研究課題/領域番号 |
20K12780
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 千葉工業大学 (2023) 東京大学 (2020-2022) |
研究代表者 |
富山 豊 千葉工業大学, 情報科学部, 准教授 (60782175)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 現象学 / 志向性 / 数学の哲学 / 論理学 / 意味論 / 意味 / 数学論 / フッサール / 数学的直観 / 直観主義 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、フッサール数学論を現代の数理論理学の知見を積極的に援用しつつ解釈・評価することによって、数学および論理の哲学におけるフッサールの思想の独自性を明らかにするものである。 その際、フッサールの数学論における「直観」概念の役割と「形式的証明」の役割に注目することで、数学の哲学における「直観主義」と「形式主義」との距離を測り、その独自の位置を見定める。
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研究実績の概要 |
フッサール数学論の解釈とその哲学史的位置づけにおいて重要な、(数学的)「直観」および「演繹」の両概念の関係性を、「計算」概念をあいだに挟むことによって検討した。フッサールの「直観」概念は自体所与性とそれに伴う正当化機能によって特徴づけられ、一見して誤解されるように「計算」や「証明」の概念と対立するどころか、むしろ一般にはそれを含むものである。この点で、フッサールの「直観」概念を即時性、無媒介性と結びつけて考えてしまっている先行研究の難点を指摘し、フッサール本来の「直観」概念を証明概念と結びつけることによってダメット哲学および数学的直観主義の伝統と、さらにそれを「計算」概念と結びつけることによってカリー・ハワード同型対応と関連づけることによって、数学における「計算」の持つ豊かな意味を正当に評価しようとする議論を2023年6月に刊行された『現代思想』第51巻第8号において展開した。2023年11月に刊行された『哲学雑誌』第137巻第810号においては、数学と現象学との共同研究において近年特に注目されている圏論との関係において、数学における圏論の特徴のどこが現象学と相性が良いものと目されているのか、圏論を利用することで現象学のとりわけどのような論点が明確になるのかを検討した。さらに2024年3月に刊行された『フッサール研究』第21号においては、先に述べた正当化機能としての直観概念を中核に据える「志向性」概念の理解を改めて詳述し、フッサール現象学の基盤である志向性理論の理解をさらに明晰にすることに貢献した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定した先行研究の整理作業はそれほど進んでいなかったものの、「計算」概念を新たに軸とすることでフッサール数学論の特徴を明らかにする議論を展開できたことは重要な成果である。また圏論と現象学の対話可能性についての論考を公刊したことで、今後この具体的な数学的理論を参照しつつこれまでにない精度でフッサール現象学の諸概念を明確化できる可能性を拓いたことも有益な成果である。また、『フッサール研究』掲載論文は今後のフッサール現象学研究に参入しようとする学習者の理解を深め、研究者コミュニティの発展に寄与する点でも貢献が大きいものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き予定より着手の遅れている先行研究調査に重点を置き、フッサール数学論に関するチェントローネ、ファン・アッテンらの重要な先駆的先行研究の整理、批判的吟味を進める。加えて、圏論と現象学の対話に関してもその後の議論状況の発展をフォローし、議論を進めるとともにその成果の紹介に努める。その副産物として、圏論的論理学との関連性も指摘されている直観主義論理との関係からフッサールとダメットとの相互関係についても理解が深まることが期待される。
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