性測定系へのクローニングを進めた。 2)c-di-GMP代謝遺伝子発現の検討:c-di-GMP代謝酵素は種々のセンサードメインをあわせもつものが見られることから、培養条件による遺伝子発現の変化について検討を行った。 3)N. europaeaの培養法の改良および遺伝子導入に向けた検討:培養条件の検討により、固体培地上でのN. europaeaのコロニー形成をより安定して再現できるようになったことら、N. europaeaへの遺伝子導入の基礎条件が整った。 4)環状ジヌクレオチドの定量方法の確立:昨年度に引き続き、細菌内に極微量に存在するc-di-GMPの定量法の検討を進め、大腸菌と比較し高レベルのc-di-GMPが存在することを明らかにした。 これらのことから、おおむね計画通り推移しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
すでにクローニングの完了したN. europaeaのc-di-GMP合成・分解酵素遺伝子についてin vitroでの酵素活性の測定をさらに進めると同時に、swarming活性測定などにより生理活性の検討を行う。またこれらの遺伝子に存在するセンサードメインを欠失させまたは変異導入することでその機能の解析を行う。これらの検討により、N. europaeaに複数存在するc-di-GMP合成酵素・分解酵素遺伝子がどのように作用しているのかを明らかにしたい。 N. europaeaにおいて、c-di-GMPの合成に必須のGGDEFドメインと分解に関わるEALドメインの両者をあわせもつ遺伝子が複数存在することが明らかになっている。これらの遺伝子についてもクローニングと活性の解析を進めると共に、培養条件による遺伝子発現の変化についても検討を行う。 またこれまでの基礎検討の結果をふまえ、N. europaeaへの遺伝子導入を進め、c-di-GMP代謝関連遺伝子の欠失株あるいは過剰発現株を作成し、その活性を解析する。これらにおけるバイオフィルム制御の変化、また硝化過程やその調節に関わる遺伝子の発現変化を解析することで、c-di-GMPのバイオフィルム形成および硝化過程への関与を明らかにしたい。
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