研究課題/領域番号 |
20K12845
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01050:美学および芸術論関連
|
研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
川本 徹 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 准教授 (10772527)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
|
キーワード | 映画 / 驚異 / 視覚文化 / シネラマ / スペクタクル性 / 実写 / アニメーション / マジック / 文学 / 文化 / アメリカ |
研究開始時の研究の概要 |
現在アメリカ文化研究において、大きく注目されているテーマが〈驚異〉である。第一に、〈驚異〉は旧大陸と新大陸の環大西洋文化史を読み解く鍵であり、第二に、文学と視覚文化の関係性を読み解く鍵であり、第三に、現在のアメリカの集団的思考停止の謎を解く鍵である。しかし、〈驚異〉は主に文学研究の内部で議論されており、映画研究への応用は進んでいない。本研究の目的は、〈驚異〉についてのアメリカ視覚文化史を、文学から映画に軸足を移しつつ、より包括的に再構築することである。トニー・タナーの〈驚異〉の文学史を再検討した上で、映画史への接続を試み、最終的には現代アメリカの社会状況を考慮に入れた総合的分析を行う。
|
研究実績の概要 |
本研究の目的は、〈驚異〉をめぐるアメリカ視覚文化史を、文学から映画に軸足を移しつつ、従前よりも包括的に構築することにある。昨年度より、過去の研究課題(16K16748)と本研究課題の成果の一部をまとめた学術書を準備していたが、今年度はそれを『フロンティアをこえて ニュー・ウェスタン映画論』というタイトルのもと刊行することができた。この執筆過程において、昨年度までに進めた実写映画とアニメーションの起源に関する議論や、スペクタクルをあえて排除した近年のインディペンデント映画に関する議論を改良することができた。また、今年度は、1950年代にワイドスクリーンの先駆として〈驚異〉の感覚を徹底追求したシネラマについて、ニューヨーク公共図書館の演劇部門で文献調査を行った。本図書館にはシネラマをめぐる宣伝資料や新聞・雑誌記事が、全部で8箱からなるコレクションに収められており、同時代の言説を詳細に辿ることができた。本研究課題との関連で、特に重要だと思われたのは、シネラマと核開発の関連性に言及したいくつかの記事である。アメリカにおいて〈脅威〉と〈驚異〉の両方の対象であった核が、1950年代の映像文化といかに結びついていたのか。この点を解き明かす貴重な資料を調査できたことは、今年度の大きな成果である。奇しくも、このリサーチを行った時期は、世界初の原子爆弾開発計画および核実験をIMAX撮影で描く映画『オッペンハイマー』(2023)の全米公開と重なっていた。今回の文献調査は、この最新映画の視覚文化史上の位置づけを再考する上でも有益と思われる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度課題として残った個々のテーマの掘り下げは進めることができた。また、今年度は、新型コロナウィルスの影響もあって延期していたシネラマに関する海外リサーチを実施し、そこで重要な成果を得ることができた。一方で、その成果を具体的な作品の分析に反映させるまでにはいたっておらず、論文化も構想段階にとどまっているため、進捗状況は「やや遅れている」と判断する。
|
今後の研究の推進方策 |
上記のとおり、今年度はシネラマに関する文献調査を行い、1950年代の〈驚異〉をめぐる新たな一面が明らかになったが、それを作品分析に結びつけるところまではいたっていない。次年度は補助事業期間を延長し、この課題に取り組むことによって、本研究のまとめとしたい。特に研究開始当初より注目してきたSF関連の映画を対象に、作品とその上映環境、さらには同時代のテクノロジー言説を関連づけて考察する予定である。
|