研究課題/領域番号 |
20K12743
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90150:医療福祉工学関連
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研究機関 | 北海道科学大学 |
研究代表者 |
山下 政司 北海道科学大学, 保健医療学部, 教授 (40210421)
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研究分担者 |
伊藤 佳卓 北海道科学大学, 工学部, 講師 (90849142)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 快感情 / 段階別刺激強度 / 線形対応性 / 不快感情 / 生理的指標 / 刺激モダリティ / AI / 快不快 / 生理指標 / 感情3軸生理モデル / 揺らぎ解析 |
研究開始時の研究の概要 |
終末期や病気等で会話できない患者など、人の感情を測ることを目的に、多くの研究で自律神経応答や脳波を用いて感情の客観的評価が試みられたが、個人差等により適合度が高くない現状がある。本研究は保健医療に役立つ人の感情を理解するシステムの基盤構築に向け、以下を実施する。 1.汎用性のある快・不快の生理指標を求めるため、覚醒度の異なる快と不快の生理応答特徴量を実験解析で探索し、異種刺激への適合性を検証して快・不快の生理指標とする。2.事前情報としての安静時生理信号のゆらぎ構造から生理応答の個人差の特徴を求め、AIを用いて被験者に依らない感情生理指標として確立する。
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研究実績の概要 |
まず、生理計測を簡略化するために、単電極でも心電図が計測できる手法の開発を行い、心電図との同時計測の結果、その有用性を確認した。また、電池駆動でも計測可能な単電極心電計を開発し、その特性を明らかにした。 次に、感情生理空間モデルの基軸となる快・不快のうち、本研究で明らかにしてきた快の暫定的生理指標について、その線形対応性を確認すべく爽快感を生じさせる刺激を作成して検証実験を試みたが、作成した刺激内容およびその強度の設定、実験の実施精度に課題が出てしまい、明確な線形対応性を示すことができなかったので、課題解決を図って再度検討する必要が求められた。快の暫定的生理指標は血圧波に基づいているので、感情価を示す質問紙結果との相関や血圧波をCNNによって解析した場合の識別率評価を行い、高い数値を確認した。 不快の生理応答については、覚醒度の異なる不快刺激である悲しみ・嫌悪・恐怖の各刺激および味・音・臭いによる不快刺激それぞれに共通する生理的応答について、連続血圧、心電図、脈波、呼吸波、心拍出量などの時系列データを調査した。これらデータから不快に共通する生理的応答が無いか検討を行った。文献的に示唆される呼吸周波数が上昇する傾向は共通して見られたものの、同時評価した爽快の快感情でも上昇するので、不快生理応答に独自のものとは言えない結果であった。ただし、不快と快を区別するには、快の暫定指標および呼吸波と呼吸性洞性不整脈の相互相関係数を同時評価することが可能性として見出されたので、呼吸周波数との複合パラメータにより、不快に共通する生理応答発見に向けてのヒントが得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ禍やインフルエンザ、溶連菌等の流行が長引いた影響で、人を対象とする生理実験を実施するには、感染対策を含めた様々な環境条件を整える必要があり、多くの生理実験を実施することが困難であった。 また、テーマの一つとする覚醒度が異なる様々な不快に共通する生理応答を見出す研究内容は、非常に多くの文献を探索しても見つからない難問題であることも進捗が遅い理由である。 さらに、心理的受容の個人差と生理応答の個人差とが重畳する特性および些細な事でも被験者の心理状況が変わってしまう上、非常にわずかな変化を捉えなければならない、安定性と繊細さが求められる難易度の高い実験であることも研究が進みにくい要因である。
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今後の研究の推進方策 |
作成する感情喚起刺激の設計を見直し、快の暫定生理指標の線形対応性を実証できる実験条件を整えて検証実験を行う。 また、不快の生理指標発見のために、脳科学の文献調査を深めて糸口を探る。脳神経、神経伝達物質等との関連を考慮しつつ、リターンマップ解析、リアプノフ指数解析、相互情報量解析などを実施する。 さらに、2023年度に見出した、快・不快を判別する生理的特徴を複合的に組み合わせた新たなパラメータを各種作成してその有効性を確認する。 最後に、これらの成果を踏まえてAI解析を適用して個人差をある程度克服した感情識別ができるようにする。
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