研究課題/領域番号 |
20K12833
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01040:思想史関連
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
西村 洋平 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (90723916)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 知性論 / 目的論 / 新プラトン主義 / ペリパトス派 / 古代の知性論 / カテゴリー論 / 存在論 |
研究開始時の研究の概要 |
古代ギリシアから、中世・近世・現代に至るまでの哲学史をたどるときに欠かせないテーマの一つに「知性」(nous)がある。知性をめぐる議論は、人間が何かを知るとはどういうことか(認識論)、そして知られる世界とはどのようなものなのか(存在論)という問いを中心に展開された。本研究は、そうした思索の出発点でもある、アリステレス知性論をめぐる古代末期の論争に、これまであまり注目されなかった「存在のカテゴリー」という観点からアプローチすることで、その哲学史的な意味・意義を再検討する。
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研究実績の概要 |
本研究は「1. なぜ新プラトン主義は可能知性・能動知性を論じなかったか」,「2. 知性論と『カテゴリー論』はどのような関係にあるのか」という二つの問いに,様々な角度から取り組んでいる。本年度は研究の最終段階として,古代末期に知性論を論じることの意義を扱った。 新プラトン主義だけでなく,アリストテレス主義にとっても,知性について論じることは認識の問題だけでなく,世界の存在の理解と人間の生き方・あり方の理想を問題とすることであった。これまでの研究から,知性(そして知性が付与する形相)は,世界のあらゆる存在にとっての終極・目的であることが明らかとなったが,目的因の理解に新プラトン主義とアリストテレス主義には大きな隔たりがある。そこで本年度は新プラトン主義の目的の理解と,主にアレクサンドロスの目的論を研究対象とした。 アレクサンドロスの目的論については世界的にも研究が少ないため,専門家であるMarwan Rashed教授(Centre Leon Robin: CNRS-Universite Paris-Sorbonne)のもとで在外研究を行った。Rashed教授からは,参照すべき関連テクストの示唆や,古代末期からイスラームにおけるアレクサンドロスの受容と批判に関する知見を受けた。アレクサンドロスは,「より優れたものが原因となる」という,西洋哲学史において主流となる新プラトン主義的な原因の考えを持ちながらも,人間知性の発達や能動知性を論じる文脈ではそうした原理ではなく目的論に訴えている。「人はなぜ知ることを欲するのか」という問いに取り組む『形而上学』第1巻への注釈と並行して,プロティノスや後期新プラトン主義者たちが同じ問題にどのように取り組んだのかを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナの影響で延期していた在外研究が実現し,Centre Leon Robinの研究者たちとの交流や情報交換で,得るものが多かった。知性論の目的論的な枠組みは明らかになったものの,『カテゴリー論』の問題群(古代末期の存在論)との接続はまだ十分に行われておらず,最終年度への持ち越しとなったため。
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今後の研究の推進方策 |
まずは2022年度の研究成果を論文としてまとめ,在外研究を通して行った研究成果については海外雑誌に投稿する。 海外から研究者を招聘予定であり(調整中),実現すれば古代末期から中世にかけての知性論の意義に関するワークショップ・研究会を開催予定である。 これまで取り組んだ存在論,摂理論,目的論などのテーマを総括する研究に取り組み,本研究のテーマの仕上げとする。また,『カテゴリー論』が単なる論理学的な著作ではなく存在論から神学,倫理に至るまで幅広い問題群を形成していたことを明らかにする本研究の成果を発表するとともに,異なる専門分野の知見も得ることを目的とした研究会の開催を行う。
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