研究課題/領域番号 |
20K12897
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01070:芸術実践論関連
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
高橋 かおり 立教大学, 社会情報教育研究センター, 特定課題研究員 (30733787)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 芸術家 / ジェンダー / 移動 / ワーク・ライフ・バランス / コロナ禍 / 文化政策 / Covid-19 / クラウドファンディング / 創造的労働 / 地域 / 労働 / 余暇 / 仕事 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、現代社会における芸術との関わり方について社会学の視座から明らかにするものである。プロフェッショナルの芸術家のみならずアマチュアとしてかかわる人も調査対象とし、とりわけジェンダーと活動拠点(間)の移動と滞在による影響を変数として、それらの要素が個人の芸術活動に及ぼす効果を分析する。 これらを通じて、芸術活動にある労働と余暇のスペクトラムを解き明かすと同時に、芸術活動の主観的意味づけと行為の相互作用から、アイデンティフィケーションの過程の考察を行う。最終的には、「近代的芸術家」のあり方に代わる、人々と芸術との関わり方の現代的な位相を提示する。
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研究実績の概要 |
本課題においてはこれまで調査対象者の語りを中心に分析を行ってきたが、今年は調査方法論の見直しを行った。2023年9月にカルチュラルタイフーンで学会報告を行い、語りのみに依拠した研究の危うさやその不安定さについて分析を行った。特に、ハラスメントやワーク・ライフ・バランスといった個人の生活状況に依拠した社会問題においては、本人の主観的意味づけの理解には周辺的情報を踏まえて複合的に論じる必要があることを結論として提示した。 さらに、2023年12月末~2024年1月にドイツ・ベルリンで実施した追跡調査(これまでの調査協力者へのインタビューとフィールドワーク)において、語りのみならずフィールドワークやその他資料を基に、芸術に関わるという実践を総合的に分析するための資料や視座を得た。ドイツ・ベルリンでの調査は2020年初頭以来であり、この数年間テキストでのやり取りが中心であった調査協力者たちと対面で出会うことによって、彼ら自身の生活の変化や、観察可能であるが語られない状況について把握することができた。コロナ禍において情報取得や意見交換の面ではオンライン化が進んだが、創作・表現の現場においては場所と時間を共有することの必然性は失われていなかった。さらに、コロナ禍や政治的変動の影響を受けた後のベルリンという街の変化についての知見も得た。 以上の通り、本年度実施した方法論の再考と追跡調査の実施によって、本研究を通じて得たデータや資料を長期的な視座から再検討するという次年度以降の研究方針を見出すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画時点では予期していなかった世界情勢の変化や、期間延長に伴う資料・データの増加を踏まえ、データ分析・整理の方針を改めて検討・調整したため、本年度においては積極的な成果発表まで到達できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度においては、これまでの調査データの整理と再解釈、最新の研究動向に関する批判的検討を踏まえた積極的な研究成果の発表、研究ネットワークの構築の3点を行い、個別研究を総合的研究成果としてまとめる。 第一に、既発表論文の分析を踏まえ、論文発表時点からの調査協力者の変化や時代変化を踏まえた研究データの整理及び再解釈を行う。特に語りだけに注目するのではなく、調査協力者たちの活動動向や芸術実践を複合的に考慮した分析を行う。そして、これまで構築してきた調査協力者とのラポールを活用し、必要に応じて追加調査を行いながら、長期的な視座からこれまでの事例を再分析する。 第二に、主にコロナ禍以降の芸術・文化における実証的研究の批判的検討を行う。本研究では移動とジェンダーを説明変数と置いているが、両者ともコロナ禍においてその影響力は大きく変化した。英語圏の論文においては論じられる動向として、移動に関してはコストが増し、ワーク・ライフ・バランスやジェンダー均衡への配慮がより進んでいることが明らかになっている。これらの最新の研究動向に自身で行った長期的な分析やその成果を位置づけることで、日本を拠点とする芸術家たちのコロナ禍前後の変化と今後の芸術・文化活動の展開を踏まえた知見や成果を学会発表や論文において発表する。 第三に、2024年11月の日本社会学会において「創造・表現の場を調査する――芸術・文化を社会学的に研究する意義と課題の共有に向けて(仮題)」というテーマセッションを企画し、共通課題についての異なる知見の共有を行い、芸術・文化の社会学の学術的貢献に寄与する場を設定する。
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