研究課題/領域番号 |
20K12818
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01030:宗教学関連
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研究機関 | 大谷大学 |
研究代表者 |
本林 靖久 大谷大学, 真宗総合研究所, 研究員 (30626833)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 真宗民俗 / 無墓制 / 墓上植樹 / 葬墓制 / 他界観 / 先祖供養 / 納骨 / アエノコト / 真宗地域 |
研究開始時の研究の概要 |
日本民俗学では、浄土真宗の篤信地域(以下、真宗地域)を真宗独自の世界と捉え、真宗門徒の民俗は民俗宗教における固有性を持たないものとして研究対象から外されてきた。 本研究では、真宗地域の伝統的な村落社会に特有に見られる、石塔を持たない習俗(無墓制)や墓地に木を植える墓上植樹の習俗などの葬墓制を、真宗門徒の特殊な民俗儀礼と捉えるのではなく、日本人の宗教文化の総体として考察を試みる。 そのうえで、真宗門徒の他界観を他宗旨に見られる霊魂観・他界観と比較検証すると共に、墓を持つことを当たり前と考えている現代の日本人にとって、「墓とは何か」を問い直す。
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研究実績の概要 |
2022年度の本研究は、フィールドワークを継続的に実施し、真宗地域の儀礼慣行の現状を調査した。特に、昨年度同様、能登地方の真宗門徒の儀礼慣行を他宗旨の場合と比較し、真宗民俗の内実について検討した。 まず、前年度まで調査研究を続けてきた能登地方の特有な真宗民俗と言えるコンゴウ参りについて、その研究成果を論文として刊行した。 フィールドワークとして、昨年度同様、奥能登の国指定重要無形民俗文化財であるアエノコト神事について、真宗門徒と他宗旨檀家との行事内容の比較調査を実施した。行事そのものは真宗門徒の家でも行われてきたにも関わらず、田の神様に厳粛で丁重な饗応をもてなす家は、真言宗や曹洞宗の檀家であることが多い。真宗門徒の家では、家ごとの報恩講に豊穣報謝が含まれ、盛大な膳がでた。そのことが、真宗の家ではアエノコト神事が概して簡素に繋がったのに対し、真言宗や曹洞宗の家では、田の神行事を中心に感謝と予祝の全てが込められていることが厳粛な行事として今日まで続いてきたものと思われる。 また、能登の国指定重要無形民俗文化財であるアマメハギ行事(来訪神)の調査を実施し、真宗村落で行われている背景を村や家の年中行事と照らし合わせながら検証した。そのほか、真宗地域に伝わる念仏踊り(盆踊り)の調査と資料を採取し、真宗地域の死生観や他界観について考察した。 その一方で、3年目の今年度は、真宗地域のなかでも鹿児島県・熊本県・愛知県・岐阜県を対象にした自治体史(民俗編)や民俗調査報告書による葬送墓制の事例報告を網羅的に把握した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度の北陸地方、2021年度の中国地方に続き、2022年度は、九州・東海地方の真宗地域の葬墓制の事例を自治体史(民俗編)や民俗調査報告書によって網羅的に把握しつつ、真宗村落の宗教生活の実態を整理し、データベース化を実施した。しかしながら、近畿地方の真宗地域の把握が遅れている。 また、重点的に能登地方のフィールドワークを実施し、行事には参加できたが、コロナ禍の影響で、村人からの詳細な聞き取り調査ができなかったこともあり、進捗状況はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度同様に、能登における真宗民俗の調査の続きを継続する。 また、真宗地域の無墓制・墓上植樹の報告のあった地区を整理し、現状を把握する。 その一方で、昨年度に考察する予定だった遺骨を祖廟(本山)に納骨する儀礼がどのような歴史的背景のもとで、地方に教化・流布されたのか、本山納骨の成立過程と真宗門徒にとって本山に納骨することがどのような意味を持つのか、それらの点を明らかにしたい。
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