研究課題/領域番号 |
20K12236
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64030:環境材料およびリサイクル技術関連
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
山本 勲 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (40242383)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2021年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 磁気濃縮 / 希土類イオン / マッハツェンダー干渉計 / ハルバッハ配列磁石 / 磁場効果 / 磁気力 / リサイクル / 高勾配磁場 / 磁気力効果 / 濃縮 / 回収 |
研究開始時の研究の概要 |
貴重な資源である希土類金属を効率的にリサイクルするために、磁気的に水溶液中の磁性イオンを濃縮・分離する技術を確立する。磁性イオンにかかる磁気力は磁場と磁場勾配の積である磁気力場に比例し、これまで10 T級の超伝導磁石による強磁場を用いた研究でも、大きな効果は得られていなかった。本研究では、ネオジム永久磁石に狭いギャップを設定することで強い磁場勾配を発生させる。その磁気力場を10万 T^2/mに増加させることにより、希土類イオンの駆動力を従来より2桁増加させる。これまでにない分離濃縮を実現する。希土類の種類に特有の磁化率に応じた分離濃縮の短時間化と高効率化をはかる。
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研究実績の概要 |
ネオジム永久磁石をハルバッハ配列にして磁束密度0.5 T、磁気力場90 T^2/mに増強した磁気力場を用いて、水溶液中のDy濃度を1.00 wt.%から20分間で1.12 wt.%まで濃化させることに成功した。 マッハツェンダー干渉計を用いることで濃度変化をその場観測できる測定系を構築し、40 ミクロンの空間分解能、33 msの時間分解能、0.25 x 10^-3 wt%の濃度分解能を実現した。10x10x50 mm^3の光学セルに試料溶液を入れ、セルの上面、側面、底面に磁石を配置し、磁気濃縮の挙動を観測し、可視化した。磁石の位置によって最高濃度と最高濃度に至るまでの時間、最高濃度からの濃度低下の様子に顕著な差が生じた。 磁石を上面に配置した場合、60 s後に最大0.16 wt.%に達し6%の濃化が観測された。その後緩やかに濃度は低下し、1200 s後に濃化は消失した。磁石を底面に配置した場合は、150 s後に最大7%の濃化が観測され、その後磁石上の配置より緩やかに濃度が低下し、1200 s後でも6 %の濃化を維持した。この濃縮挙動の差は、濃度の高い溶液は比重が高いので密度差対流が原因であると考えられる。この数%の濃化率は、磁気エネルギーから計算した期待値の数千倍の大きさであり、過渡的にどのような現象が起こっているかは未解明である。 さらに濃縮を高める方法として、メンブレンフィルター装着による蒸発の補助による濃化を調査した。蒸発補助によって濃化が減衰せずに濃化がより進行し、初期濃度1.00 wt.%を1.12 wt.%まで12 %濃化することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に構築した光学測定による濃度測定系および信号処理~可視化プログラムを改良し、濃度測定の時間分解能、空間分解能、濃度分解能を向上させ、磁気濃縮プロセスを詳細に評価した。Nd永久磁石をハルバッハ配列にして濃縮対象である希土類イオンにかかる磁気力を増強し、磁石配置及び蒸発効果を追求した。 磁石近傍の濃度変化を可視化して観測したところ、イオンの移動速度が当初予想より桁違いに速く、結果として濃度も数分から1-2時間以内で極大値をとることが分かった。磁石近傍の濃縮領域の密度が高くなる結果、密度差対流が誘起されることが分かった。濃度が高くなった部分が消失するように対流によって濃度の均一化が起こった。この一連の濃化~均一化は、磁気濃縮セルの上面に磁石を配置した場合で顕著であった。磁石の配置を側面や底面に配置した場合でも観測され、磁石の配置によらず現れる普遍的な現象であるという知見を得た。また、過熱による蒸発濃縮と同じメカニズムによる濃縮効果を、メンブレンフィルターによって確認した。溶液の水分子だけを透過するフィルター近傍のDyイオン濃度が高くなり、磁気濃縮と相乗効果があることを見出した。 結果として、本研究の到達目標である24時間で10 %の濃化について、磁石近傍の数mmの範囲であるが、初期濃度1.00 wt.%のDy希薄溶液を1.12 wt.%まで12 %の磁気濃縮することに成功した。この磁気濃縮値は、希土類イオンの磁気エネルギーと熱エネルギーの比から熱力学的に計算される濃縮の平衡状態と比較して、千倍以上高かった。過渡状態で桁違いに高い濃縮が起こる実験事実は驚くべきことである。しかしながら、バッチ処理であるために大量の濃縮処理には適さず、装置改良が必要であることが判明した。
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今後の研究の推進方策 |
2年目の中間年度で、本研究の到達目標である「24時間で10 %の濃縮」を達成した。初期濃度1.0 wt.%のDy希薄溶液ですでに12%の磁気濃縮に成功した。しかしながら、磁石近傍の数mmの範囲であり、小型装置を用いたバッチ処理であるために濃化領域は少量であり、大量の濃縮処理には適さず、装置改良が必要であることが判明した。スケールアップは解決策の一つであるがNd磁石を用いる以上は高磁束密度である濃縮範囲を広げるような本質的な改良ではない。またスケールアップは反応領域の光学測定には適さず、濃度解析も困難が予想される。 そこで3年目の最終年度は連続濃化に挑戦し、安定に濃縮液を回収できるシステムの構築を目指す。磁気濃縮による高濃度の濃縮液を連続抽出し、さらに濃化サイクルを多段で組むことで、連続的な濃化プロセスを構築することができると考えている。最終的に当初目標の10倍に相当する「24時間以内に100 %濃縮」すなわち2倍に濃縮した希土類イオン溶液の回収を目指す。 希土類イオンのなかで最も濃縮に適したDyイオンについて磁気濃縮挙動を観測してきたが、磁化率の異なるほかの希土類イオンについて磁気濃縮挙動を追求する。各イオンの磁化率は判明しているので、Dyイオンと対比して磁気濃縮の一般論へ展開する。 2種類以上の希土類イオンを含む溶液からそれぞれのイオンの濃縮挙動を観測する。現在の光学系ではイオン種を区別して観測できないが、メカニズムを追求し、それぞれのイオンを分離する手法開発に挑戦する。
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