研究課題/領域番号 |
20K12852
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01050:美学および芸術論関連
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研究機関 | 名古屋音楽大学 |
研究代表者 |
山口 真季子 名古屋音楽大学, 音楽学部, 講師(移行) (40782214)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | フランツ・シューベルト / ヘルマン・シェルヘン / ディーター・シュネーベル / ブルーノ・マデルナ / 編曲作品 / 音楽的時間 / ダルムシュタット国際現代音楽夏期講習会 / ダルムシュタット / 作品解釈 / 戦後音楽 |
研究開始時の研究の概要 |
今日シューベルトの音楽は、古典的な枠組みでは捉えられない革新性をもつものとみなされている。本研究では、彼の音楽に対する評価の変遷を考察するうえで、1960年代までのダルムシュタット夏季現代音楽講習会に着目する。これまでの研究では、両大戦間期のシェーンベルク、アドルノ、シェルヘンによるシューベルト解釈に評価の転換点を指摘したが、その戦後への波及、展開を明らかにすることが本研究の目的である。シューベルト解釈における戦前と戦後の接続点として、彼らが重要な役割を果たしたダルムシュタットにおける音楽議論、人的交流を検討する。
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研究実績の概要 |
本年度は、ブルーノ・マデルナとディーター・シュネーベルそれぞれのシューベルト作品の編曲から、彼らの創作における考え方とシューベルトの音楽を解釈するうえでの視点がどのように関わっているかという点について、パウル・ザッハー財団での一次資料調査も含めて考察を進めた。まず指揮者ヘルマン・シェルヘンの弟子でもあるマデルナがシューベルトの舞曲、行進曲を管弦楽編曲した《5つの舞曲》を取り上げ、この編曲に見られる特徴について論文「シューベルト/マデルナ《5つの舞曲》(1965)――原曲の管弦楽的要素とマデルナの『再解釈』」にまとめた。具体的には、シューベルトの原曲がもつ主題の旋律線を保持しつつ、音域、強弱、テクスチャーといった要素によってその性格を変化させていく傾向が、マデルナの編曲においては楽器の組み合わせや強弱の変更によって明確化されていることが分かった。また原曲の対位法的書法に対して部分的にそれを複雑化させている点からは、マデルナ自身のポリフォニックな書法に対する嗜好とともに各声部が混然一体となった同時的な鳴り響きへの関心がうかがえた。 ディーター・シュネーベルの管弦楽作品《シューベルト・ファンタジー》(1978/1989)の一次資料調査からは、この作品の成立過程においてシュネーベルが原曲のどのような特徴に注目し、どのような観点から編曲を行ったのかについて、これまで先行研究で指摘されている内容を補完できると考えており、今後、論文等の形で発表する予定である。さらにベルリン芸術アカデミー資料室では、シェルヘンが1947年のダルムシュタットで行った講演に関連する可能性のあるノートのメモ書きを調査したが、解読が難しい部分も多く、刊行されているシェルヘンによる文章と照らし合わせてさらなる検討が必要と考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では本年度が最終年度の予定だったが、本年度の一次資料調査は予備調査の性格も強く、成果として発表していくうえではさらに資料の精査が必要な部分がある。しかし海外での資料調査をようやく実現でき、一次資料の状況把握を行うとともに海外の研究者から情報を得ることもできたため、研究を進めていくうえで大きな収穫となった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に引き続き、1970年代を中心とするシューベルトに関する論考や編曲作品等からさかのぼるかたちで1950~60年代のダルムシュタットを中心とする作曲の議論との関わりを明らかにしていく。海外での資料調査をふたたび予定しており、一次資料を用いた考察とこれまでに進めてきた刊行資料の読み込みとを総合して成果としてまとめたい。
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