研究課題/領域番号 |
20K12864
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01060:美術史関連
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研究機関 | 神戸大学 (2023) 京都産業大学 (2020-2022) |
研究代表者 |
礒谷 有亮 神戸大学, 国際文化学研究科, 講師 (70845304)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 写真史 / フランス / 写真 / 1930年代 / 美術史 / 両世界大戦間期 / モダニズム / フランス写真協会 / 新即物主義 / ピクトリアリズム |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は1920から30年代のフランス写真界において、写真固有の表現を目指すモダニズムと絵画や版画の表現を模倣するピクトリアリズムの、従来相反するものとされてきた二動向が混交する状況が存在したことを、一次資料調査から実証的に明らかにする。また、この折衷的な状況が等閑視されてきた経緯を、第二次世界大戦後に見られた写真史の形成過程の分析を通して考察する。それによりピクトリアリズムからモダニズムへの直線的な移行という、従来の20世紀写真史を規定する、進化史的かつ様式相互の断絶に基づく図式を歴史的、研究史的に再考し、様式間の連続性や横断性に着目した、より包摂的な写真史の枠組を提示する。
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研究実績の概要 |
本研究では両世界大戦期のフランスにおいて、ピクトリアリズムからモダニズムへの移行という従来の写真史における進化史的な見方が当てはまらない状況が存在したことを明らかにする。その上で、戦後の写真史の語りの形成の分析を通してこうした状況が等閑視されてきた原因を考察し、時代や様式の区分に基づく従来の写真史に批判的検討を加える。 今年度は時代様式上折衷的な傾向を示した戦間期フランスの写真家や写真動向が、戦後整備される写真史のなかで忘れられていった原因を探るべく、1936年にパリの装飾美術館で開催された同時代フランス最大規模の写真展、「現代写真国際展」を中心に考察した。その内容は「「現代写真国際展」(1936年)についての一考察」と題する論文として刊行した。同展では写真は独立した芸術分野として扱われ、写真がフランスで美術館のなかに位置を占める重要な機会を作った。ところが、展覧会の開催主体であり、同時代の写真の振興を牽引した人物のひとりであるシャルル・ペニョは、印刷出版およびグラフィック・アート関連の事業を本業としていたため、この展覧会以降、写真からはほとんど手を引いてしまったことが理解された。フランス戦間期の写真はペニョはじめ主に印刷出版関係者によって支えられていた。本論文の内容は、彼らの関心の変化がこれ以降のフランスでの写真の美術館への定着の遅れに影響を及ぼした可能性を示すケース・スタディとなった。 論文執筆以外には9月に渡仏し、ペニョの遺族に聞き取り調査を行った。またフランス国立図書館を中心に、戦間期から第二次世界大戦後にかけての写真関連雑誌・記事の調査を行い、戦後のフランスにおける写真史形成について調査を進めた。これらと同時に、これまでの内容をまとめて単著として発表する準備を継続中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ禍により当初の助成期間3年の間に予定していた海外渡航が叶わず、昨年度助成期間の延長申請を行った。本年度はようやく海外渡航が実現したものの、当初の計画からはやはり遅れているため、再延長申請を行った。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は戦後の写真史形成の中心地となったアメリカ、ニューヨーク近代美術館において戦間期フランスの折衷的な傾向がどのように扱われていくかを主たる調査研究の対象とする。同時にフランスにおける戦後の写真の歴史化の過程を考察し、アメリカでの状況と比較検討する。 上記の調査を進めるとともに、これまでの研究内容をまとめて単著として刊行する予定である。必要に応じて不足している資料の補助調査を行い、年度内の刊行を目指している。
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