研究実績の概要 |
本研究課題は当初3年間の実施計画で進めていたが,新型コロナウィルス感染症の影響による実験の進捗の遅延により,補助事業期間の1年延長を行った.本欄では4年度目(令和5年度)の研究実施状況について述べる.本研究課題の目的は,パソコン利用者からのディスプレイの視距離が日常の部屋やオフィスなどの制約を超える視距離10m以上など任意の位置に仮想PC画面を提示できるディスプレイシステム用いて,利用者の心身的負担と作業効率への影響を実践的に評価することである.令和2~4年度は応募者が開発した,ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を用いて超遠視距離(一般的な30cmを超える100m規模の視距離)に仮想PC画面を立体ステレオ提示するディスプレイシステムを用いて,ISOが定めるマウスの操作精度を計測するタッピング検査やトレース検査,クレペリン検査を用いて心身的負担の軽減と作業効率についての実験を実施した.具体的には,視距離条件として0.5m, 8.0m, 32.0m, 128.0mの4通りを設定し,評価項目として作業の経過時間,正確性,精度,心理的疲労(心拍とフリッカー検査),身体的疲労(アンケート)を被験者30名に対して収集した.令和5年度は,実験結果について分析と評価を行った.その結果,タッピング検査では,視距離が短いほどミスクリック数が減る傾向にあること,トレース検査では,視距離が長いほどトレース精度が向上する傾向にあること,かつ最短経路を通る傾向があることが分かった.さらに,クレペリン検査では,視距離が長いほど計算間違いの発生頻度が低く抑えられ,正答率が向上する傾向があることが分かった.これらの成果は,国内外の学会,会議で報告を行った.
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