研究課題/領域番号 |
20K12789
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
縣 由衣子 慶應義塾大学, 外国語教育研究センター(日吉), 講師 (30847869)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | ミシェル・セール / フランス現代思想 / 複数性 / 第三者 / エコロジー / 第三項 / コミュニケーション論 / エピステモロジー / 科学史 / 現代思想 / 認識論 / ミシェル・セール研究 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、フランスの現代思想家ミシェル・セールの思想における「複数」の概念に注目し、その哲学の横断的読解のモデルの構築を行う。現代社会において、「多」をめぐる概念は、社会に膾炙する一方で、その曖昧さは浮き彫りになりつつある。セールは、この「多」の概念の問題への打開策として、集団の中における複数の独立した個人の共在を表す概念である「複数」の概念を提示した。その上で、本研究では「複数」の概念をめぐる概念史を再構築し、セールの思想の位置付けを行う。これらを通じ、申請者は、セール思想における「複数」の概念が、現代の日本における様々な背景を持つ人々の共生のあり方を理論的に示していることを明らかにする。
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研究実績の概要 |
本年度の研究は国内で収集可能な資料の読解に基づくミシェル・セールの研究を中心に行われた。この研究の成果として、1回の講演会の実施及び2本の論文の刊行を行うことができた。 まずは、2022年11月に招待により日仏会館において、「日仏文化公演シリーズ」の第362回として単独での講演「哲学者ミシェル・セールの百科全書的な旅」を行った。この講演会ではセールについてのドキュメンタリー「百科全書的な旅」を上映後、セールの半生およびその学術的位置付け、研究における重要な論点について40分の講演を行った。特に、講演においては、第三項の複数性概念についてレクチャーを行った。さらに、2023年2月に青土社刊行の「現代思想」2023年3月号ラトゥール特集号に招待にて論文を寄稿した。このラトゥール特集号は2022年のブリュノ・ラトゥールの逝去を受けて編まれたもので、そこにラトゥールの哲学的側面に与えた影響の大きい思想家であるセールに立脚して、ラトゥールの思想を検討する論文「ミシェル・セールから見るブリュノ・ラトゥール 科学的精神からハイブリッドへ」を寄稿した。ラトウールをエピステモロジーの継承者としてバシュラール、セールの次に位置付けながら、セール思想における複数性の要素がラトゥールにどのように引き継がれているのかを探った。最後に、慶應義塾大学教養研究センター研究事業文理連接研究会主催で編纂された論考集『連接』に研究論文「ミシェル・セールの『自然契約』における自然概念とエコロジー」を寄稿した。本論文はその2年間の活動の成果として、セールの『自然契約』(1990)において論じられる自然概念の今日的有効性について論じた。その中でも特に、契約概念について注目して「自然契約」という理念を検討し直すとともに、セールにおいて統一的でも複数的でもある自然概念について解き明かすことを試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19の流行に伴い、夏季に予定していた渡欧しての調査研究及び交流が本年度も国内状況及び滞在先の状況の調整が及ばなかったことにより叶わなかった。このような状況下にあるものの、当初予定していた国内学会発表、海外学会発表、論文などの成果発表に関しては、国内での研究にて申請時当初の予定通り、あるいはそれ以上の成果が出ている(国内学会発表4回、海外学会発表1回、発表論文3本)。一方で、ヨーロッパでの調査及び交流による研究に関してはCOVID-19に伴いオンライン上のものに留まっており、この点に関して研究は予定通り進んでいるとは言えないため、進捗状況はやや遅れている、とする。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方針としては、本年度の夏季にCOVID-19によって延期となっていた渡欧調査を実施する予定である。この渡欧においてミシェル・セール財団をはじめ、実際にセールの周辺にいた人物からの調査を行うのと同時に、フランス、ベルギーにおいて本格的に開始されたセール研究の研究者たちと意見交換予定である。これらの研究動向をもとに今後のセール研究の展開と可能性をまとめ、また現地調査の結果も併せて学術論文の形での刊行を予定している。また、本年度も引き続き慶應義塾大学教養研究センター研究事業文理連接研究会にて、エコロジーをテーマとする研究が行われ、新たな論考集が編纂される予定であり、こちらへも論文を寄稿予定である。セールの『自然契約』において未だ十分に論じられているとは言えない契約概念についてさらに複数性の観点から分析を加えるとともに、腐敗と汚染の問題についても取り扱う予定で研究を進行予定である。
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