研究課題/領域番号 |
20K12584
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90030:認知科学関連
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
酒井 麻衣 近畿大学, 農学部, 講師 (40512299)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | イルカ / ハクジラ / 鯨類 / 子育て / 社会行動 / 繁殖成功 / 社会関係 / コドモ期 |
研究開始時の研究の概要 |
ハンドウイルカ属においては、母親に依存する期間(コドモ期)が3年間以上あり、かなり長い。本研究では「母親や他個体との相互作用・社会関係が、独立後の社会関係の基盤となり、また、母親から受けた養育行動が自らが産んだ子への適切な養育行動につながることが、長いコドモ期の適応的意義である。」との仮説を検証するため、長期個体識別情報のある伊豆諸島御蔵島のミナミハンドウイルカを対象とする。コドモオスの社会経験が独立後の社会関係に影響するかを検討する。また、養育行動の特徴が母から娘へ受け継がれるかを検証する。そして、繁殖成功個体と不成功個体のコドモ期を比較し、コドモ期の社会経験の適応的意義を明らかにする。
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研究実績の概要 |
R4年度は7月に野外調査を行い、21日間に25回出航し野生ミナミハンドウイルカ母子の水中ビデオデータを得た。胸ビレで相手をこする行動であるラビング、体の長軸を平行にして泳ぐ並泳、呼吸の同調、サポート遊泳、社会的性行動などの社会行動を記録できた。息子がペニスを母親の生殖孔へ挿入するマウンティングも観察された。今後、量的な解析を行う。母親の作る水流に子が乗り遊泳コストを軽減する行動(遊泳サポート)の分析のために、母と子の尾ビレを振る回数や、母子の体長の情報が必要である。そこで、共同研究として3Dカメラにて個体を撮影し、遊泳中の個体の体長を推定する手法の開発を試みた。その結果、85個体の体長を精度よく推定することができた。また、母子間行動の個体差には母親の年齢が影響を及ぼしている可能性がある。そこで、年齢不明個体の年齢を推定するために、成長と共に増える斑点を用いた年齢を推定する手法の開発を、共同研究として行った。また、ハンドウイルカ属の比較対象として、同じマイルカ科のシャチの母子間行動を継続観察した。娘が2歳から10歳に至るまでの間の母子間行動を分析したところ、頻度は漸減した。ラビングにおいては、 娘の成長に伴って送受の偏りが小さくなった。このことから、母が子へ投資するばかりだった関係が、娘の成長に伴い、母が娘から利益を得るような対等な関係に移行しつつあることが推察された。ハンドウイルカ属の場合、平均3.5歳で親離れするが、飼育ハンドウイルカでは1歳以降は子から母へのラビングが増えてくる。ハンドウイルカ属においても、母から子への投資だけでなく、子から母が受ける利益もある可能性が考えられる。例えば遊泳サポートはオトナ個体間の並泳においても、起こることが確認できている。今後、この点も考慮に入れながら母子間行動の分析を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在、母子間の社会行動について分析を進めているが、水中ビデオ映像の分析に多くの時間が必要であり、分析の進行がやや遅れている。また、各個体の行動の比較には、より多くのビデオデータが必要になることが考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
水中ビデオ映像の分析については、新たにハクジラ類の社会行動の分析経験を持つ者を雇用することを検討する。ビデオデータは、同じフィールドで研究する共同研究者と共有したり、野外調査の期間をより長くとることで、必要な量を得られるよう工夫する。
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