研究課題/領域番号 |
20K12842
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01050:美学および芸術論関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小川 佐和子 北海道大学, 文学研究院, 准教授 (90705435)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 第一次世界大戦 / エメーリヒ・カールマン / ユートピア / ノスタルジア / ディストピア / ハプスブルク帝国 / オペレッタ / SF / モダニズム / ジャック・オッフェンバック / ヨハン・シュトラウスII世 / カール・クラウス / ジークフリート・クラカウアー / クルト・ヴァイル / ゲオルク・カイザー / ワイマール文化 / 多民族表象 / 世紀末ウィーン / 笑い / アイロニー / メロドラマ / 諷刺 / 亡命ユダヤ人 / ミュージカル |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の三つの柱は以下である。 まず、オペレッタの機能である「諷刺」と「パロディ」をめぐる理論的枠組を明確にする。オペレッタにおいて大衆が権威を反転させる物語構造や男性社会に異議申し立てをする女性キャラクターの機能、古典をパロディ化する自己反省的作用を検討する。 次に、オペレッタにおけるジャンル横断的な創造の協働性を問う。演劇・オペラ・映画・バレエといった隣接する視聴覚表象・身体文化との相互交流の実態を調査し、オペレッタの領域越境的な性格を明らかにしていく。 最後に、オペレッタの拠点であるウィーン、ベルリン、ブダペストにおける越境的展開に着目しつつ、アメリカニズムの導入についても調査する。
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研究実績の概要 |
今年度は第一次世界大戦期におけるドイツ語圏のオペレッタについて主に研究を進めた。オペレッタの歴史における第一次世界大戦の重要性を明らかにするとともに、ハプスブルク帝国期から戦間期へと移行する第一次世界大戦期のエメーリヒ・カールマンのオペレッタを中心に、帝国の理念であった「民族融和」というユートピア、帝国の喪失に伴うノスタルジア、戦争という現実のディストピアがどのように表象されたのかという点に着目して研究をまとめた。さらに現在ではこれらのオペレッタはどのように演出されることで受け継がれているのかという点について、現地のオペレッタ祭および劇場における上演(レハール音楽祭、バーデン劇場、フォルクスオーパーなど)を調査した。その成果の一部は日本におけるオペラ・オペレッタ演奏団体の東京二期会主催の公演プログラムや『ハプスブルク事典』(丸善出版)などに発表した。 また、オペレッタにおけるSFの主題に着目し、ジャック・オッフェンバックを中心とするフランスのオペレッタ『月世界旅行』、ジョルジュ・メリエスやセグンド・デ・チョーモンらの初期SF映画群、大都市として発展し住宅難に陥っていたベルリンの状況を月を植民地にすることで解消しようとするというフィクションに託したベルリンのオペレッタ『ルナ夫人』(パウル・リンケ作曲)などを対象に分析し、映画とオペレッタの関係にも議論を敷衍して、成果を発表した。この点に関しても、現地における公演調査およびオペレッタ・シンポジウムに参加した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は海外出張による現地調査を実施することができ、オーストリア演劇博物館のキュレーター・ダニエラ・フランケ氏、オペレッタ歌手およびカバレティスト(寄席芸人)のボリス・エーダー氏と数年ぶりに研究交流することが叶った。また、チューリヒ在住のボローニャ復元映画祭キュレーター・マリアン・レヴィンスキー氏のもとで調査を行い、初期サウンド映画におけるオペレッタの映画化および戦間期・戦後のチューリヒの音楽劇場におけるオペレッタ上演の調査を実施した。レハール音楽祭、バーデン劇場およびウィーン・フォルクスオーパーにおけるオペレッタ上演を現地にて調査することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は海外における図書館およびアーカイヴ調査と実際の作品上演調査が不可欠であるため、引き続き海外出張による現地調査を計画し、必要な資料を収集するとともに現地の研究者とのネットワークを広げていく。国内においては、実施可能な研究課題に取り組み、必要な資料収集を継続しつつ、国内の関連学会や研究会、上演・シンポジウム等が行われる場合には可能な範囲で出張やオンライン参加を行い、コロナ以後の海外調査および成果発表の下地となる基礎研究を進めておく。また海外のアーカイヴにおいて資料のデジタル化が進んでいる場合には、そうしたデジタル・アーカイヴを活用することで、網羅的な資料収集とその分析を進める。
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