研究課題/領域番号 |
20K12330
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
三澤 真美恵 日本大学, 文理学部, 教授 (90386706)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 台湾 / 映画 / 戒厳時期 / 公共圏 / 白克 / 林摶秋 / 何基明 / 戒厳令 / 植民地 |
研究開始時の研究の概要 |
戦後台湾社会には日本植民地統治期からの連続性と抗戦期中国大陸からの連続性という「二重の連続性」が想定される。戒厳令下1950年代、公的に許容された娯楽として絶大な人気を誇った映画は、この「二重の連続性」のなかで、異なる言語と歴史経験をもつ社会集団を依りどころとする「オルタナティブな公共圏」として競合的に形成された可能性がある。 本研究ではひとまず、白克(1914-1964年)、林摶秋(1920‐1998年)、何基明(1916‐1994年)など資料的に着手可能な映画人とその作品を手がかりに、「公共圏」としての可能性をもった戒厳令下1950年代の台湾映画を「二重の連続性」という視角から考察する。
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研究実績の概要 |
2022年9月12日に研究会「戦後台湾映画に関する研究会」を実施し、陳培豊氏「未熟な産業の二人三脚:台湾における歌謡と映画・演劇の互助的関係」、張文菁氏「戦後台湾における通俗恋愛小説の発展――金杏枝・酒家女・台湾語映画『難忘的車站』」の報告を得た。2022年11月5日には研究代表者の三澤が國立臺北大學・霞山會共催シンポジウム「東アジア近現代史の中の変遷・対抗・融和―歴史・教育、産業・経済の視点から」に参加し、本科研で対象としている林摶秋の映画作品に即して「冷戦期台湾映画界における「親日/消日」現象:林摶秋の映画製作を中心に」と題する報告を行った。 2023年3月6日から2023年3月23日には、新型コロナウィルス感染症による渡航制限が緩和されたことにより、ようやく台湾現地調査を実施できた。具体的には国家電影及視聴文化中心、国史館、国立台湾図書館、国立台湾大学図書館などで映像資料、文献資料を調査したほか、アーキビスト薛惠玲氏およびリサーチャー王美齡氏への聞き取り調査、白克監督の遺族である白崇光氏への聞き取り調査、「アマ家:和平與女性人權館」の杜瑛秋氏への聞き取り調査などを行なった。 また、コロナ禍により現地調査ができないなか、インターネット調査を中心に、台湾「慰安婦」問題に関するドキュメンタリー映画が形成したと思われる別様の公共圏に関する研究を、本科研の一部として推進してきた。同課題については2022年7月23日の帝国史研究会第22回例会、2022年7月29日の「台湾の日本軍性暴力被害者・アマたちを記憶し、未来につなぐ会」主催オンライン研究会にて研究報告を行ったほか、2023年3月21-22日には京都大学と国立台湾師範大学が実施した「日台の〈からまりあう歴史〉を解きほぐす」セミナーの第二セッションに登壇し、両大学を中心とする参加者と討議することで考察を深めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年3月にようやく台湾での現地調査を実施することができたが、当初計画にあった1年度目の長期出張および各年度の短期出張は、2022年度の最後の1ヶ月を除いて、実施が不可能だった。このため、当初計画で実施する予定だった各調査項目については、まだ十分な調査ができていない状況にある。具体的には、国家電影及視聴文化中心、国史館、国立台湾図書館、国立台湾大学図書館などで調査対象とするべき映像資料、文献資料については、いずれも当初計画の半分も閲覧できていない。林摶秋監督の遺族への聞き取り調査も、連絡は取れたものの短い滞在のなかでは日程があわず実施できなかった。ただし、コロナ禍により現地調査ができない過去3年間に、インターネット・データベースの調査が有効な、戒厳時期の終わりに浮上した台湾「慰安婦」問題に関するドキュメンタリー映画が形成したと思われる別様の公共圏に関する研究を、本科研の一部として推進しており、これはいわば苦肉の策であるが、本科研が着目している映画による別様の公共圏の形成という点からいえば、当初計画にはなかった成果をもたらしつつあることも付記しておきたい。
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今後の研究の推進方策 |
3年間のコロナ禍によって滞った現地調査の不足を一気に解決できる妙案はないが、今後2年間をかけて少しでも現地調査の機会を増やし、当初予定されていたアーカイブ調査やインタビュー調査を実施し、1950年代台湾映画の形成した別様の公共圏に関する研究の遅れを取り戻したい。他方、コロナ禍のために苦肉の策として開始した1990年代以降の台湾「慰安婦」ドキュメンタリー映画が形成した別様の公共圏に関する研究も進んでいる。戒厳時期の始まりにあたる1950年代と戒厳時期の終わった1990年代という2つの時期において映画が形成した別様の公共圏について統合的な考察を行うことができれば、当初計画にはなかった成果を得られるはずである。なお、研究開始4年度目となる2023年度に当初予定していたのは一定の研究成果が得られた段階での国際ワークショップであった。現状では、当初予定通りの国際ワークショップの実施は難しいが、研究を推進する契機となるような小規模な国際ワークショップを、回数を分けて実施するなどの方策をとりたいと考えている。
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