研究課題/領域番号 |
20K12878
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01060:美術史関連
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所 |
研究代表者 |
岩永 玲 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 研究員 (90865586)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 石造物 / 製作技術 / ブリテン島 / 古代末期 / 初期中世 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、ブリテン島の古代から初期中世の石造物を対象とし、①キリスト教の普及や北欧文化の浸透といった社会変化の中で、古代ローマ人の文化がどのような形で初期中世に継承もしくは廃絶したのかを明らかにすること、および②「古代から本格的な中世への移行期間」という初期中世に対する漠然とした評価を見直すことを目指す。特に、これまで深く追及されてこなかった石造物の製作技術に焦点を当て、初期中世における石造物製作技術の系譜が古代に遡り得るものかどうかを探る。
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研究実績の概要 |
本研究は、ブリテン島の初期中世の石造物が古代の石造物から継承する要素の有無やその具体的様相を、技術面に焦点をあてて探る試みである。対象資料は、イングランド北部に分布する古代から初期中世の石造墓標・石造祭壇である。申請時の具体的な課題は、①加工痕分析に基づく石造物の加工技術の解明、②拡大鏡を用いた石造物の観察と露頭調査に基づく石材産地と石材入手法の推定、③意匠の型式学的検討に基づく石造物編年の構築と技術系統の抽出であった。しかし、COVID-19の状況を踏まえ、渡航を前提とする②の実施は難しいと判断した。そこで計画を一部変更し、③の充実を図るとともに、①は可能な範囲で解明を試みることで対応することにした。 ①石造物の加工技術の解明:新規調査を実施できなかったため、既に実見を終えている資料を対象に、施文技術の復元をおこなった。これに基づき、2021年度に提示した文様加工技術の分類に修正を加えた。 ②昨年度に引き続き、本年度も実施できていない。 ③石造物編年の構築と技術系統の抽出:申請者がかつて「ヨークI類」として分類した一群の文様の系譜を探るため、装飾写本や金属製装身具を対象に類例の集成をおこなった。ただし、集成に終始しており、それらを用いての分析の面で遅れが出ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
①石造物の加工技術の解明:COVID-19の影響により資料調査が実施できなかったため、既に実見を終えている資料を対象に、施文技術の復元をおこない、2021年度に提示した文様加工技術の分類のうち、陰刻の手法に修正を加えた。具体的には、従来、施文計画線に対し平鑿を左右から斜めに打ち込むと解釈していたもののなかには、①この手法によるものと、②角錐状の先端をもつ鑿を施文計画線に沿って打ち付けるものの2パターンがあり、これらが同一個体中における文様線の幅の違いに概ね対応することが判明した。 ②調査が実施できなかったため、進んでいない。 ③石造物編年の構築と技術系統の抽出:類例との文様の比較を通して系譜関係を探る予定であったが、類例の集成に終始しており、具体的な系譜の抽出をする作業ができていない。その要因は、集成の過程で類例の製作時期の比定について課題が多いことが判明したことにある。特に埋納遺構からの出土品については、既に提示されている年代観を出土状況の詳細に基づいて見直し必要があることが判明し、英語以外の文献を含めてこれに対処する必要が生じたため、当初計画通りに分析を進めることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、世界的に渡航可能な状況に変化したことを受け、本研究の骨子である海外調査を実施する。ただし、時間および予算上の制約から、1次の調査で得られる情報が多い①を目的とした調査に専念する。また、③に関して、類例の出土状況の整理を進めつつ、石造物と装飾写本・金属製装身具の文様の比較検討をおこなう。
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