研究課題/領域番号 |
20K12874
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01060:美術史関連
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研究機関 | 神奈川県立近代美術館 |
研究代表者 |
菊川 亜騎 神奈川県立近代美術館, その他部局等, 研究員 (50826310)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 抽象美術 / 戦後美術 / 彫刻 / 美術批評 / 近代美術館 / 戦後日本美術 / 野外彫刻 |
研究開始時の研究の概要 |
日本の彫刻分野において抽象表現が隆盛するのは1950年代前半であった。近代美術館によって抽象表現の歴史化が進められるのに並行し、ヴェネチア・ビエンナーレなど国際美術展への参加が始まり、このとき抽象彫刻の批評基準となったのは欧米の動向に共鳴しながらも日本的感性をたたえた表現であった。本研究では当時開催された近代美術館の展覧会に注目し、美術館から批評を先導した今泉篤男や土方定一らが関与した彫刻展やその言説について検討する。また同時期に日本が参加を始めた国際展の作家選抜の経緯についても調査を行い、急速にグローバル化する美術界のなかで彫刻に対する批評基準が築かれていった背景を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究は美術批評の言説をひもとき、彫刻における抽象作品への評価と抽象概念への理解がいかに築かれていったか、1950年代を中心に検証するものである。令和5年は、主に展覧会の企画を通して研究成果を公表した。下記の研究活動から論文を数本まとめ、一部の成果は次年度に公開する予定である。 作家研究を行なってきた幾何学抽象の先駆者・堀内正和については、展覧会「堀内正和 芸術という作用」(ユミコチバアソシエイツ)を監修し、悉皆調査に基づく研究成果を作品とあわせて紹介した。 続けて、1950-1960年代にかけて顕著に登場した「彫刻」「立体」「オブジェ」といった立体作品を指し示す概念を考察するために、展覧会「イメージと記号 1960年代の美術を読みなおす」(神奈川県立近代美術館)を企画、開催した。このテーマに取り組むため中心に据えたのが、堀内正和、岡崎和郎、若林奮である。調査のなかで明らかになった作品と資料に基づいて、彼らの作品様式の変遷や、その批評について考察を深め、戦前から議論されてきた立体作品についての概念が、戦後、とりわけ1960年代前半の視覚文化や現代美術の動向を如実に反映しながら日本のなかで独自に深化していったことを、展覧会とカタログ論文を通して明らかにした。 また具象傾向では昨年に引き続き、戦後の具象彫刻を先導した佐藤忠良に焦点をあてた。展覧会「生誕100年 傑作誕生 佐藤忠良」(神奈川県立近代美術館)に際しては、トークイベント「『佐藤忠良』を再読する」を開催した。棚田康司氏(彫刻家)、冨井大裕氏(美術家・武蔵野美術大学教授)、藤井匡氏(東京造形大学教授)、三上満良氏(前宮城県美術館副館長)を招き、戦前から戦後に通底する佐藤の人体像にみるリアリズム表現の解釈について、また佐藤の創作や彫刻教育の背景にあった社会主義思想について、シンポジウム形式で研究発表を行い議論を深めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究史のなかで初公開となる作品や資料に基づき、公共性の高い展覧会および論文を通して研究成果を公表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
学術的考察を行うために、引き続き美術館のアーカイブ、美術館図書館、国会図書館などで資料収集し、理論構築を行う。
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