研究課題/領域番号 |
20K12335
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
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研究機関 | 浜松学院大学 |
研究代表者 |
津村 公博 浜松学院大学, 現代コミュニケーション学部, 教授 (30310551)
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研究分担者 |
澤田 敬人 静岡県立大学, 国際関係学部, 教授 (20254261)
白鳥 絢也 常葉大学, 教育学部, 准教授 (40600383)
竹本 石樹 浜松学院大学, 現代コミュニケーション学部, 教授 (90805277)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | ICT海外協働学習 / LMS学習管理システム / LCS学習コミュニティシステム / 送り出し地域と受け入れ地域との教育連携 / 海外ルーツの子どものグローバルリーダーの育成 / 母語・母文化の促進 / 大学生による海外メンタリング組織のNPO法人化 / 大学生メンタリング組織とフィリピン教育省との協定 / 多文化共生 / 海外ICT教育 / カリキュラム開発 / 海外協働学習 / 海外サイバースクール / グローバル人材の育成 / STEAM / 外国人児童の母語・母文化保持 / 海外連携型協働学習 / 海外遠隔授業環境の構築 / 海外につながる子ども / グローバルリーダー育成 / アイデンティティの強化 / ICT教育 |
研究開始時の研究の概要 |
海外につながる子どもは、交差する複数な文化環境のなかで生活している。彼らの文化的アイデンティティを確保・補強することが、学習への自信と自尊心の向上につながることが多くの研究で明らかになっている。本研究は、これまでの学校生活の適応や日本語教育等に同化教育から、将来のグローバルリーダーとして育成するプログラムを新たに構築することが目的である。文化的アイデンティティを強化することに焦点を当て、日本に滞在するフィリピン共和国ダバオ市につながる子どもと、送り出し地域であるダバオ市子どものICTを活用した教育(ICT Integration in education)による2国間の協働学習方法を導入した。
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研究実績の概要 |
本年度は、昨年度の課題であったICT海外協働学習プラットフォームの改善に取り組んだ。具体的には、既存のコミュニケーションツールを複数組み合わせたシステムによる情報の分散化及び管理の属人化を解消し、それに代わるICT海外協働学習プラットフォームの構築とその試行である。さらに、新型コロナウイルス感染症の拡大により、これまで現地との連携をリモートで実施してきたが、本年度は、浜松市、横浜市、ダバオ市3都市において、児童・生徒の学習環境について、参加観察・ヒアリング調査を実施した。また、ダバオ市では、現地の教員を対象として、ICT海外協働学習システムのデモンストレーションやディスカッションを実施した。 これにより、ダバオ市内の公立小学校と浜松市内の公立小学校2校と海外協働学習を実施できた。佐鳴台小学校では、フィリピンにルーツのある児童を対象としたビジュアルプログラミングソフトによるアート制作、葵が丘小学校とは、DAW(Digital Audio Workstation)による楽曲制作を実施した。 しかし、リモートによる協働学習には制約が伴う。まず、特定の時間に2校が同時に参加する必要があるため、授業時間の調整が難しい。また、対面での活発なグループ討論や自由討論に比べ、リモートでは発言や意見の順番が制限され、結果的に学習の非対称性が生じる。 これらを解消するため、学習管理システム(COLP:Cooperative Online Learning Program)を構築した。その結果、2月にフィリピンに再渡航し、横浜みなみインターナショナルスクール、佐鳴台小学校、DCSSの3校による協働学習を試行した。これによりシステムの標準化が促進し、システム環境が整った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年8月フィリピンへの渡航はワクチン接種を入国条件とすることで緩和され、対面授業が可能になった。この機会を捉えて、オンライン学習に加えて対面授業を組み込んだハイブリッド形式による海外協働学習を実現できた。 海外協働学習のカリキュラムは、浜松市・横浜市に在住するフィリピンにルーツがある児童とダバオ市の児童が、協働して学校をテーマとした楽曲制作、学校の周辺に生息する 絶滅危惧種に焦点を当てたアニメーション制作に取り組み、共通する母国の文化的なアイデンティを確認することを目的とした。 これらの成果により、2023年度にはダバオ市、浜松市、横浜市の海外協働学習のハイブリッドシステムが完成する見通しとなった。 ICT海外協働学習のハイブリッド形式は、対面授業とオンライン学習を組み合わせており、対面授業における母語による直接的なコミュニケーションや対話、リアルタイムのフィードバックを通して母文化の中に自己を形成するきっかけとなる。一方、オンライン学習は、COLP/LMS(学習管理プラットフォーム)とCOLP/LCS(学習コミュニティプラットフォーム)を融合した学習形態である。COLP/LMSは、多様な情報や学習資源にアクセスし、児童は自身の都合や環境に合わせて学習を進めることができ、自律性や自己学習能力の向上に寄与する。課題に対するフィードバックも可能であり、学習の進捗を評価することができる。COLP/LMSは教員と児童との学習を介した縦の関係性を促進する一方、COLP/LCSは児童間のコミュニケーションを強化し、学習コミュニティを形成し、相互のつながりを築く横の関係を支援する。 本年度は、ICT海外協働学習プラットフォームは、そのカリキュラム及びシステムともに、一定の成果を上げた。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度にはCOLP/LMSに加えて、ダバオ教育局の協力を得てCOLP/LCSを試験的に導入し、ソーシャルネットワーキング機能を活用した児童間や教員間のコミュニケーションを強化できた。参加児童はグループ内のタスクを遂行するためのフォーラムやフィードを通じて、互いの意見を共有し、相互作用を促す学習コミュニティを創造した。 本研究期間を通して、対面及びオンライン学習におけるメンターの役割を大学生が果たしてきた。COLP/LMSを通して、大学生は参加児童のメンターとして、学習目標やニーズを理解し、個別のアドバイスやフィードバックを提供することで、学習の効果を最大化するためのサポートを行ってきた。COLP/LCSでは大学生メンターは学習コミュニティ内で自身の経験や知識を児童と共有し、ロールモデルとして、児童生徒の学習の動機付けを促進する役割を果たしている。大学生メンターは協働学習を促進することで、学習コミュニティの一体感を醸成し、児童の学習意欲を高める努力をしている。 ICT海外協働学習プラットフォームの成果としては、大学生は研究協力者としてCOLPのプログラムの開発・運営に加えて、児童に対するメンターとして積極的・主体的に関わっている。彼らは、令和3年に「NPO法人わたぼうしグランドデザイン」を設立し、本研究チームのパートナとして、海外メンタリングプログラム「Misha Project」を展開している。令和4年2月に、同法人はICT海外協働学習の支援において、フィリピン共和国教育省Reginal11と協定を締結した。さらに、DCSSに教育実習生を送るダバオ市にある大学(The University of Southern Mindanao: USM)の大学生も「Misha Project」への登録も開始している。
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