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エルサルバドルからワシントンDCに渡った先駆的女性移民と同郷人ネットワーク

研究課題

研究課題/領域番号 20K12334
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分80010:地域研究関連
研究機関フェリス女学院大学

研究代表者

中川 正紀  フェリス女学院大学, 文学部, 教授 (70295880)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
キーワードワシントンDC / エルサルバドル / 内戦避難者 / 定質的調査 / 同郷人支援ネットワーク / 先駆的労働移民 / ジェントリフィケーション / ジェンダー / トランスナショナル家族 / 国際労働力移動 / アイデンティティ / 定質的研究 / 同郷人ネットワーク / 先駆的渡米移民女性 / 先駆的移民女性 / エルサルバドル系女性移民 / 質的調査
研究開始時の研究の概要

中米紛争以前の1960年代から1970年代にかけ、米国外交官・連邦政府職員家庭での家事・育児労働を目的に、エルサルバドルからワシントンDCに多数の女性移民が渡った。家父長制の名残のある当時の本国において、子どもをはじめとする近親者を残して女性が遠国に単身移民するには、周囲からの反対もあり多大な労苦を要したことであろう。しかし、のちに彼女らが形成した同郷人ネットワークは後続移民の移住・定着にも貢献することとなった。本研究では、米国首都界隈のエルサルバドル系住民への聞き取りを通じ、先駆的女性移民の移動・定着過程、同伴・残留家族との繋がり、さらにネットワークによる後続移民への影響について考察する。

研究実績の概要

同研究初の現地調査をワシントンDC(以下、DC)で実施した。従来の現地協力者に代わり、移民支援団体のCARECEN(中米系支援センター)の地元支部より調査対象者の紹介を受けた。1981年設立の同団体には1960~70年代のエルサルバドルからの移民女性との繋がりはなかったため、本国や米国で中米系女性の雇用経験を持つ家庭の子女、および1980年代以降の内戦避難者を対象とした。
まず、次の3点がわかった。(1)Terry A. Repakの先行研究(1995)が扱う、60~70年代に米国人外交官や企業関係者らが現地派遣からの帰国時に本国から家事労働要員として同行させた「先駆的女性移動労働者」の流れ以外に、本国人外交官らが米国赴任時に同行させた家事労働要員の移動の流れ、およびインティプカやチリラグアなど本国東部からの自発的移民の流れが存在した。 (2)80年代中心の本国内戦中に特に甚大な被害を被った本国東部からの避難者の大半は、これら先行の同地域出身の親族たちを頼ってDCに避難し、物質的・精神的支援を受けた。さらに、かれらは自ら組織化し、当時の米国による本国政府への軍事支援政策に対する抗議活動や後続の避難者たちへの支援活動に尽力した。 (3) その後、本国東部出身のDC定住者とその家族の多くは、2000年代半ばにDC中心部で始まるジェントリフィケーションを逃れて隣州のメリーランドやバージニアに転居する際にも、既にそこに定住する出身地が同じ親族たちを頼った。以上、DCに定着した内戦避難者の定住過程において、広義の「家族主義」が多大な役割を果たしたことが、明らかとなった。
また、渡米後のジェンダー関係では、夫婦間の信頼関係の悪化で妻子がDV被害を受け、米国社会での発覚ゆえに、妻子が隔離保護され特別ビザの受給対象となったり、夫のアルコール依存症が原因で離婚したりした事例もみられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

コロナ禍の影響で現地調査の実施開始が遅れたが、昨今の円安による調査にかかる諸経費の高騰で再度の実施が難しく、今年度の調査が当該研究のための最初で最後のものとなる。当初1960~70年代に米国外国官や米国企業関係者の帰国に同行して家事労働者要員として渡米した「先駆的女性移動労働者」たちと、1980年代からの本国内戦避難者たちとの関係を、「先駆的女性移動労働者」とのインタビューを通じて探る予定であった。しかし、「先駆的女性移動労働者」を見つけることが叶わず、彼女たちの視点から両者の関係性を探っていくことができなかった。しかし、1980年代からの本国内戦避難経験者たちへの聞き取り調査から、逃亡先の米国で支援を受けた側の視点から関係性を探ることが可能となり、また、1960~70年代のエルサルバドル本国からの移民の流れにおいて、自発的移民や本国人に同行した渡米者の存在を見出すことが可能となった。さらに、2000年代半ばからのワシントンDCにおけるジェントリフィケーションからの逃避も含めて、本国の同じ地域出身の親族を頼るという一種の「家族主義」的行動が、危機のたびに貫かれていることが新たにわかった。これにより、研究課題を別の角度から捉え直し、新たな見地から考察する切り口が見出せた点で、今夏の現地調査は、サンプル数はそれほど多くないものの、研究推進のための大きな足掛かりとなった。

今後の研究の推進方策

Terry A. Repak, Waiting on Washington (1995)が中心的に扱う、米国人外交官や企業関係者らがエルサルバドル本国から連れてきた「先駆的女性労働者」の他に、1960年代以降、本国人外交関係者や企業関係者らが米国赴任時に同行させたエルサルバドル女性労働者たちの米国への移動の流れ、および本国東部地域から自発的に渡米した移民たちの米国への流れが存在してきたことが今回の現地調査によって明らかとなった。このような新たに判明した移民労働者の流れについて他の研究者の先行研究を渉猟し、断片的な情報しか提供されていない事柄については特に、今調査の結果データを補填しうる事実を探ってみる必要がある。
まずは、1960年代以来、なぜ本国東部地域から米国に向けての自発的移民が続いていたのか/いるのかを、エルサルバドル本国全域からの移民の流れの変遷史との関連で考察する。また、2000年代半ば頃から始まったDCでのジェントリフィケーションを経て、毎年8月上旬には多数のDC在住のエルサルバドル系が祝祭参加を兼ねて里帰りをする習慣が現在見られ、かれらのトランスナショナル的な本国との繋がりの様態についても考察する。さらに、米国におけるエルサルバドル系の男女格差の平等化現象が米国社会での定着期間の長期化の影響で見られるようになってきていて、それが一時帰国した移民によって本国の男女格差の平等化にも影響を及ぼしているという言説が聞き取り調査の中でも随所に見られたが、家庭における男女平等化はどの程度まで実現されているのか、たとえば、家事のレベルか、あるいは育児のレベルか、などの点にまで突っ込んで考察できればと考えている。さらに、米国でも平等化に地域差が存在するのか、という問題も興味深い。

報告書

(4件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 2020 実施状況報告書
  • 研究成果

    (2件)

すべて 2021

すべて 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [学会発表] エルサルバドル人の米国への移住動機と本国家族:ノスタルジーと現実とのはざまで2021

    • 著者名/発表者名
      中川正紀
    • 学会等名
      立教大学ラテンアメリカ研究所・同アメリカ研究所共催連続公開講演会「米国とラテンアメリカの国際関係」の第2回「米国との国境を越える移民」
    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [図書] 現代アメリカ社会を知るための63章【2020年代】2021

    • 著者名/発表者名
      明石紀雄監修、大類久恵編著、落合明子編著、赤尾千波編著、伊藤裕子、小塩和人、川島浩平、黒﨑真、黒沢眞里子、畔柳章枝、鈴木紀子、髙橋裕子、武井寛、中川正紀、西川裕子、菱田幸子、増井由紀美、増田直子、宮井勢都子、目黒志帆美、森あおい、吉岡宏祐
    • 総ページ数
      352
    • 出版者
      明石書店
    • ISBN
      4750352454
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書

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公開日: 2020-04-28   更新日: 2024-12-25  

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