研究課題/領域番号 |
20K12851
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01050:美学および芸術論関連
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研究機関 | 名古屋音楽大学 |
研究代表者 |
森本 頼子 名古屋音楽大学, 音楽学部, 非常勤講師 (50773131)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | オペラ / ロシア・オペラ / 白系ロシア人 / 来日ロシア人 / 日本オペラ史 / メトロポリタン・オペラ / 巡業 / 上海租界 / オペラ文化 / 地方公演 / 大正時代 / オペラの受容と伝播 / 極東のオペラ文化 / アメリカのオペラ文化 |
研究開始時の研究の概要 |
ロシア革命後に世界各国を巡業した白系ロシア人歌劇団のオペラ活動の実態を国境横断的に調査することにより、白系ロシア人によるオペラの伝播が、20世紀前半の世界における音楽・劇場文化の発展にどのように寄与したかを解明することを目的とする。本研究では、白系ロシア人歌劇団の代表格であり、日本を含むアジア諸国およびアメリカで活動した「ロシア大歌劇団Russian Grand Opera Company」(1917~24年)を取り上げ、各国におけるオペラ活動を精査するとともに、それらの総合的な比較検討を通じて、そのオペラ活動の特色と、各国の音楽・劇場界へのインパクトを多角度的に浮き彫りにする。
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研究実績の概要 |
本年度は、ロシア大歌劇団による「ロシア・オペラ」上演が、日本、上海、アメリカでどのように行われたのかを調査した。同歌劇団は、イタリアやフランスの名作オペラのレパートリーをそなえていたが、10作におよぶロシア人作曲家によるオペラを上演したことは、これまであまり注目されてこなかった。この点についてあらためて調査したところ、同歌劇団は、ロシア・オペラ上演で本領を発揮し、各地の劇場文化に大きなインパクトを残すとともに、20世紀前半の各国におけるロシア文化受容の一端を担っていたことが明らかになった。この成果については、シンポジウム「近代日本の洋楽受容とロシア」で発表した。 さらに、ロシア大歌劇団の花形歌手であったブルスカヤについても調査を進めた。日本、ロシア、アメリカに現存する新旧の資料をもとに、ブルスカヤの出自やオペラ歌手としてのキャリアについて精査した。彼女は日本で初の外国人オペラ・スターとなって、音楽・演劇・文学の各界に影響を与えたほか、渡米後にはメトロポリタン・オペラに入団して活動を続けた。メトロポリタン・オペラでは、ロシア大歌劇団での経験をふまえ、ロシア人歌手として息の長いキャリアを築いたことが明らかになった。本研究の成果は、早稲田大学総合研究機構オペラ/音楽劇研究所の研究例会で報告した。 なお、8月に計画していた上海での資料調査は家庭の事情で断念したが、2月にイギリスのダラム大学のスラブ・東欧音楽研究の国際学会に参加した。ロシア大歌劇団およびブルスカヤに関する研究発表を英語で行い、欧米、ロシア、ウクライナの研究者から、それぞれ有益なコメントを頂戴することができた。そのほかに、ロシアのオペラ文化に関する国境横断的研究も進め、共著書において、論文「18世紀ロシア宮廷におけるオペラ・セーリア上演の実態――ギリシア悲劇を原作とした作品に注目して」を発表することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上海への渡航はできなかったものの、イギリスで欧米、ロシア、ウクライナの研究者に向けて研究成果を発信し、交流できたことは大きな収穫だった。また、国内でもシンポジウムや研究会などでの発表を重ね、書籍も刊行できたことで、順調に研究が進展していると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
ロシアや上海への渡航は国際情勢に鑑みて難しいかもしれないが、アメリカなどで調査を行いたいと考えている。アメリカは、ロシア大歌劇団が最後に巡業した地であり、これまでの調査から、同歌劇団に関係する資料(公演プログラム、楽譜、メンバーの個人的な所持品)が現存していることがわかっている。これらを調査して、彼らの出自や、ワールド・ツアーの詳細、オペラ上演の実態を明らかにする。また、アメリカの音楽・劇場界に彼らがどのような足跡を残したのかを具体的に検証したい。 そのほかに、帝国劇場の専務取締役だった山本久三郎関係の史料が慶應義塾大学メディアセンターで一般公開されたため、これらを活用してロシア大歌劇団の来日の経緯や帝劇公演の詳細をさらに調査したい。
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