研究課題/領域番号 |
20K12372
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
大前 慶和 鹿児島大学, 総合科学域総合教育学系, 教授 (40315388)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 伝統工芸品 / ドメスティック・フェアトレード / 生産者と消費者の変化の許容範囲におけるギャップ / 市場の失敗 / 伝統工芸品のジレンマ / 大島紬のジレンマ / 大島紬 / 伝統的工芸品 / 流通の変革 / トレーサビリティ |
研究開始時の研究の概要 |
大島紬は世界の3大織物に数えられている。しかし、伝統的な大島紬の地味な色合いや柄が今日的ではないと評価され、反物生産量は最盛期の1.3%にまで激減している。大島紬産業は存続の危機に瀕しているといえる。 こうした現状に対して、新製品開発の必要性や、直販等の流通改革の必要性が指摘されている。本研究ではさらに根治を目指し、ドメスティック・フェアトレード(*)を提唱し、大島紬の生産者・職人が適正な収入を得られるようになることを目指す。 *フェアトレードとは、発展途上国の製品等を適正な価格で継続的に購入できるようにする仕組みのこと。この仕組みを国内に応用するのが、ドメスティック・フェアトレードである。
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研究実績の概要 |
伝統工芸品のビジネスとしての存続を実現させるためのドメスティック・フェアトレードの仕組みをさらに検討する過程において、特に生産者・消費者間に認められる「伝統工芸品に関する変化の許容に関する認識ギャップ」について検討した。 伝統工芸品の根本には昔から変わらず守りづつけてきた技術や素材へのこだわりがあり、一貫した価値が存在している。とはいえ、製造に機械を全く用いていないわけではなく、また化学染料等の近代的な素材を拒絶してきたのでもない。つまり、生産者は、不変を基盤としつつも、かなり柔軟に変化を受け入れてきた側面があると言える。一方で、消費者の先入観は、生産者のそれよりもはるかに保守的である。伝統とは不変を意味していると認識していたり、伝統とは自然・天然のことだと解釈し、化学的素材の不使用を想像することもある。機械の多く入った製造工程にも否定的である。つまり、生産者は変化を広く受け入れてきたのに対し、消費者はその事実を認識しておらず、やや一方的に伝統のイメージを作り上げてきたのである。ここに、ギャップが存在していると言える。 この時、ドメスティック・フェアトレードの仕組みを作り上げ、価格の高さを理解するに足る十分な情報と意味を消費者に開示したならば、どのような結果が生じるであろうか。消費者は自身の抱いていたイメージとのギャップを認識し、幻滅する可能性はないだろうか。もちろん先入観・イメージの破壊が全ての結果であることはないが、機械、化学、海外産の原材料といった伝統工芸品とはおよそ遠くに位置した現実を突きつけられることになる。よって、生産者はただ単に原材料、製法等を細かく開示することが全てではなく、認識ギャップを的確に把握した上で、戦略的に行動する必要があると考えられるのである。 なお、こうしたギャップの実際を調査するため、福島県、新潟県、北海道等の産地の現地調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度は研究エフォートの確保が困難となり、現地調査および文献調査に制約が生じた。とはいえ、大島紬の検討から織物・染物を中心とした伝統工芸品に研究対象を広げることができており、おおよそ結論は見えてきたものと考えている。 ただし、第1に、生産者と消費者の変化の許容範囲におけるギャップの存在を追加調査する必要がある。生産者の調査はもちろん、消費者の認識についても調査することを検討したい。 第2に、伝統工芸品の検討から、他の地域特産物(例えば、鹿児島県の農産物等)にドメスティック・フェアトレードモデルを拡大適用できるのかについて、調査するとともに評価しなければならない。現時点では、本研究で検討しているドメスティック・フェアトレードモデルは高付加価値な財に適合的であると思われ、いわば日常必需品や食品といった財には不適合と評価すべきではないかと考えているところである。 以上のことから、研究は遅れていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
第1に、国指定の伝統的工芸品のうち、特に織物・染物については網羅的に現地調査を行いたい。 第2に、鹿児島県内の農産物に焦点化し、市場取引の現状をつぶさに調査したい。特に、生産者と消費者間の財に対する認識ギャップの存在を明確にできればと考えている。 第3に、研究の総まとめを行う。
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