研究課題/領域番号 |
20K12450
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80020:観光学関連
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研究機関 | 山梨県富士山科学研究所 |
研究代表者 |
宇野 忠 山梨県富士山科学研究所, その他部局等, 主幹研究員 (80342963)
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研究分担者 |
堀内 雅弘 鹿屋体育大学, スポーツ生命科学系, 教授 (50310115)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 登山者の転倒状況 / 登山者の転倒関連要因 / 登山ルート別の転倒状況および関連要因 / 登山ルート別の転倒状況 / 登山者の転倒率 / 登山者の転倒関連要因の男女差 / 登山者の転倒に伴うケガ / 富士登山ルートの比較 / 富士登山 / 転倒リスク / 疫学調査 / 外国人 / 登山ルート |
研究開始時の研究の概要 |
登山中に発生する転倒は足関節捻挫や擦過傷などのケガを招き、ときには滑落や転落につながり重大な事故となる。未然に転倒を防ぎその発生を減少させることは、登山者の安全と健康を守るために重要である。しかし、国内外問わず多くの登山者が訪れている富士山では、軽微なものも含めた転倒発生の実態と関与している要因は明らかではない。 本研究では、吉田と富士宮の2つの登山ルートにおいて、日本人と外国人の登山者を対象とした質問紙を用いた大規模アンケート調査を行い、転倒の発生実態の把握と転倒関連要因を明らかとする。これにより転倒の軽減と予防につながる基礎的なデータの提出を目指す。
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研究実績の概要 |
令和5年度は、昨年度に引き続き富士宮ルートにて日本人登山者にアンケート調査を実施し、適切な統計処理を実施するためのサンプル数を収集した。また、吉田ルートにて外国人(英語)と日本人(日本語)を対象のアンケート調査を実施した。 富士宮ルートにて転倒した者は有効回答566人中328人(転倒者率58%)と2021年の吉田ルート調査での41%と比較し、有意に高い転倒者率であることが明らかとなった。転倒時の状況として、両ルートとも下り中の発生が80%以上、スリップによる転倒が約60%、転倒に伴うケガは擦り傷切り傷が多い状況であったが、ケガの発生者率は吉田ルート6%に対し富士宮ルートは10%と高い傾向にあった。 二項ロジスティック回帰分析により転倒関連要因を解析した結果、両ルート共通で女性、年齢が高い場合に転倒リスクが高く、吉田ルートでは富士登山が初めて、靴底が減っている、疲労度が高い、ストックを使用していない、下山道の距離情報を事前に知らなかったことが転倒リスクを高めていた。一方、富士宮ルートでは、富士登山経験が2年未満、登山靴以外の靴を履いている場合に転倒リスクが高かった。以上の結果から、富士登山において富士宮ルートは、吉田ルートに対し多くの転倒が発生しており、転倒関連要因も異なる可能性が考えらえた。 吉田ルートでの転倒状況は、外国人登山者:有効回答175人中52人(転倒者率30%)、日本人登山者:有効回答率435人中130人(転倒者率30%)と違いは見られなかった。一方、ガイドの同行率(日本人:46%、外国人24%)、富士登山経験なし(日本人:65%、外国人91%)、2年以上の登山経験者(日本人:38%、外国人53%)など日本人登山者と外国人登山者においてことなる状況が確認された。適切な統計解析を行うためのサンプル数は不足しており、引き続きアンケート調査が必要な状況である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、富士登山者の転倒状況を登山ルート別および日本人と外国人を比較することによりそれぞれの対象者に対し有効な転倒予防軽減の対策につながるデータの提供を目的としている。そのための研究方法は登山者を対象とした大規模アンケート調査の実施である。しかし、本課題が開始された令和2年度から令和4年度までは、新型コロナウィルスの感染拡大の影響により大幅な富士登山者および海外渡航者の減少により大規模アンケート調査の実施および必要サンプル数の収集が困難な状況が続いていた。 令和5年度は、山小屋や登山中の新型コロナウィルス感染拡大への対応を実施した上での行動制限のない富士登山、5月の新型コロナウィルス感染症の5類感染症移行に伴い登山者は、コロナ以前の令和元年度の約23万人に対し、約22万人と94%に復調している。そのため、令和4年度、令和5年度は、富士宮口ルートの日本人登山者を対象としたアンケート調査を中心に実施し、富士宮ルートでのアンケート調査は令和5年度に完了し、結果の解析とまとめを行っている。 一方、海外からの渡航も活発化し、富士登山に訪れる外国人旅行者も増加した状況であったことから、吉田ルートにおいて外国人登山者および日本人登山者へのアンケート調査を行った。ここでは、これまでの質問紙によるものから携帯端末により回答を得る方法を導入し、省力化効率化を図り、令和6年度に十分なデータが得られる見通しを得ている。
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今後の研究の推進方策 |
これまで新型コロナウィルス感染の影響により令和2年度は富士山登下山道の通行止め、令和3年度は登山者激減、外国人旅行者が見込めない状況であった。しかし、令和4年度から、日本人登山者は行動制限のない登山が可能となり、令和5年5月の新型コロナウィルス感染症の5類感染症移行もあり登山者の一定の回復が見られたことで富士宮ルートでの日本人対象のアンケート調査を令和5年度に完了した。さらに、令和5年度からは、海外からの渡航も緩和され、富士山に外国人登山者が訪れる状況となった。このため、吉田ルートにてスマートフォンなどの携帯端末で二次元コードを利用したアンケート方式を導入し、省力で日本人および外国人からの回答を効率的に収集する体制とし、調査を実施した。 この方式の導入により、令和6年度のアンケート調査を実施し、吉田ルートでの外国人と比較対象の日本人の十分なサンプル数を収集する目途がついた。令和6年度は、アンケート調査を完了させ、日本人と外国人登山者の転倒状況の比較についても結果をまとめる予定である。
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