研究課題/領域番号 |
20K12772
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90150:医療福祉工学関連
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研究機関 | 広島工業大学 |
研究代表者 |
大谷 幸三 広島工業大学, 情報学部, 教授 (40351978)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | 尿糖 / 光センシング / モニタリングシステム / 健康管理 |
研究開始時の研究の概要 |
糖尿病対策は日々の生活習慣を改善することが効果的であることから,日常生活の中で患者の状態を非侵襲でセンシングし,管理できるモニタリングシステムが有用である.そこで本研究では,腰掛便器に組み込み可能な光学式尿糖モニタリングシステムの開発を目的とする.開発技術の特徴は2つある.1つ目は,申請者らが提案している光角度センサと近赤外線レーザを組み合わせた計測装置である.2つ目は幾何光学解析および光強度解析に基づき尿比重と糖(グルコース)濃度を同時検出し,信頼性の高い尿糖値を推定する計測手法である.計測データは無線通信でサーバへ転送し,蓄積する.これらのトレンドデータは携帯端末などから閲覧できる.
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研究実績の概要 |
本研究では,腰掛便器に組み込み可能な光学式尿糖モニタリングシステムの開発を目的としている.開発する計測技術の概略を述べる.まず,近赤外線レーザ光を測定対象へ投影し,液面と容器底面から反射する2つの光を光角度センサで検出する.このとき,液面からの反射光を利用し液面レベルを検出する.次に,容器底面からの反射光を利用して,溶液内部を通過する光線の軌跡を解析し,溶液の屈折率を算出する.この屈折率から尿比重を推定する.また,容器底面からの反射光強度が,糖の赤外吸収特性により減衰していることを利用して糖濃度を算出する.尿を排泄する前後の溶液に対してこれらの計測を行うことで尿糖値を推定する. 2022年度は,主に2つの課題に取り組んだ.まず2021年度からの継続課題として高速光角度センサの精度検証を行った.具体的にはセンサへの光入射角度,入射強度を種々に設定し,測定精度を確認した.その結果,液面からの反射光と容器底面からの反射光の強度に大きな違いがあることから,それぞれを同程度の精度で検出することが現時点では困難であることが明らかとなった.次に2つ目の課題として,市販の近赤外分光センサを用いてグルコースの赤外吸収特性の実験的検証を行った.1620nm付近に吸光特性が確認できたが,グルコース濃度を1%程度の分解能で識別できるだけの偏差を確認することはできなかった.今後は,光角度センサで検知した溶液の屈折率と吸光特性のセンサデータを組み合わせた尿糖値推定の方法を検討していく.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
光角度センサの構築はほぼ完了し,種々の実験から0.1度程度の分解能で光入射角度を検出できることは明らかとなった.ただし,液面からの反射光と容器底面からの反射光の強度に違いが位置検出精度に与える影響が無視できないことが分かったため,それに対する補正方法を検討する必要がでてきている.また,市販の近赤外分光センサを用いたグルコースの赤外吸収特性の測定実験では,グルコース濃度を1%程度の分解能で識別できるだけの偏差を確認できたが,さらに分解能を高めるためには何らかの方法で光路を延長するなどの工夫が必要となる.これらの課題解決に時間を要している.
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今後の研究の推進方策 |
尿比重は尿の屈折率と相関があり,糖濃度は赤外吸収量と相関がある.そこで,尿中に照射した近赤外線に対して,幾何光学解析に基づき尿の屈折率を計測し,また,光強度解析に基づき糖濃度を計測する方法をそれぞれ確立する.ただし,糖の赤外吸収による光強度変化だけでは十分な情報が得られないことも報告されているため,光角度センサの測定精度がポイントとなる.現在,光角度センサ及び近赤外センサを用いて試作システムを構築中ではあるが,いまだそれぞれが独立した測定系になっているため,これを1つのシステムとして統合する必要がある.そのために,レーザやセンサのインタフェースも含めた仕様を再度検討していく.また,センサデータの転送方法や解析結果の提示方法などソフトウェア側のシステム構築も進めていく必要がある.
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