研究課題/領域番号 |
20K12388
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
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研究機関 | 九州産業大学 |
研究代表者 |
中原 裕美子 九州産業大学, 経済学部, 教授 (40432843)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 国際労働力移動 / 外国人労働 / 中台間労働移動 / 台湾経済 / 後発国経済 / 頭脳環流 / 半導体産業 / 台湾 / 少子高齢化 / 中国 / 留学生 / 高度人材の国際移動 / 頭脳還流 |
研究開始時の研究の概要 |
台湾では、1980~90年代、先進国からの帰国者がICT(情報通信技術)産業の発展に大きな貢献をし、飛躍的な経済発展を遂げた。これは「頭脳還流」として広く知られる現象である。しかし21世紀、台湾をめぐる高度人材の国際移動は大きく変化し、先進国→台湾という単線的でなく、台湾と中国の相互移動、インドと台湾の相互移動、のように後発国間の複線的な動きが見られる。また移動する人材は理系人材のみならず文系人材にも及んでいるが、その詳細は解明されていない。 そこで本研究は、2020年代の台湾をめぐる高度人材の国際移動を、台湾の産業構造の変化に伴う労働市場における需要の変化と併せて解明する。
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研究実績の概要 |
2023年度は、以下の研究を進めた。 第一に、以前から研究を進めてきた、中国から台湾への、大学の正規の課程への留学を目的とした中国人学生の移動についてである。今年度は、これを、Saxenian(1999)の“Brain Circulation(頭脳環流)”というフレームワークに当てはめて分析した。 第二に、これも以前から進めていた、半導体産業における台中間の人材移動を生じさせている、半導体産業の垂直分業の変容についての研究である。これを、Millerの「台湾化」というコンセプトに沿って研究した。半導体産業では、Millerが「台湾化」と名付けた現象が起こっているが、その「台湾化」を、第一に生産の担い手としての台湾企業(特にTSMC)への依存、第二に生産の立地としての台湾への依存、という2つの側面に分けて検討した。 第三に、台湾の不熟練外国人労働者導入政策の変更についてである。台湾では、労働者不足がさらに深刻になっていることから、2023年に、不熟練外国人労働者導入政策が大きく変更された。それにつき、製造業および建設業について、変更の詳細を調べた。製造業の「3K5級制」について、いくつかの業種において外国人労働者導入比率が変更されたこと、建設業においては、これまで公共事業や民間大型投資プロジェクトなどでの雇用に限定していたが、2023年以降は、過去の受注実績や台湾人の雇用者数などの条件を満たす民間企業での雇用が認められるようになったこと、などがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の通り進捗しているため、概ね順調に進展していると言える。 第一に、中国から台湾への、大学の正規の課程への留学を目的とした中国人学生の移動について、Saxenian(1999)の“Brain Circulation(頭脳環流)”というフレームワークに当てはめて分析したもの)を、8月に、国際労働移動や移民に関する世界最大のカンファレンスの1つ、The Migration Conference 2023 Hamburgで発表することができた。これには、聴衆からたくさんのコメントをいただき、さらに研究をブラッシュアップさせることができた。 第二に、半導体産業における台中間の人材移動を生じさせている、半導体産業の垂直分業の変容についての研究である。これは、「分断化する世界経済の中でのサプライチェーンの変容―半導体産業を事例に」というタイトルで、アジア経営学会統一論題第30回記念全国大会統一論題「分断化する世界経済とアジア企業の未来」および、Center for Emerging Markets, Northeastern UniversityのNardone Family Workshop: Emerging Multinationalsにおいて発表した。これにおいては、聴衆の先生方から、様々な観点のコメントおよび質問をいただき、その内容を踏まえて研究を修正し、論文にまとめ、現在査読誌に投稿中である。 第三に、初年度より研究を進めていた、本研究課題の背景となる、少子高齢化と外国人労働についてである。外国人労働の現状と、それに付随する問題点に関し、台湾と日本の比較を行い、論文にまとめ、海外の査読誌に掲載された。 第四に、台湾の不熟練外国人労働者導入政策の変更についてである。これについては、九州産業大学産業経営研究所のディスカッションペーパーという形でまとめる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、以下の研究を予定している。 第一に、半導体産業における台中間の人材移動である。これは以前から研究を進めていたテーマであるが、2023年度の、半導体産業の垂直分業の変容に関する研究結果を踏まえて、さらにブラッシュアップし、国際労働移動や移民に関する世界最大のカンファレンスの1つで発表する予定である(すでにアクセプト済みである) 第二に、台湾の不熟練外国人労働者導入政策の変更についての、さらなる調査である。2023年度は、製造業・建設業についての調査を行ったが、2024年度は、調査の範囲をさらに広げ、農業分野や介護分野についての調査を進める予定である。また、台湾政府は、台湾企業が中国から引き揚げて台湾に回帰投資をすることを奨励しており、その奨励策の1つとして外国人労働者雇用枠の増枠を提示している。米中対立を受けて台湾に回帰投資をする企業が増加しているが、それに当たり、台湾内の労働者不足が障壁になっているため、外国人労働者雇用枠の増枠は、回帰投資の誘因になると考えられる。これにつき、詳細を調べる。
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