研究課題/領域番号 |
20K12262
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64040:自然共生システム関連
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
西原 昇吾 中央大学, 理工学部, 共同研究員 (90569625)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | ため池 / 生物多様性 / 水生昆虫 / 防災 / 野外操作実験 / 水位変動 / 維持管理 / 工法 / 水生植物 / 地域住民 / 保全 / 農村地域 |
研究開始時の研究の概要 |
農業用ため池は生物多様性保全に大きく寄与し、多くの絶滅危惧種が残存する。しかし、近年の管理放棄や集中豪雨災害にともない、廃止の動きが急速に進行している。そのため、ため池の生物多様性保全は喫緊の課題である。本研究ではまず、廃止ため池の選定において、生物多様性保全を重視する手法を解明する。次に、防災上廃止せざるを得ないため池では、地域住民が災害予防、災害時の水の確保などの社会的な必要性と生物多様性保全の重要性を認識するための手法を開発し、あわせて、生物多様性への影響を軽減する工事手法を明らかにする。その際、ため池の水位変動が生物に及ぼす影響に着目し、生物多様性保全に向けた、ため池の管理指針を示す。
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研究実績の概要 |
全国で16万ヶ所以上存在する農業用ため池は多面的機能をもち、生物多様性保全に大きく寄与し、多くの絶滅危惧種が残存する。しかし、近年の管理放棄、さらには集中豪雨災害にともない、ため池を改廃する動きが急速に進行し、2019年の「農業用ため池の管理及び保全に関する法律」に続き、翌年には「ため池工事特措法」も施行された。7万弱が防災重点ため池に選定され、管理が求められているが、廃止の動きも加速化している。一方で、規模が小さく、ため池データベースに未登録の池も廃止のおそれがある。そのため、水生生物にとって重要なため池を選定し、保全することは喫緊の課題である。 本研究では、防災重点ため池の中で、絶滅危惧種の多い池などについて、保全上重要なため池として選定する手法を開発し、その成果を行政と共有し、ため池の保全を進めている。また、ため池の水深や水位変動が水生生物に及ぼす影響を明らかにするために、野外操作実験を開始した。 岩手県の最深部を30㎝、90㎝、150㎝の3段階の水深とした4m四方の計18の実験池における3年間の調査の結果、フサカ幼虫と一部のミジンコ類はほとんどが深い部分で確認され、ミズカマキリ、ツチガエル成体も深い部分での確認が多かったが、いずれの種も季節毎に利用状況は異なった。一方、多くの種は、深い池の深い部分よりも、浅い池および深い池の浅い部分の両方で確認された。また、ゲンゴロウも水深150㎝の池で早春に交尾個体が確認され、越冬していたことが推測され、水深のある池が水生生物にとって重要であることが示唆された。以上より、防災重点ため池工事において水深を維持することは、越冬期などに深い場所を利用する生物に必要であり、水域の湛水期間の増加が多くの生物の生息につながることから、生物多様性保全に有用と考えられる。これらの結果を通じ、今後の生物多様性保全に向けた、ため池の管理指針を示す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
石川県のため池の生物相に関する調査結果を整理するとともに、最重要である池での調査を継続し、防災重点ため池の現状、工事後の状況について把握した。また、ドローンを用いたため池の現地調査も開始した。一方で、行政との協議を再開したが、現地における地域住民とのやり取りは、新型コロナウイルス感染症のために不可能であった。また、岩手県一関市における野外操作実験用の池は2021年に久保川イーハトーブ自然再生研究所によって創出され、以後、そこでの生物相調査を継続し、その結果が出始めている。
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今後の研究の推進方策 |
防災重点ため池の中で、重要な池の現状調査を進め、中でも保全上重要な種の生息状況を調査し、工事によって残された水位との関係を引き続き検証する。また、野外操作実験用の池で調査を継続し、水深や水位変動が水生昆虫に及ぼす影響について検証する。これらの結果に基づいて、適切な水位を維持する様な維持管理手法、工事手法を明らかにし、行政とともに現場で実践する。新型コロナウイルス感染症の状況が落ち着くとともに、地域住民へのアンケートなどによる、利用管理状況の解明や、地域の保全への意識の向上につながる方策の検討を開始する予定であったが、2024年1月の能登半島地震の発生により、実施は不可能となった。一方で、能登半島地震によるため池への被害状況調査、生物相への影響調査を通じ、今後の適切な水位管理を行政、地域住民とともに実施し、2026年に予定されるトキの野外放鳥に向けての水辺の生物相の維持を進めることが喫緊の課題となった。また、本調査の中で、急速な気候変動の影響が池の生物相にも及んでいることが明らかとなってきており、こちらも影響の解明と保全対策を開始すべき状況となっている。
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