研究課題/領域番号 |
20K12829
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01040:思想史関連
|
研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
小田 透 静岡県立大学, その他部局等, 特任講師 (50839058)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
|
キーワード | クロポトキン / アナキズム / 相互扶助 / 翻訳 / 大杉栄 / デヴィッド・グレーバー / ユートピア |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、「翻訳」と「横断」というキーワードを手がかりに、19世紀末から20世紀初頭における最大のアナキズム著作家であるP・クロポトキン(1842-1921)の多岐にわたるテクストとその影響圏を精緻に読解する。複数の知的伝統や新たな学問的・言語的実践がせめぎあう世紀転換期の世界において、クロポトキンは、母国語ではない言語でも書くことを選んだ外国語作者でもあれば、地理学をはじめとして、生物学や歴史学など、複数の領域を横断する脱領域的学者でもあった。比較文学的視座のもと、本研究は、クロポトキンの思想のなかにある批判的種子とユートピア的想像力を掘り出すことをその目的とする。
|
研究成果の概要 |
P・クロポトキンの主著にして、彼の領域横断的で翻訳的な知の結節点ともいうべき『相互扶助論』(1902)の新訳の刊行が、本研究の最大の成果である。『相互扶助論』は、そのような横断性や翻訳性ゆえに、依然として批判的校訂版と言えるものが存在しないテクストだが、1902年初版、1904年改訂版、1914年廉価版を比較検討するとともに、デジタルアーカイブを駆使し、脚注の参考文献を精査することで、学術的に精度の高い翻訳を作成することができた。また、『相互扶助論』の同時代的な影響や、その現代的な意義、または、そこから派生した問題をめぐって、6つの国際学会で発表することができた。
|
研究成果の学術的意義や社会的意義 |
クロポトキンの『相互扶助論』(1902)は、ダーウィンの進化論の解釈をめぐる書物であると同時に、19世紀後半の人類学や歴史学の知見を総合する著作でもあれば、現代におけるウェルビーイングやケアについての議論を先取りするテクストでもある。そして、その歴史的かつ現代的な重要性にもかかわらず、大杉栄による100年以上前の翻訳を除けば、長らく絶版の状態にあった。本研究の成果として刊行された新訳は、この隙間を埋めるものであり、19世末の思想史や文化史の研究者のみならず、現代における社会運動にかかわる人々に、新たな参照点となるだろう。
|