研究課題/領域番号 |
20K12447
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80020:観光学関連
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研究機関 | 九州産業大学 |
研究代表者 |
室岡 祐司 九州産業大学, 地域共創学部, 准教授 (50615359)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 旅行業 / 競争優位性 / 人的サービス / ホームエージェント / ICT / ネットワーク / 旅行者意識 / 旅行商品 / 旅行相談料 / ツアーグランプリ / Go To トラベル / SIT / 持続可能性 / 旅行者行動 / リーン消費 / 観光 / サステナビリティ / ソーシャル・ツーリズム |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、旅行業者の持続的な成長・発展の可能性を探るために、消費者へのアンケート調査や旅行業者へのヒアリングを通じて、旅行者の「知覚リスク」や旅行商品の「模倣困難性」、生活関連サービス業に分類される旅行業の「社会関係資本(地域社会や消費者とのネットワーク活用による課題解決)」としての機能に焦点を当てながら、旅行業経営における競争優位性について考察することによって、旅行業経営を多角的な視点から再定義することを試みる。
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研究実績の概要 |
人的サービスの優位性に関しては、旅行業者の人材不足の補完策として日本旅行業協会が提唱する「ホームエージェント型旅行業代理業者」の仕組みや課題を調査した。在宅勤務可能な退職者の活用、高齢者雇用という側面と、かかりつけの(馴染みの)中小旅行会社という側面・メリットが考えられるが、制度の活用は現在のところ限定的であり、トラブル時の対応等、課題があることがわかった。海外の旅行会社の実態等、更なる事例研究が必要である。また、インバウンド向けガイドツアーに取り組む先進旅行業者のヒアリング調査から、旅行計画・手配はICT化が進むが、ガイドという人的サービス自体は高いポテンシャルがあり、その提供の質が旅行業者の優位性に繋がっていることが確認できた。 ネットワーク・機能活用の優位性に関して、前年度までに実施した旅行需要喚起策(Go To トラベル、全国旅行支援等)に関する旅行者意識のwebアンケート調査の分析を進め、論文執筆を行った(査読中)。また、地域密着型旅行に取り組む先進旅行業者業へのヒアリング調査からは、道の駅を拠点としたツアー実施が道の駅と観光資源の回遊性を高め、地域関係者の出会い・関係構築の機能を果たしていることが確認された。 また、ネットワークの観点からICTを活用した生産性向上や新たな旅行サービスに着目した。ヒアリング調査では、自社で開発チームを持ち、自治体のメタバースやChatGPTを活用した書類作成システムを開発している旅行業者や、システム系企業が旅行業者向けにツアーの仕入れ・造成・販売業務をワンストップで提供するサービスを開発・提供し、旅行業者の業務効率化と商品力強化によって、消費者とサプライヤーとの直販化傾向への対策支援を行っていた。その背後には人材や技術力があり、ICTを活用した持続可能な旅行業経営や優位性についての研究課題を認識するに至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
旅行業者の持続可能な競争優位に関して、当初の計画通り人的サービス、商品、ネットワーク・機能の観点から、先進的な旅行業者へのヒアリング調査を進めることが出来ている。一方で、国外旅行業者に対するヒアリング調査は、コロナ禍が明けたものの、焦点・調査先が絞り切れず、アポイント調整の課題もあり、もう1年延長して、検討・実施することとした。10月に大阪で開催された「ツーリズムエキスポジャパン」では、研究テーマに関連する旅行業者や関連企業、地域・団体からの出展があり、豊富な情報や新たな気付き、人脈づくりの機会となったため、こうした国外の旅行見本市を活用した旅行業者の調査も有効であると考えている。 旅行者に対する意識調査は、WEBアンケート調査を実施・分析してきたが、当初計画にあるインタビュー調査についても取り組みたい。また、サステナブルツーリズムやソーシャルツーリズムの観点からの旅行業者に関する調査についても、十分な着手できていないため、次年度取り組みたい。 今年度新たにネットワークの観点からICTを活用した事業領域の拡大や生産性向上に取り組む旅行業者およびソリューションを提供する事業者に着目し調査を行った。当初計画にはなかったが、CS(顧客満足)のみならず、ES(従業員満足)やDS(デスティネーション・サティスファクション、事業者の地域貢献による地域関係者からの評価の意味合いと定義)の観点を取り入れていくことが、今後の成長・発展、競争優位を築くために必要な観点と考え、ヒアリング調査を進めており、次年度もICTに着目した調査を継続したい。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、旅行業経営の持続的な成長・発展へ向けた手掛かりを掴むために、①人的サービスの優位性、②商品力の優位性、③ネットワーク・機能活用の優位性の観点から、研究を進める。 ①については、これまでの研究からICTが進展する中で、「人」が関与する希少価値、安心感、利便性が改めて注目されている側面を視野に、「ホームエージェント」を手掛かりに、旅行業者及び旅行者双方へヒアリング調査を進める。 ②については、引き続き旅行商品の模倣困難性と旅行満足度、事業収益を高めるプロセスを明らかにするために、ツアーグランプリ受賞企業を中心に、SIT(スペシャルインタレストツアー)開発に取り組む国内外の旅行会社へのヒアリング調査を継続する。 ③については、DMO(観光地域づくり法人)等と連携をしながら地域密着型の事業展開を進める旅行業者や、サステナブルツーリズム、ソーシャルツーリズム等、新たな事業分野を開拓する旅行業者に着目し、ヒアリング調査を進める。 また、①~③を統合し、旅行業者の競争優位を高める源泉について整理を進めるが、仮説としてICTを活用した事業領域の拡大や生産性向上に取り組みながら、CS(顧客満足)、ES(従業員満足)、DS(地域満足)を実現していく事業モデルを検討しており、更なるヒアリング調査と考察を進める。
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