研究課題/領域番号 |
20K12474
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80030:ジェンダー関連
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
吉本 圭佑 龍谷大学, 政策学部, 准教授 (90724477)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | コーパスに基づく談話分析 / セクシュアリティ / LGBTQ+ / 同性婚 / 性的マイノリティ / コーパス言語学 / 批判的談話(言説)分析 / CDA / 批判的談話分析 / 同性結婚 / セクシュアルマイノリティ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、新聞や雑誌、国会会議録等でのLGBTQ+を含むセクシュアルマイノリティ(性的マイノリティ)の描かれ方が同性結婚や同性パートナーシップ制度等の社会制度の成立前後にどう変化するかを考察する。分析手法として、実際の発話・書物を集積した大規模データベースであるコーパスを用い、英語圏と日本における描かれ方の違いを定量的に分析し、比較する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本の新聞や国会答弁等の公的な談話において、セクシュアルマイノリティがどのように表象されているかを定量的、定性的に分析することである。分析手法として、コーパスに基づく批判的談話分析(Corpus-assisted Discourse Analysis)を用い、近年の同性婚をめぐる議論をめぐってセクシュアルマイノリティがどのように表象されているかを考察する。
2023年度は、保守的な新聞とリベラルな新聞から特殊目的コーパスを自作し、両者の比較を通じてキーワード(片方のコーパスにおいてもう一方よりも統計的により頻繁に出現する語)を割り出すことからはじめた。キーワードを手掛かりにして、その前後に現れる共起語を検索するとともに、キーワードが現れる文脈をコンコーダンスを読むことによって明らかにした。分析の結果として、保守的な新聞においては、セクシュアルマイノリティがフィクション中の登場人物や西洋人あるいは海外の出来事として描かれる傾向が強いことが明らかになった。また、精子提供に関する倫理的な問題の一環として同性カップルが取り上げられていることがわかった。一方で、リベラルな新聞では、当事者の生の声を紹介するとともに、現行の政治や世襲議員を問題にする談話が多い傾向にあることがわかった。
さらに、国会会議録から、同性婚の法制化に賛成派とどちらでもない派、反対派の3つの特殊目的コーパスを作成し(発言者の立場についてはマリフォー国会メーターを参照した)、3つのコーパスを比較することでキーワードを抽出し、各派がどのような正当化の方策を用いているかを分析した。賛成派は他のG7諸国や若い世代の意見、宗教右派の影響に言及しているのに対し、どちらでもない派は結婚の定義自体が変容してしまう可能性を選択的夫婦別姓に絡めて展開するとともに、国民的コンセンサスの不在を主張していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は在外研究のため客員研究員として英国のランカスター大学で研究を行った。ランカスター大学はコーパスに基づく批判的談話分析の本場であり、第一人者としてこの分野を牽引する先生方との交流の中で、日本国内では得られなかった知見や最先端の分析方法を学ぶことができ、コロナ禍による研究の遅れを取り戻すことができた。
同性婚に関する保守派とリベラル派の新聞を分析した研究と、国会会議録を分析した研究をそれぞれジャーナルに提出した。また、ランカスター大学の研究会で、日本の同性婚に関する談話のコーパス分析について発表した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、同性婚に関する分析で得られた知見と方法を応用し、LGBT理解増進法をめぐる国会での議論について分析を行い、その結果をジャーナルに提出する予定である。この内容は令和6年夏の国際学会での発表が決まっている。
同性婚に関する国会会議録についての論文について、査読者から、コーパスによるキーワードの抽出が、質的分析をする際の代表的なテクストの選定にどう関わっているのか分からないとの指摘を受けた。英語の分析では、ProtAntというツール(Anthony & Baker 2015) を用いて、コーパスを構成するテクストの中で、よりキーワードを多く含むテクストを選定し、そのコーパスの代表として質的分析の対象とするのが一般的である。しかし、日本語を分析対象とする場合、形態素解析の難しさからProtAntでの分析がうまくいかず、手動で代表的なテクストを選定したため、テキストの代表性について分析者のバイアスが入っているとの判断をされたようである。これについては、ヨーロッパ言語以外を対象とした同様の研究が少ないため、様々な研究者の意見を伺いながら、より透明性の高いテクストの選定の仕方とその説明の仕方を模索していかなければならない。
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