研究課題/領域番号 |
20K12320
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
帯谷 知可 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 教授 (30233612)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 白系ロシア人 / ウズベキスタン / 日本 / ロシア / ソ連 / 東京外国語学校 / アレクサンドル・ミチューリン / ニーナ・ミチューリナ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、東京外国語学校のロシア語教師だった白系ロシア人アレクサンドル・ミチューリンの家族文書がタシュケント市(ウズベキスタン)で発見されたことを受け、地域研究希少資料の保存・共有・利用の観点から、この文書をカタログ化・データベース化し、ロシア、満州、日本、ソヴィエト・ウズベキスタンを経て、ソヴェイト・ロシアへ帰還したこの家族の歴史的経験を日本とユーラシアをつなぐ現代史の中に位置づけて描くこと、それにより白系ロシア人研究および中央アジア・ロシア人研究に貢献することを目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、ロシアから満州を経て日本に到来し、東京外国語学校(当時)でロシア語教師として勤務したアレクサンドル・ミチューリンとその夫人ニーナが残した家族アーカイヴがウズベキスタンの民間に保管されていることが判明したのを受け、当該アーカイヴの保管者であるL.コザエヴァ氏と共同でそれをカタログ化・データベース化すること、また、夫妻の移住と帰還をユーラシア現代史の中に位置づけ、白系ロシア人のソ連の非ロシア地域への帰還の実態と意味を考察することを目的としている。 本課題の開始年度よりコロナ禍によりウズベキスタンへの渡航や国内出張がかなわない状況が続いたが、2021年度までに予備調査時に仮撮影した情報をもとに当該アーカイヴの暫定版リストを作成し、ディスカッション・ペーパー、帯谷知可・L.コザエヴァ編『ある白系ロシア人家族の軌跡―ウズベキスタン共和国タシュケントに残るミチューリン家アーカイヴ』(CIRAS Discussion Paper No. 115、京都大学東南アジア地域研究研究所、2022)のデータ作成を行った。ミチューリン夫人と直接交流のあったコザエヴァ氏から見たミチューリン夫妻像が明らかになった。 2022年度はようやくウズベキスタン渡航がかない、当該アーカイヴ現物の本撮影と暫定版リストとの照合を実施し、リストを完成させた。その結果、当該アーカイヴの所収資料件数は231件とカウントでき、ロシア語・日本語・英語・中国語などによる、書簡・原稿・草稿・論文抜き刷り・文書・写真・絵葉書・地図・新聞切抜・ミチューリンが教えた学生による提出課題などが含まれており、ミチューリンの足跡や日本における交流関係、その関心をたどることのできる資料も見出すことができることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度はようやく新型コロナ感染が下火となり、本課題の対象となる家族アーカイヴの再確認・本撮影、海外研究協力者との成果とりまとめに関する打ち合わせ等を目的とするウズベキスタン現地調査が実施できる見込みであった。しかし、8月に予定していた現地への渡航は、ウクライナ情勢等により航空運賃が通常の2~3倍に高騰していたため、本課題のとりまとめに必要な経費を確保する必要から、渡航を見送らざるを得ない状況となった。その後、航空運賃価格が緩やかに下がったため、2022年12月~1月に現地調査は実施することができたが、その分研究計画が後ろ倒しとなったため、研究期間の延長を申請することとした。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は、以下の通りである。 (1)当該アーカイヴのカタログ化については、2021年度にディスカッション・ペーパーとしてデータ作成した暫定版リストを補完し、日本語・ロシア語の2言語対応とする作業を行う。それをさらにデータベース化し、当該アーカイヴの保管者であるL.コザエヴァ氏の同意が得られれば、公開して広く関心を有する人々の利用に供する。カタログ化・データベース化は本課題の成果発信のひとつと位置づけられる。 (2)当該アーカイヴおよびL.コザエヴァ氏から得られたミチューリン夫妻に関する情報を日本ににおける白系ロシア人研究の先行研究と突き合わせ、さらに国内資料調査等により、ミチューリン夫妻の東京での活動、特にニーナ夫人のソ連領ウズベキスタンへの「帰還」の経緯を明らかにする。 (3)「帰還」したソ連人をめぐる当時のウズベキスタンの状況、ニーナ夫人が身を置いたタシュケントのロシア語話者のコミュニティについても情報を収集する。 (4)上記(1)~(3)をふまえ、本課題のもう一つの成果発信として、ミチューリン夫妻の歴史的経験を日本とユーラシアをつなぐ現代史の中に位置づけて描く書籍として刊行することを検討する。
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