研究課題/領域番号 |
20K12698
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90130:医用システム関連
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
永岡 隆 近畿大学, 生物理工学部, 准教授 (00367054)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 深層学習 / メラノーマ / ハイパースペクトラルイメージング / データ加増 / ハイパースペクトラルデータ / 人工知能 / attention / 機械学習 / ビックデータ / 自動診断 / 医用画像 / スペクトラルイメージング |
研究開始時の研究の概要 |
メラノーマは表在性病変の一種である。進行したメラノーマの予後は極めて悪いが、早期メラノーマの予後は良好である。本研究では、我々が独自に開発した分光画像取得装置であるハイパースペクトラルイメージャーと呼ばれる装置と、これまでに我々が蓄積してきたスペクトル解析のノウハウを組み合わせ、実用的なメラノーマ診断支援システムの開発に挑戦する。本研究では特に近年開発が著しく進んでいる人工知能の一種である深層学習の採用を検討する。独自の深層学習ネットワークである、「ヒトに優しい人工知能 “Kind-AI”(キンダイ)」を導入し、臨床での実用に耐えうる正診率95%の実現を目指す。
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研究実績の概要 |
本年度も深層学習によるメラノーマの自動診断システムの開発に向け、大きく3つの分野の研究開発を推進した。1つ目は3次元構造を持つハイパースペクトラルデータ(HSD)を深層学習にそのまま入力する手法の確立である。多くの分野で研究が進められている深層学習は、主に2次元のカラー画像を入力対象としているため、3次元構造を持つHSDはそのままでは適用できない。本年度は3次元畳み込み層を持つ3次元深層学習ネットワークの使用に加え、2次元などの低次元への縮約も推進。tSNEやUMAPなどの次元縮約手法を採用。本研究で蓄積されたHSDデータベースを用い訓練・評価することで、90%を超える正診率が得られている。今後はHSDに対する前処理やデータ加増の採用などで、正診率の向上を目指す。2つ目として、正確な病変部抽出技術の確立である。これまでの知見により、病変部を画像から抽出して診断に用いることで、正診率が向上することがわかっている。本年度はDeepLabV3+などの最新の領域抽出深層学習モデルの使用に加え、古典的な機械学習手法を採用。皮膚と病変部という比較的単純な画像であることから、ビッグデータを必要としない、古典的な手法も病変抽出に有効であることが判明しつつある。今後は抽出画像による正診率の向上を目指す。3つ目として、生成系AIモデルの採用である。多くの分野で研究開発が進む生成系AIであるが、近年画像の入力も可能となりつつある。それらモデルに対して、メラノーマ画像を読み込ませることで、自動診断を実現する。入力方法や生成系AIに対する適切な質問方法の確立などが今後の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、深層学習を用いたメラノーマの自動診断システム、kind-AI melの開発を目標としている。kind-AI melの目標正診率として95%を設定している。これまでの各種深層学習手法の開発によって、一部の環境では目標に近い性能をマークしており、最終年度までに達成できる可能性は十分にあると考えられる。今後はメラノーマか否かの2群鑑別から、その他の皮膚色素性病変も含む多群鑑別へと発展する可能性が十分に高い。また、kind-AI melの開発によって得られたノウハウ、特にデータの前処理・後処理、データ加増技術などが、新型コロナウィルスの自動診断、柑皮症を活用した高脂血症の無侵襲診断、透析中心電図の解析など、他分野の技術開発に波及しており、当初の計画以上に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、HSDを用いた深層学習モデル、病変抽出モデルの高精度化、加増技術の確立の3本柱に加え、生成系AIを用いた診断システムの確立をメインに研究を推進する。特にHSDと病変抽出モデルを組み合わせ、さらに高精度な病変抽出ならびに自動診断性能の向上を目指す。この技術は同様に3次元構造を持つCTデータにも適用可能であり、新型コロナウィルスの自動診断システムの開発も併せて推進する予定である。スタイル変換による加増では、これまでスタイル変換の処理速度が遅いことが問題であった。近年高速スタイル変換技術がいくつか報告されており、これらによって大量のスタイル変換を実施し、より多くの枚数で深層学習モデルを訓練することによる高精度化が期待できる。これらの研究をまとめ上げ、最終的に正診率95%以上の自動診断システムの開発並びに臨床での実用化を目指す。
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