研究課題/領域番号 |
20K12827
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01040:思想史関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
北井 聡子 大阪大学, 大学院人文学研究科(言語文化学専攻), 准教授 (40848727)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | ロシア・ソ連文化 / ソ連文学 / コロンタイ / ジェンダー / セクシュアリティ / ロシア文化 / ロシア思想 / フェミニズム / アレクサンドラ・コロンタイ / ロシア・ソ連史 / ソ連文化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、十月革命から1936年までのソ連におけるジェンダー/セクシュアリティの表象を分析することを目的とする。革命期から20年代中頃にかけては、男女平等、家族死滅、そして性解放が謳われたリベラルな時代であったのに対し、1930年代は家父長的家族が礼賛される保守的なジェンダー規範のみが許される時代へと変化した。本研究では、この家族や性をめぐる180度の方向転換がなされる過程において、ボリシェヴィキ内でなされた議論を検討し、またそこで産まれた文学や絵画作品を分析していく。最終的には対極的な2つの時代を断絶ではなく、一つの連続性の中に記述することを目標とする。
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研究実績の概要 |
2023年度は、当初の計画どおり、世紀転換期から1920年代のジェンダー表象分析を行った他、比較の観点をとりいれ、同時代の日本の「外地」文学におけるロシア人女性表象の分析を行った。 前者については、革命前から1920年代の売春婦に関する言説・表象の推移を、アレクサンドラ・コロンタイのテクストを中心に検討し、女性の性的身体に投影された政治を読み解いた。革命前のロシアの売春に関する言説は、社会や男性の犠牲者から、社会的病理や生物学的脅威としてネガティヴに認識される方向へと推移していったことが知られているが、コロンタイにおいても売春婦は批判の対象であり、 また労働ではなく、セックスで経済的援助を得ているとして主婦も売春婦と同列に扱われていた。しかし1923年の短編小説『姉妹』は、 労働者から売春婦に転落する女性の悲劇と、語り手の女性主人公が売春婦へいだくシンパシーを描くメロドラマとなっている。この議論の変化について、本研究では、1921年の政治的敗北や女性解放への意志が挫折し、コントロール不可能な政治的状況が、性的犠牲者のメロドラマを産出したものとして分析した。 後者は、満洲事変後、日本文学作品に登場した白系ロシア人女スパイの表象を扱った。生田美智子や小泉京美などの先行研究を参照しつつ、本研究ではハリウッド映画の影響を考察に取り入れることで、世界的な大衆文化の文脈に位置づけるとともに、ロシア人女性の性的身体をフィールドとした植民地幻想を分析した。 上記の研究成果は、12月のアメリカでの国際学会ASEEESでの口頭発表を行った他、2024年度中に、一論考として、また単著の一部にも収録予定。さらに、学外の研究者を招聘し2度の学術イベントを実施し、ロシア・ソ連におけるジェンダー表象を含む文化の諸相に関する最新の知見を得る機会を設けた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度単年に関して言えば、概ね年度初めの計画通り進めることができた。しかし、本プロジェクト申請時には、2023年度が最終年度の予定であったが、コロナや戦争の影響もあり、モスクワで予定していた資料へのアクセスができなくなったことなどから、全体としては「やや遅れている」という状況である。計画を組み立て治す必要があったことから、1年期間延長し、2024年度が最終年度となる。
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今後の研究の推進方策 |
期間を延期したため、2024年度が最終年度となる。夏季長期休暇を利用し、主にこれまで取り組めなかった1930年代のジェンダー表象に関する研究を進め、年度内に研究の総括として単著としてまとめることを目標とする。また期間中、不足する資料についてはフィンランドの国立図書館で入手できる目処がついたため、当地でのフィールドワークを行う予定である。
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