研究課題/領域番号 |
20K12328
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
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研究機関 | 同志社大学 (2021-2023) 成蹊大学 (2020) |
研究代表者 |
立石 洋子 同志社大学, グローバル地域文化学部, 准教授 (00633504)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | ロシア / ウクライナ / ソ連 / 記憶 / 記念碑 / 歴史教育 / 歴史認識 / アイデンティティの政治 / 移行期正義 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、1980年代後半のソ連における政治改革のなかでスターリン期の歴史が再検討される過程と、それがソ連解体後のロシアの政治改革に与えた影響を、歴史教育改革をめぐる論争を中心に明らかにすることである。 本研究の学術的独自性と創造性は、ソ連末期とソ連解体後のロシアにおける歴史の再検討を移行期の社会における正義の回復、民主化、社会の再建と統合の試みという観点から分析する点、ならびにその手掛かりとして歴史教育改革を中心的な検討対象とする点にある。 これを通じて、ソ連・ロシアだけでなく、体制転換と民主化を経験した諸国で歴史教育改革が移行期正義の実現に担いうる役割を明らかにすることを目標とする。
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研究実績の概要 |
昨年度と同様にロシアへの渡航が困難であったことから、国内での資料収集の可能性を考慮し、歴史教育だけでなく、歴史の評価という点で歴史教育とも関連性の強い記念碑建設をめぐる議論を研究課題に含めた。 まず、昨年度の学会での報告をもとに、1)「ウクライナとロシアにおける記憶の政治と知識人――2000年代後半から2014年のロシアの知識人の活動を中心に――」(『社会科学』53(3)、1-27ページ、2023年11月)、2)「競合する歴史解釈と分裂する社会――現代ロシアの記念碑論争と自国史像をめぐる対立」(『ロシア史研究』 第111号、65-94ページ、2023年12月)を発表した。1)は2000年代後半から2014年までのウクライナ、ロシアの知識人の議論を政治と社会との関わりという観点から検討し、2)は、主に2015年以降のロシアにおける記念碑建設をめぐる論争の動向を分析し、その特徴を明らかにした。 学会での報告としては、2023年11月19日に開催された西洋史研究会大会(オンライン)の共通論題「ファシズム・ナチズム・スターリニズムーー20世紀『非リベラル』諸体制の歴史的把握をめぐって」で、「ロシアにおける全体主義論とファシズム論――スターリン体制の評価を中心に」と題する報告を行った。また2024年3月20日には、九州大学で開催されたシンポジウム「「歴史総合」時代のロシア史」で報告し、主に2020年以降のロシアにおける自国史教育、教科書の内容の特徴を紹介した。 その他の業績としては、1)エッセイ「ロシアとスターリン時代の記憶」(『青淵』890号、14-16ページ、2023年5月)、2)コラム「ロシアから見たソ連」『現代ロシア政治』(法律文化社、2023年8月)、3)コラム「プーチンの歴史観」『岩波講座 世界歴史24 21世紀の国際秩序』(岩波書店、2023年10月)を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本で入手できる資料を利用して近年の歴史教育の動向について検討を進めるとともに、研究計画を一部変更したことで、当初の研究課題であった歴史教育だけでなく、その他の記憶政策、歴史政策に関連するテーマも研究課題に含めることになり、歴史教育とは別の観点からソ連・ロシアにおける自国史像に関する議論を再検討する機会を得ることができた。 そのため、歴史教育に関する研究は当初の研究計画の予定と比較すれば進展していないものの、記念碑建設に関する議論やロシア・ナショナリズム、ファシズムに関する議論など、ソ連・ロシアの記憶政策、歴史政策の検討に歴史教育とは別の角度から取り組んだことで、一定の成果があった。またこれらの検討を通じて、歴史教育に関する政策や知識人の議論を検討するうえでも有益な情報を手に入れることができたため、当初の研究計画が想定していなかった観点から、今後歴史教育に関する研究を進展させる可能性が生まれた。 以上のことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は最終年度にあたることから、モスクワなどロシアでの資料収集の可能性を再検討するとともに、昨年度と同様に国内で入手可能な資料を用いて、ソ連後期からソ連解体後のロシアにおける歴史教育や記念碑建設をめぐる議論、歴史遺産の保護を目指す運動の発展、ロシア・ナショナリズムに関する議論など、複数の観点からソ連・ロシアの政治改革と自国史像の変化の結びつきを検討し、それらの要素がソ連解体後のロシアの歴史教育改革に与えた影響を検討する。 具体的には、ソ連後期から現代のロシアにおける歴史教育改革の動向に加えて、記念碑建設をめぐる議論、歴史遺産の保護運動と自国史の評価の関連性、ロシア・ナショナリズムと自国史像への影響を検討課題とする。その際、とくに地域による歴史政策、記憶政策の違いやそれに関する議論の地域的な特殊性に注目する。そのうえで、これらの要素が、体制転換期のソ連とその後のロシアの歴史教育改革に与えた影響を明らかにすることを課題とする。
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