研究課題/領域番号 |
20K12599
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90110:生体医工学関連
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
藤井 文武 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (30274179)
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研究分担者 |
椎木 健裕 山口大学, 医学部附属病院, 講師 (30610456)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 肺腫瘍の呼吸性移動 / 未来位置予測 / 拡張 Bouc-Wen モデル / マルチモデル推定法 / 腫瘍の呼吸性移動 / 腫瘍の未来位置予測 / 繰り返し制御 / 腫瘍未来位置予測 / リカレントニューラルネットワーク / 動体追尾放射線治療 / 肺腫瘍 / LSTM |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,呼吸によって体内位置が実時間で変化する肺腫瘍に対する放射線治療の高度化に関連し,腫瘍位置を実時間で追跡しながら同時に照射も行う実時間動態追尾照射の実装に必要な,腫瘍の未来位置予測器の開発に取り組む. 肺腫瘍の動きは呼吸性移動とも呼ばれ,その運動は呼吸に同期して発生するが,呼吸そのものが揺らぎを伴うため,肺腫瘍の運動を確定的な数学モデルで記述するのは難しい.本研究では,肺腫瘍の動きを,揺らぎを含む周期的運動として解釈できる要素と非規則的な変動要素の重ね合わせと捉え,それぞれの信号の特徴に合致した予測モデルを構築し組み合わせることで,必要とされる予測時間で高精度な予測の達成を目指す.
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研究実績の概要 |
本年度は,肺腫瘍の呼吸性移動軌跡が示すヒステリシスを考慮に入れた予測を行うため,ヒステリシスを表現することのできる現象論的モデルの一つである Bouc-Wen モデルの活用について検討した. 肺腫瘍の呼吸性移動の周波数解析を行うと,複数の周波数ピークが観測される.そこで,肺腫瘍軌跡をFFTした結果を用いて3つの周波数帯域に分割した時系列軌道を生成し,そのそれぞれを用い,研究代表者がかつて提案した非対称性を表現可能な拡張 Bouc-Wen モデルのパラメータ同定を行った.この際,モデルの入力には3つの周波数帯域の重心周波数を用いることとした. これにより得られる3つの拡張 Bouc-Wen モデルのモデル出力を用い,粒子フィルタに基づくマルチモデル推定を行ってその精度を評価した.精度評価には,山口大学医学部附属病院で待ち伏せ型体幹部定位放射線治療を受けた12名の肺腫瘍患者の,実時間腫瘍追跡システムを用いて計測された3次元の肺腫瘍軌跡を利用した.腫瘍軌跡データの利用は患者の同意を得ており,研究計画は同院のIRB(H30-040-3)の承認を得て実施している. 当該分野で既存の推定手法として知られている,拡張カルマンフィルタ,Unscented カルマンフィルタおよびリカレント型ニューラルネットワークとの比較において,12症例中5症例において拡張 Bouc-Wen モデルを用いた粒子フィルタ推定が最も良好な推定結果を与えることが分かった.一方で,本年度の検討の主眼であるマルチモデル推定器が最良の推定精度となったのは12症例中2例にとどまった.この結果に,各患者の腫瘍位置の医学的所見を加えた考察から,提案したマルチモデル推定法の性能は,患者の腫瘍位置と肺の状態に影響を受けることが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マルチモデル推定に基づく肺腫瘍の未来位置予測については,目標としていたモデル構築手法の確立まで到達することができた.特に,肺腫瘍の未来位置予測モデル構築に際して,対象となる患者の病態に関する医学的所見を踏まえることが肝要であると確認できたのは今後につながる重要な知見である.
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今後の研究の推進方策 |
本課題の最終年度となる本年度は,繰り返し制御系の適応・ロバスト化というアプローチにより予測モデルの構築を行う計画である.
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