研究課題/領域番号 |
20K12694
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90130:医用システム関連
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
山本 格士 佐賀大学, 医学部, 助教 (80762187)
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研究分担者 |
青木 茂久 佐賀大学, 医学部, 教授 (10448441)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 血管平滑筋 / ATP感受性カリウムチャネル / メンブレントラフィック / ナノバブル / ソノポレーション / ナノ医工学 / 遺伝子治療 / イオンチャネル |
研究開始時の研究の概要 |
本申請研究は、ナノテクノロジーおよびイオンチャネルタンパク質の機能を応用し、下肢の末梢血行障害の改善に向けた低侵襲性の新規遺伝子治療を開発することを目的とする。 血液中のエンドヌクレアーゼによる核酸分解を防ぐために、気泡膜に内包したハイブリッド・ナノバブル中にカリウムチャネル遺伝子および膜移行タンパク質遺伝子を封入し、ソノポレーション法にて血管平滑筋に対して非侵襲的に遺伝子導入を行う。遺伝子導入効率とその効果に関して、in vitroおよびin vivoの観点から詳細に解析し、末梢血行障害への新規遺伝子治療システムの早期実用化を目指す。
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研究実績の概要 |
これまで研究代表者は、血管平滑筋型ATP感受性カリウムチャネル(KATPチャネル)の主なサブユニットタンパク質はKir6.1/SUR2Bの組み合わせであり、血管のトーヌス(筋緊張)および血管径の維持・調節に重要な役割を果たしていることを報告した(Yamamoto et al., 2015, 2017)。また、マウス膵β細胞由来細胞において、Kir6.2チャネルタンパク質の細胞膜へのメンブレントラフィック制御機序に低分子量Gタンパク質であるRab8aが深く関与していることを報告した(Uchida et al., 2019)。 本研究は、ナノテクノロジーおよびイオンチャネルタンパク質の機能を応用し、下肢の末梢血行障害の改善に向けた低侵襲性の新規遺伝子治療を開発することを研究目的としている。血液中のエンドヌクレアーゼによる核酸分解を防ぐために、気泡膜に内包したハイブリッド・ナノバブル中に「Kir6.2チャネル遺伝子」および「Rab8a遺伝子」を含むプラスミドDNAを封入し、ソノポレーション法にて血管平滑筋に対して非侵襲的に遺伝子導入を行う。血管平滑筋においてネイティブに発現しているKir6.1チャネルに加えて、Kir6.2チャネルを新たに細胞膜上に高発現させることにより、持続的な血管平滑筋の弛緩が期待される。これらの遺伝子導入効率とその効果に関して、in vitroおよびin vivoの観点から詳細に観察・解析し、末梢血行障害への新規遺伝子治療システムの早期実用化を目指している。まずは、ソノポレーション法による血管平滑筋への「Kir6.2チャネル遺伝子」の導入条件を最適化するため、in vitroの観点から分子生物学的および電気生理学的手法を用いた評価を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
先行実験として、「Kir6.2ΔC26チャネル遺伝子」配列末尾にGFPタグを付加した (Kir6.2ΔC26-GFP)プラスミドDNAをウサギ血管平滑筋細胞にソノポレーション法にて遺伝子導入し、約30%の細胞においてGFP蛍光を確認した。また、パッチクランプ法にてチャネル機能の解析を行い、GFP陽性細胞の全てにおいてKir6.2チャネルの開口を観察した。通常、ウサギ血管平滑筋細胞にはKir6.1チャネルのみが発現し、Kir6.2チャネルは全く発現しておらず、本法にて導入された「Kir6.2ΔC26チャネル遺伝子」によりKir6.2チャネルが細胞膜上に発現し、その結果、チャネル機能が生じたと考えられた。 さらに、ソノポレーション法による血管平滑筋細胞への「Kir6.2チャネル遺伝子」導入の最適な条件について検証するため、ウサギ大腿静脈の摘出標本に対し、「Kir6.2チャネル遺伝子」を含むナノバブルをソノポレーション法にて遺伝子導入後、その発現の有無について、分子生物学的解析(RT-PCR法、ウエスタンブロット法、免疫組織化学染色法等)を行い、実験系の確立・最適化を図っている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度と同様に、ソノポレーション法による血管平滑筋への「Kir6.2チャネル遺伝子」導入条件の最適化を主たる目的とし、具体的には以下の実験研究を行う。 (1)遺伝子導入後のウサギ大腿静脈を用いたin vitro解析 さらに本研究成果を発展させ、1)分子生物学的解析(RT-PCR法、ウエスタンブロット法、免疫組織化学染色法等)の他、2)血管張力に関する機能的解析(ワイヤーミオグラフシステム)、3)電気生理学的解析(微小電極法、パッチクランプ法)を用いて、対照群と比較して遺伝子導入による機能的変化が生じたか否かについて評価する。 (2)本法の臨床応用についての検討(in vivo解析) 「Kir6.2チャネル遺伝子」を導入したウサギ大腿静脈を静脈グラフトとして自家移植する実験系(摘出血管ソノポレーション)を構築し、遺伝子の導入効果による血管弛緩作用がどのくらいの期間持続するのか、また血管内膜肥厚や平滑筋増殖等の病理学的変化が起きるか否かについて、in vivoの観点から解析を進め、今後の本遺伝子治療の臨床応用に向けての糸口を探る。 また、本申請研究が当初計画通りに進まない場合には、細胞内ATP濃度に対して非感受性である、他の種類のポイントミュータント「Kir6.2ΔC26チャネル遺伝子」(Kir6.2ΔC26R166AチャネルおよびKir6.2ΔC26R166Gチャネル)に変更し、直ちに実験条件の改善を図り、遅延すること無く本申請研究を進める計画である。
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