研究課題/領域番号 |
20K12395
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80020:観光学関連
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
金沢 文緒 岩手大学, 教育学部, 教授 (80606997)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 風景画 / 景観画 / グランド・ツアー / 旅行 / 観光 / 土産 / 旅行者 / アルカディア |
研究開始時の研究の概要 |
18世紀ヨーロッパでは、イタリアへのグランド・ツアーの流行に伴って、17世紀の理想風景画の熱狂的なリヴァイヴァル・ブームが起こった。本研究は、当時旅行者の間で共有されていた旅行先での「風景画家体験」に注目し、旅行者によって選択された能動的娯楽という観点から18世紀ヨーロッパのツーリズムに位置づけ、その実態を明らかにすることを目的とする。旅行者の主な風景画制作の場となったローマ周辺を対象とし、ガイドブック、旅行記、旅行者による風景画や戸外素描等の分析を通じて、風景画の「鑑賞」から「制作」に至る旅行者の精神的プロセスを、18世紀の「アルカディア疑似体験」という文化現象との関わりから解明する。
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研究実績の概要 |
18世紀ヨーロッパでは、イタリアへのグランド・ツアーの流行に伴って、17世紀の理想風景画家クロード・ロランやニコラ・プッサンの熱狂的なリヴァイヴァル・ブームが起こった。本研究は、当時旅行者の共有されていた旅行先での「風景画家体験」、すなわち旅行者=アマチュアによる風景画制作という行為に注目し、旅行者によって選択された能動的娯楽という観点から18世紀ヨーロッパのツーリズムに位置づけ、その実態および社会的背景を明らかにすることを目的とする。そして、風景画の「鑑賞」から「制作」に至る旅行者の精神的プロセスの解明を通じて、近代ツーリズムにおける旅行者の能動的体験の成立と発展の過程に新知見をもたらすことを目指す。 今年度は、本研究が注目する18世紀ヨーロッパにおける「アルカディア体験」という現象を中心に考察を進めた。この時期のヨーロッパにおけるアルカディアのイメージ形成を牽引したのは主にローマであるとの見通しのもと、ローマの文芸団体アルカディア・アカデミーの18世紀半ばの活動に注目し、当時の画家がどのようにこの詩人団体に関与したのかという観点から、アルカディアをめぐる文学と視覚表象の相関関係について分析を行った。具体的には、1750年代にグランド・ツアーでローマに滞在したイギリス人風景画家リチャード・ウィルソンの事例を通じた考察となり、文学上の理想風景を仮想体験するという現象がこの時期起きていたことの視覚的な証左を提示できた。その研究成果の一部が、金沢文緒「風景画家リチャード・ウィルソンのローマ滞在―知的表象としてのアルカディア」(『迷宮のアルストピア―新しきイマジナリアを求めて』(ありな書房、2024年、pp. 275-320)である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
海外での実地調査(作品実見調査、文書調査)が叶わなかったこともあり、部分的に遅れが出ている。
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今後の研究の推進方策 |
海外での調査ができなかったため、旅費を中心に、想定していたような使用ができなかった。研究期間を延長し、次年度に海外調査を実施する予定である。 なお、本年度のアルカディアに関する研究成果において、既に開始した次の研究のテーマと大きく関連のある結論を得た。本研究は次年度が最終年度となるが、次の研究へと引き継げるよう、接点を意識しながら展開させることとしたい。
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