研究課題/領域番号 |
20K12898
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01070:芸術実践論関連
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
久保 豊 金沢大学, 歴史言語文化学系, 准教授 (30822514)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2021年度)
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配分額 *注記 |
2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 映画学 / キネマ旬報 / エイジング / 若さと老い / セクシュアリティ / 映画産業史 / 映画批評 / ジェンダー / 青春映画 / アダプテーション / 日本映画産業 / クィア / 映画雑誌 / 商業映画 / 役者 / 映画研究 / クィア・スタディーズ |
研究開始時の研究の概要 |
年齢を重ねる過程を指すエイジングの視点は、英語圏のクィア・スタディーズや社会学で2000年代初頭から注目され始め、映画や文学を分析対象に重要な成果を挙げてきた。本研究では、そうした英語圏の根底にある問題関心や批評的前提に学びつつ、若さや老いをめぐる日本映画の産業的・批評的傾向を分析するためには、どういう新たな視点や方法論が必要なのかを探ることを目的としている。そのために日本が高齢社会に突入した1995年から2015年までに刊行された映画雑誌『キネマ旬報」を精査し、エイジングの規範形成の過程で映画産業が果たす役割や、エイジング言説に応じた作品批評の歴史的変化を明らかにする。
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研究成果の概要 |
2年間にわたる本研究期間中、1995年から2015年までに刊行された504冊の『キネマ旬報』を対象に、若さや老いをめぐる社会状況や言説の変化に応じた映画産業の製作・興行戦略と映画批評の動向について包括的な調査を行った。日本が高齢社会へ突入したばかりの1990年代後半から2000年代初頭までは、製作と批評のいずれも映画がいかに老いの経験を捉えることができるかに高い関心を示した。しかし、2000年代後半から2010年代では、製作が青春映画の流行を通じて老いよりも若さや「未熟さ」を重宝した一方で、男性中心主義的な映画批評は若さや「未熟さ」の表象に対して辛辣な視線を向けてきたことが明らかになった。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本研究の学術的意義は、『キネマ旬報』の検証で得た知見を戦後から現代までの日本映画の分析を通じて、映画学とエイジング研究を接合し、視覚文化にみる若さや老いを批評する方法論を発展させた点に見出せる。本研究は、異性愛規範的かつ男性中心主義的な超高齢社会・日本における若さと老いに対する表象と言説の分析を通じて、性的マイノリティや女性の老いが男性の老いよりも「未熟」で「劣る」とされるだけでなく、男性の老いをめぐる弱さを見えづらくする傾向を明らかにした。老いの複雑さ、弱さ、繊細さが映画や批評で不可視となり、それは実社会で老いを語りにくくしている傾向と共鳴すると明らかにした点が本研究の社会的意義である。
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