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骨振動信号を用いた腰椎分離症診断補助システムの開発

研究課題

研究課題/領域番号 20K12696
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分90130:医用システム関連
研究機関北里大学

研究代表者

渡邊 裕之  北里大学, 医療衛生学部, 准教授 (40348602)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
キーワード腰椎分離症 / 腰椎分離モデル / 骨叩打信号 / Wavelet解析 / 振動信号 / 周波数解析 / 骨叩打
研究開始時の研究の概要

腰痛は国民の8割が生涯において経験すると言われています。腰痛は多くの業種において労働環境を悪化させ就業を困難とします。腰椎分離症は成長期に発生する腰の疲労骨折ですが、治療せずに成人すると慢性的な腰痛のリスクとなります。腰椎分離症は早期に診断し治療が開始されれば予後は良好です。本研究の目的は場所を選ばずに腰椎分離症の評価が可能な軽量で簡便な診断補助システムを開発することです。開発する診断補助システムは背中から腰椎を機器で軽く叩き、その際に骨に伝わる振動信号を解析することで腰椎分離症の有無を判定します。試作機では人工の腰椎を用いた実験や調査研究において腰椎分離症を判別できることが示されています。

研究実績の概要

本研究は腰椎分離症に対して腰椎棘突起より骨叩打信号を与え、脊椎内を反射受波した信号を採取・解析することにより腰椎分離症の有無を判別する診断補助装置を開発することである。本研究では人工骨にて作成した腰椎分離症モデルを用いて機器の精度をWavelet解析(時間周波数解析)を用いて検証した。その結果、叩打後45~70msecの期間にある100Hz前後の帯域で健常者では高信号の検出が認められているのに対して、腰椎分離症では同様の高信号が消失することが認められた。その後、複数個の人工骨モデルを用いて腰椎分離症の特徴的な周波数特性であることを確認した。本研究以前の段階ではWavelet解析ではなくFourier解析を使用していたため、反射受波した信号の総体的な解析結果であったが、骨折部を通過した時点での信号を時間変化の中で算出することにより、腰椎分離症の検出感度が増大した。
しかしながら、画像所見等により腰椎分離症の存在は明らかではあるものの、同様の高信号が消失しない症例が認められた。また、解析結果の高信号の出現の有無が混在する結果を示す症例も観察されたため、改めて人工骨モデルによる検証を行った。人工骨モデルによる結果の再現性は、腰椎棘突起にあてる叩打装置の先端部分の角度変化により解析結果に差を生じさせることが判明した。得られた振動信号に対する解析手法には問題はないが、叩打信号を脊椎に打ち込む叩打装置の設置角度が検出結果に影響を与えることが考えられた。
そこで人工骨を用いて脊椎棘突起にあてる叩打装置の角度を変えてさらなる検証をおこなった。叩打装置の設置角度の変化は反射受波する信号に影響を与えることが認められたものの、角度変化と信号の特性については一定の見解には至らず現在も検証が継続している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究は腰椎棘突起に叩打し、反射受波した信号をWavelet解析することで骨折の有無を検出する診断補助装置を開発することである。現在までの研究ではFourier解析を用いていたため、骨叩打信号の時間変化に対応した解析が困難であったが、Wavelet解析を使用することにより骨折部の情報を有する信号帯域に特化した解析が可能となった。人工骨による腰椎分離症モデルでは、叩打後45~70msecの期間にある100Hz前後に骨折の情報と考えられる信号特性が観察された。従来のFourie解析では判別のための周波数帯域設定や信号強度の設定が困難であったが、Wavelet解析を導入することにより、判別のための閾値設定を行わなくとも高い感度で骨折の有無を判別することが可能と考えられた。
しかしながら、現状において骨叩打信号を生体に安定して与えることに困難が生じている。人工骨では骨叩打装置をクランプにて固定して行うため、常に安定した解析結果が得られていた。生体を対象とする場合は骨叩打装置が手持ちとなるため、叩打の際に極めて不安定な状況となる。また、手持ちによる不安定性は叩打を与える腰椎棘突起と接触する叩打装置との角度を一定に保つことが困難であった。人工骨による腰椎分離モデルでは発泡ウレタン樹脂に包埋させるため、生体と同様に腰椎を目視することは困難であるが、人工骨設置の際の位置関係から腰椎の位置を推定することが可能である。このため、生体に叩打する場合と比較しても再現性の高い叩打が可能となった。さらに叩打装置による腰椎棘突起への接触圧も影響している可能性が考えられた。解析結果の整合性の問題は、当初より予見されていたので問題はないが、安定して信号を採取するための方法についてはさらなる改善が必要である。

今後の研究の推進方策

現在の研究段階においてWavelet解析による骨叩打信号の解析手法が確立したものの、叩打装置による安定した叩打信号の入力に問題が生じている。問題は骨叩打信号の入力時に叩打装置が腰椎棘突起に対して角度が一定でないこと、棘突起への接触圧が異なることが考えられた。この問題は人工骨による腰椎分離モデルでは比較的少ないものの、生体では散見される結果となった。
生体に骨叩打を行った際の叩打信号の入力による問題を解決する方法として、人工骨による再現性を改めて確認する。人工骨による腰椎分離モデルに対して、叩打装置の接触角度を10°単位で変化させ、その際に生じる周波数特性の変化や信号強度の変化について再度検証を行う。さらなる検証として、本研究では叩打信号の反射受波した信号の処理にWavelet解析を採用した。Wavelet解析は今まで用いてきたFourier変換に比較して感度の高い結果を示した。しかしながら、画像診断等による腰椎分離症の所見を有する患者に対して健常データと同様の結果を示す例が散見されたため、叩打装置を含むシステム上の問題解決に向けて信号処理による解析手法についても改めて検証の必要性を感じている。Wavelet解析に用いられる基底関数は現行でMorleyを用いている。Wavelet解析では数種の基底関数が存在し、解析対象となる信号にフィットした基底関数を用いるべきである。Morley以外の基底関数や基底関数の次数を変更させた際の解析結果についても合わせて検証を行う。
本研究では研究期間内にCOVIT19によるパンデミックが発生した。同時期に生体による骨叩打装置による信号の入力による検証を行っていたが、パンデミックにより生体のモデルを募ることが極めて困難となり、人工骨による検証が主体となった。研究期間を1年延長し、できる限り生体を用いた検証を進めていく予定である。

報告書

(4件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 2020 実施状況報告書
  • 研究成果

    (13件)

すべて 2023 2022 2021

すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (7件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Reliability and validity of ultrasonographic automated length measurement system for assessing talofibular anterior instability in acute lateral ankle sprain2023

    • 著者名/発表者名
      Kawabata Masashi、Kumazawa Yusuke、Takagi Kazuya、Okada Hirokazu、Miyatake Kazuma、Kobayashi Takumi、Nanri Yuta、Kenmoku Tomonori、Watanabe Hiroyuki、Takahira Naonobu
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 13 号: 1 ページ: 3098-3098

    • DOI

      10.1038/s41598-023-30079-z

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Evaluation of flexor digitorum superficialis function in adolescent baseball players2023

    • 著者名/発表者名
      Masuma Hiroyoshi、Kenmoku Tomonori、Saito Kazuo、Kawabata Masashi、Watanabe Hiroyuki、Miida Kazumasa、Onuma Kenji、Sukegawa Koji、Tazawa Ryo、Otake Yuya、Takaso Masashi
    • 雑誌名

      JSES International

      巻: 7 号: 1 ページ: 143-146

    • DOI

      10.1016/j.jseint.2022.09.009

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Physical functions, to be or not to be a risk factor for osteochondritis dissecans of the humeral capitellum?2022

    • 著者名/発表者名
      Sakata Jun、Ishikawa Hiroaki、Inoue Ryota、Urata Daigo、Ohinata Jun、Kimoto Takayuki、Nakamura Emi、Miyazaki Tetsuya、Matsui Tomoyuki、Watanabe Hiroyuki、Muraki Takayuki、Morimoto Mitsutoshi、Egawa Takuya、Kurokawa Daisuke、Furushima Kozo、Morihara Toru、Yamazaki Tetsuya、Yamamoto Noriaki
    • 雑誌名

      JSES International

      巻: 6 号: 6 ページ: 1072-1077

    • DOI

      10.1016/j.jseint.2022.07.001

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [雑誌論文] インターバルトレーニング中に 排出される飛沫・エアロゾル濃度の粒子径に よる違い2022

    • 著者名/発表者名
      渡邊裕之、河端将司、高平尚伸
    • 雑誌名

      日本臨床スポーツ医学会誌

      巻: 31 ページ: 39-47

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [雑誌論文] Increased medial laxity of the elbow in preadolescent baseball players with or without medial elbow apophysitis2021

    • 著者名/発表者名
      Watanabe Hiroyuki, Masuma Hiroyoshi, Kenmoku Tomonori, Kudo Hiroshi, Saito Kazuo, Nagami Tomoyuki, Sekita Junya, Matsunaga Atsuhiko
    • 雑誌名

      JSES international

      巻: 5 号: 6 ページ: 1119-1119

    • DOI

      10.1016/j.jseint.2021.07.010

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 歩行時における足底挿板療法が下肢アライメント、下肢筋活動量にあたえる影響 ‐内・外側アーチサポートの効果‐2022

    • 著者名/発表者名
      渡邊裕之
    • 学会等名
      第47回日本足の外科学会学術集会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] ハムストリングス肉離れ予防のための股関節遠心性トレーニングの効果ー大腿二頭筋筋束長の変化による検討ー2022

    • 著者名/発表者名
      渡邊裕之、大柴優樹、小野高志、河端将司、高平尚伸
    • 学会等名
      第9回日本スポーツ理学療法学会学術大会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] 大腿近位部へのフロッシング介入が連続投球時のパフォーマンスに及ぼす効果 ~無作為化クロスオーバー比較試験~2022

    • 著者名/発表者名
      平岡龍大, 對比地優介, 河端将司, 内田悠登, 大井望咲, 加藤雄大 茂木古遥, 渡邉勇人, 石井大輔, 見目智紀, 渡邊裕之, 高平尚伸
    • 学会等名
      第33回日本臨床スポーツ医学会学術集会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] Wavelet時間周波数解析を用いた骨振動刺激信号の解析による 腰椎分離症診断補助機器の開発2022

    • 著者名/発表者名
      加藤雄大, 渡邊裕之, 河端将司, 高平尚伸, 内田悠登, 大井美咲, 對比地優介, 平岡龍大, 茂木古遥, 渡邉勇人
    • 学会等名
      第33回日本臨床スポーツ医学会学術集会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] スポーツリズムトレーニングは即時的に跳躍パフォーマンスを向上させる2022

    • 著者名/発表者名
      中尾健, 河端将司, 渡邊裕之, 津田 幸保, 岩間徹
    • 学会等名
      第33回日本臨床スポーツ医学会学術集会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] バスケットボール選手に対する大腿部へのフロッシングの介入が大腿部の筋機能に及ぼす影響-無作為化クロスオーバー比較試験-2022

    • 著者名/発表者名
      茂木古遥, 渡邉勇人, 河端 将司, 内田 悠登, 大井望咲, 加藤雄大, 對比地優介, 平岡龍大, 原田優, 石井大輔, 渡邊 裕之, 見目智紀, 高平尚伸
    • 学会等名
      第9回日本スポーツ理学療法学会学術大会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] 成長期サッカー選手における片脚バランス能力と発育との関係2022

    • 著者名/発表者名
      渡邊裕之
    • 学会等名
      第33回日本成長学会学術集会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [図書] 予防理学療法学2022

    • 著者名/発表者名
      石川 朗、木村雅彦、小林麻衣、玉木彰、安齋紗保理、海老名葵、小野玲、上出直人、神谷健太郎、河野裕治、柴喜嵩、堀田一樹、本橋隆子、渡邊裕之
    • 総ページ数
      192
    • 出版者
      中山書店
    • ISBN
      9784521748153
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書

URL: 

公開日: 2020-04-28   更新日: 2024-12-25  

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