研究課題/領域番号 |
20K12333
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
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研究機関 | 中央大学 (2022) 福岡女子大学 (2020-2021) |
研究代表者 |
鈴木 恵美 中央大学, 文学部, 教授 (00535437)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | エジプト / 政治史 / 近現代 / 中東 / 軍 / 抗議デモ / 名望家 / 議会 / 政治社会史 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、研究代表者のこれまでのエリートに絞った研究をさらに発展させ、街頭の声にこそ正義があると主張する大衆の側に焦点を当てる。なぜ、エジプトでは抗議デモは収束せず、最終的に議会制を麻痺させ、クーデターを誘発するほどに長期化するのか。そして、なぜデモの激化と軍の介入という同じ展開を繰り返しているのか。本研究は、1923年の立憲制開始以降の抗議デモや暴動を、通時的に同じ指標で考察することで、非公式(街頭)と公式(議会)の政治の対立点を整理し、近代以降断続的に政治を麻痺させてきた負のメカニズムを解明する。
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研究実績の概要 |
当該年度は、本研究課題の二つ目の問題に取り組んだ。それは、エジプトでは政治の混乱に常に国軍が介入してきた背景と、民主主義を求めていたはずの国民が最終的に国軍を支持する側に回ってきた理由についての考察である。まず、現代のエジプト国軍が整備されたナセル大統領時代の国軍の人事の変化に着目し、ムバーラク時代までの変化を考察した。次に着目したのは、国軍の予算である。国軍の予算の内訳は非公開であり、考察することは不可能であるため、国軍の予算の相当規模を占めると考えられている国軍による経済活動に着目した。国軍の経済活動については、近年ヤジードやアブルマグドなどにより優れた研究成果が発表されている。1年という非常に限定された期間では両研究を凌駕する成果を出すことは難しいため、本研究では国軍の経済活動の、変化の側面に絞りまとめる作業を行った。なぜなら経済活動の変化はエジプトの国内政治と国際情勢の変化に影響を受けているからである。そして、これら国軍自体の考察に、政治の変化を加えて政軍関係について考察を加えた。この考察については、その成果の一部ではあるが、共著『エジプト』(ミネルヴァ書房)第4章「政軍関係:兵営国家エジプトの変容」として刊行した。当該年度は、国軍自体の考察に時間を割いたため、国民がなぜ政治の混乱の最終局面において国軍を支持するのかについての考察は、1952年の自由将校団によるクーデターまでとなった。さらに、1952年のクーデターと、2011年、2013年の国軍のクーデターを比較検討する必要があるが、この問題については、令和5年度に持ち越して考察する。当該年度の海外出張では、エジプト国立図書館で当時の官報ワカーイヤ・ミスリーヤとジャリーダ・ラスミーヤの関係個所の資料を収集しており、令和5年はこれらの資料をもとに考察を深める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
海外調査を実施することが可能となり、当該年度の研究自体は順調に進展した。しかし、昨年度以前に海外調査ができなかったことによる研究の遅延が依然としてある。令和5年度は、夏に予定している海外調査で、令和2年度、3年度の遅れを取り戻すことに努力したい。ただし、現在エジプト国立公文書館では日本人研究者による調査申請を受け付けない傾向があり(理由は不明)、本申請も却下された。令和5年度に夏に予定されている海外調査でも、再び申請を試みるが、却下される可能性が高い。将来的な研究の障害になることは必至であるが、当面はエジプト国立図書館で所蔵している官報を緻密に精査することで、この穴を埋めたい。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、本研究の二つの問いである、混乱した政治に国軍が介入する背景についての考察をまとめ、最終的に近代以降、エジプトにおいて政治の混乱の最終局面に国軍が介入する展開が繰り返されてきた理由に対する答えを提示する。研究は今年度を通して実施するが、並行してこれまでの研究の総括に向けたとりまとめを準備する。最終的には研究書の刊行を目指すが、まずは最初の成果として、新書を刊行する。そのための原稿執筆を6月までには開始する予定である。
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