研究課題/領域番号 |
20K12838
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01040:思想史関連
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
藤原 佐和子 同志社大学, 研究開発推進機構, 共同研究員 (20735295)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | キリスト教 / エキュメニカル運動 / ジェンダー / セクシュアリティ / アジア / ジェンダー正義 / ジェンダー公正 |
研究開始時の研究の概要 |
「教会の一致」をテーマとする現代キリスト教のエキュメニカル運動は、あらゆる〈いのち〉に共に仕える包括的共同体(inclusive community)の形成を呼びかけているが、いわゆる「女性」をはじめとして、あらゆるジェンダー、セクシュアリティを生きる人々の十全な参加(full participation)はいまだに実現されていない。本研究は、「教会の一致」の議論と取り組みが、包括的共同体に向かって拡充されていくプロセスを、世界、アジア、日本という三つの観点から論及する。
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研究実績の概要 |
第一に、日本キリスト教協議会(NCCJ)における「ジェンダー正義に関する基本方針」の策定プロセスが、アジアのエキュメニカル運動から受ける影響について検討するために、インド教会協議会(NCCI)が2011年に発表した「ヒューマンセクシュアリティに関するエキュメニカル文書」、インドネシア教会共同体(CCI)が2016年に発表した「LGBTに関するCCI牧会声明」の策定経緯を調査し、内容分析に取り組んだ。それにより、反ジェンダー運動が勃興する社会状況において、これらの協議体が(他の公認宗教とは異なり)性的マイノリティのいのちと尊厳を擁護する立場を表明していた点や、先駆的事例となっているNCCIでは、若い世代や諸宗教との連携、地域別会合の開催、神学的、聖書的考察のリソース蓄積などの戦略が採用されてきた点、CCIではいわゆる「LGBT問題」は性的マジョリティの問題であると批判的に考察されていた点などを確認した。
第二に、世界教会協議会(WCC)が2001年に立ち上げた「すべての暴力を乗り越える10年」において試みられた、ジェンダーに基づく暴力の克服のための取り組みを調査した。具体的には、WCC「教会と社会における女性」プログラムの支援によるプロジェクトに加え、とりわけ性暴力とDVの克服を目指して、アフリカを中心に展開されたタマル・キャンペーン、ジェンダー平等のための国際的政策における男性の焦点化に対応した、ポジティブ・マスキュリニティーズと呼ばれる新規な取り組みについて検討し、そこから得られた知見をもとに、DOVを総括する『ジャスト・ピース・コンパニオン』(2012年)における主要な議論を批評した。また、「サバイバーの肯定」のために働くという教会の使命について考察するとともに、ジェンダー二元論に則った取り組みの限界を指摘することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究を遂行する上で、特段の問題は生じていないため。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、2000年代に世界教会協議会(WCC)が主導した「暴力を克服する10年」(Decade to Overcome Violence: DOV)が、国連「世界の子どもたちのための平和の文化と非暴力のための国際の10年」と並行して展開されていた点に着目し、WCCがどのように「子どもに対する暴力」(violence against children)の克服に取り組んできたかを調査する。そのために、第一に、1972年の世界キリスト教教育協議会(World Council of Christian Education: WCCE)のWCCへの統合、1989年の国連総会における「子どもの権利条約」の採択等が、WCCによる議論と実践にどのような影響を及ぼしたかについて検討する。第二に、2013年の第10回総会(於釜山)におけるユニセフ(UNICEF)との共同声明「子どもたちを中心に据える」以降の3つの戦略(気候的正義を含む)に注目し、特に2018年の「子どものセーフガーディングに関する基本方針」、2020年以降の子どもに対する性暴力を終わらせるためのキャンペーンの意義と課題について考察する。
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