研究課題/領域番号 |
20K12254
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64040:自然共生システム関連
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
伊藤 浩二 岐阜大学, 地域協学センター, 助教 (30530141)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 生物多様性 / 生態系サービス / 耕作放棄地 / 省力的管理 / 資源循環 / 社会生態システム / 生態系機能 / アンダーユース / 里山管理 / 粗放的管理 / 刈敷 / 地域資源循環 / 持続可能性 / 里山 |
研究開始時の研究の概要 |
里地里山のような社会生態システムでは、先進国を中心に人口減少の影響で管理放棄が進行し、放棄地が拡大している(アンダーユース問題)。生態系が持つ環境改変・改善機能を生かした耕作放棄地管理を行うことで、生態系保全と新たな生態系サービス獲得を同時に達成することが、アンダーユース問題解決の鍵となる。本研究では、耕作放棄地の持続的管理と活用を目的に、実際の社会生態システム(クヌギ林生態系、水田生態系)において、遷移段階が異なる林分、耕作地を対象に①生態系復元、②生態系サービス(特に供給サービス)、③復元・管理コストを継続調査し、4年間でこれらの指標が対照地と比較し高いレベルで同時に達成可能かを検証する。
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研究実績の概要 |
里山における生物多様性の保全と持続可能な生産活動の同時実現に向け、複数の生態系サービス間の相乗効果を生み出す新たな農林業システムの構築が必要とされている。特にアンダーユース問題が深刻な里地里山において、放棄地管理のインセンティブが働く新たな里山生産システムの創造が求められている。本研究は管理放棄地の持続的管理と活用を目的に、石川県で実際に展開される社会生態システム(薪炭林、水田)および新たな利活用方法の創出を目指す管理放棄法面において、①生物多様性、②生態系サービス(供給サービス)、③復元・管理コストをそれぞれ指標として調査し、これら3指標が同時に高いレベルにおいて実現可能かを検証した。 研究3年目は、①耕作放棄地由来の裁断ヨシを活用した、イネ栽培水田への刈敷投入とタンニン鉄の同時供給による水稲栽培改善効果の検討、②法面放棄地における効果的なセイタカアワダチソウ管理と生物多様性・生態系サービス創出間の関係の検討、③クヌギ植林地における製炭原木の生産効率の検討を中心に実施した。①については、玄米生産量に対し統計的に有意な効果を見出せなかったが、栽培するイネ品種の違いの影響が考えられた。②については、6-9月期間中、年3回以下の刈取りではセイタカアワダチソウのさらなる増殖を招く恐れがあり、景観上の問題を解決するには6-9月の毎月の草刈り(計4回)が必要であることが判明した。③については、樹高および胸高直径から材積推定と年間成長速度を算出すると共に、原木収穫時の伐採方法の違い(地際伐採か地上50㎝伐採)による萌芽成長状況の調査を行い、木炭の生産効率を高めるための管理方法について検討した。 これらの技術的成果と生物多様性保全のエビデンスをさらに発展、積み重ねることで、現代的なニーズに対応した、生産と生態系保全の両立が可能な社会生態システムの創生が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
進捗状況は以下の通りであった。水田社会生態システムについては予期せぬ実験結果が出たため、研究計画を柔軟に変更しメカニズムの解明に力を入れることにした。 ①薪炭林社会生態システム:これまでに植林施業履歴の異なる林分ごとに林床植生の群落組成調査(R2)を実施したほか、クヌギ植林地での毎木調査を実施し(R3, R4)材積推定と炭材に最適なクヌギ林施業方法の検討を行った。 ②水田社会生態システム:ヨシ刈敷による水稲栽培効果についての予備圃場試験(R2)、ヨシの最適投入量を検討するための野外区画実験(R3)を経て、ヨシ刈敷の投入効果を高めるため窒素固定細菌の活性化を意図したタンニン鉄の添加実験(R4)を実施した。 ③法面放棄地:野外実験区を用いた、肩掛け式刈払機を使用した草刈頻度の違いによるクズ群落の植物種組成変化の検討(R2)を経て、ハンマーナイフモアを使用した、クズ・セイタカアワダチソウ繁茂地における省力的植生管理方法に関する効果検証(R3-R4)を継続実施した。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度(研究期間最終年)においては、引き続き里地里山の放棄地管理の実践可能な新たなオプション提案に向けて、地域の実践者らとの協働によりデータに基づいた効果検証を継続して進めていく。薪炭林社会生態システムについては効率的な炭材確保につながる施業方法と生物多様性・生態系サービス向上の両立につながる管理手法の開発を進める。水田社会生態システムにおいては、ヨシ刈敷投入、鉄材投入による玄米収量及び玄米品質に対する効果検証を、土壌栄養塩レベルとコメの品種を変えたイネのポット栽培試験を行い、ヨシ刈敷の投入効果が現われるメカニズムの解明に取り組む。法面放棄地については、年4回の刈取りによるセイタカアワダチソウ抑制効果と生物多様性保全の検証を継続し、省力的管理法と生物多様性・生態系サービス向上の両立につながる管理手法の開発を進める。
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