研究課題/領域番号 |
20K12377
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
石山 徳子 明治大学, 政治経済学部, 専任教授 (70386415)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 公共図書館 / 先住民研究 / セトラー・コロニアリズム / 都市先住民 / 批判地理学 / 批判的人種研究 / 都市空間論 / 都市への権利 / 図書館 / ホームレス / 社会正義 / 北米都市 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、北米都市のセトラー・コロニアルな公共空間に展開する、人種、階級、ジェンダー、セクシュアリティ、障がい、疾病、住居の有無による差別と格差の構造とイデオロギー、社会正義を目指す多様な営みと限界について、公立図書館のホームレス利用者をめぐる議論と、共生に向けた取り組みを事例に、地理学的見地からあきらかにする。これまでは別個に蓄積されてきた、都市への権利、都市の社会正義、ホームレス問題の研究と、多様な背景を有する利用者に関する課題に焦点を当てた図書館学研究を領域横断的に参照し、図書館を地理学的分析対象とする新たな切り口から公共空間と社会正義について考察する。
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研究実績の概要 |
2022年度は、コロナ禍における移動制限が緩和され、ようやく現地調査を始めることができた。北米現地の図書館や大学を訪問し、司書や研究者から、情報提供をいただき、意見交換を行うことができたことは有意義だった。 2022年夏に訪問したカナダ西部の都市であるエドモントンにおいては、ダウンタウンを何度も歩き、ホームレス人口増加の現状、治安の悪化、人びとの間に広がる恐怖感について、観察を行った。 コロナ禍の影響が大きく、困難はあったが、現地でのネットワークを通じて、公共図書館職員、エドモントン市職員、アルバータ大学に在籍する複数の研究者から、情報提供、および学術的なアドバイスをいただいた。 2023年春に訪問したカリフォルニア州ベイエリアにおいても、現地調査を開始することができた。サンフランシスコやバークレイの街を実際に歩き、治安の悪化、格差の拡大、そしてホームレス人口の増加を実際に見聞した。コロナ禍を経て、リモートワークが主流になるなか、ダウンタウンの空洞化が顕著にみられた。その一方で生活費の高騰は著しく、家族ごと、あるいは子供たちがホームレス化している事象も多々見られた。 そのようななかで、サンフランシスコのダウンタウンに位置する公共図書館が、さらなる難題を抱えていることがわかった。同図書館では、複数の職員に長時間のインタビューを行い、問題の所在を確認することができた。当該研究に対する図書館側の対応が、コロナ禍にあっても前向きであるため、比較的スムーズに行うことができた。カリフォルニア大学図書館の司書や、同大学在籍の研究者からも情報提供をいただいた。 2022年度には、カナダ、アメリカ両国の大学図書館において、ジェントリフィケーション、ホームレス問題、都市景観の構築にまつわる一次・二次資料の収集を集中的に行うことができたことも収穫だった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウィルス感染症の拡大を理由に、海外での現地調査が全くできない状態が2年間続いたため、当該研究には著しい遅れが生じた。2022年度の夏と春に、ようやく現地調査を開始することができたのは実に大きな前進である。ただし、最初の2年間に全く現地に行けなかったという遅れを、1年で解消するのは不可能であり、人文地理学研究において不可欠な現地調査において、丸2年間の遅れが生じていることに変わりはない。 2023年度も、夏と春に、現地調査を行う予定にしており、遅れを取り戻すために全力を尽くすが、コロナ禍におけるリモートワーク化等が進んでいるため、関係者に直接お会いしてインタビューを行うことについても、前よりは時間と労力がかかるのが現実である。
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今後の研究の推進方策 |
丸2年の遅れが生じている状況にあるが、夏と春の現地調査を、昨年度に引き続き、今年度も地道に行う予定にしている。 2022年度には、カナダとアメリカにおいて初めての現地調査を行い、実質的な成果を上げることができた。特にアメリカ西部カリフォルニア州ベイエリアでは、コロナ禍におけるさまざまな制約、大学や図書館職員のリモートワーク化が進むなかでも、直接インタビューを行うことができた。そうした状況を活かしながら、2023年度にも夏と春の現地調査を実施したい。また、現地の大学図書館における一次・二次資料収集は、極めて重要な作業であるため、これも引き続き行う予定である。 コロナ禍を背景に、現地調査にまつわる丸2年の遅れを、今年度中に全て取り戻すことは極めて難しい。したがって当該研究については、当初の計画からコロナによって海外渡航制限が厳しくなされた丸2年分の延長、すなわち2024年度にかけての延長を、現時点において強く希望している。
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