研究課題/領域番号 |
20K12906
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01080:科学社会学および科学技術史関連
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研究機関 | 東京医科大学 (2021-2023) 専修大学 (2020) |
研究代表者 |
井上 弘樹 東京医科大学, 医学部, 講師 (40868527)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 医療社会史 / 寄生虫症 / 寄生虫病予防法 / 地域史 / 日本 / 台湾 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、20世紀前半の日本と植民地期台湾における寄生虫症の蔓延や対策をめぐる医療社会史である。研究目的は、両地域において、回虫などの寄生虫症がなぜ蔓延して、対策がどのように成立・実施され、人々の生活にどう影響を与えたのかを、地域社会の視点から明らかにすることにより、地域や国家や帝国統治を立体的・多層的に把握することである。寄生虫症の蔓延と対策は、地域の特徴(自然環境、医療、衛生、教育、社会の組織化、習慣など)を強く反映した。そのため、寄生虫症の蔓延と対策の歴史を比較分析することにより、国家権力が地域社会に与えた影響と限界や、政治権力側に回収されない地域社会の自律性などが明らかになるだろう。
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研究実績の概要 |
2023年度は、台湾と日本国内で資料調査を行い、その成果は市民参加型イベントや書籍(2024年刊行予定)などで公表した。 (1)【国外調査】COVID-19のために先延ばしになっていた台湾での調査を実施した。1931年に日本で施行された寄生虫病予防法に準ずるものが、植民地時期の台湾では施行されなかった経緯に言及する資料を見つけた。 (2)【国内調査】広島県と広島市が保有する寄生虫症対策に関する公文書を調査した。地域の保健所や婦人会がどのような活動をしていたのかを示す記録が多くあった。農業との関連で、対策を必要とする事情もわかった。駆虫薬が不足した時期に、役場が発注の取りまとめをしたり、業者から売り込みがあったりという、当時の様子を知ることもできた。また、久留米大学医学部には日本住血吸虫症をはじめとする資料が多く残されており、保健所に関する資料は特に貴重なため写真撮影をした。このほか、日本住血吸虫症に関する歴史資料を郷土教育に活用しようとする山梨県の民間研究会の設立総会に参加した。今後も私は歴史研究者の立場から資料の収集や保全や活用に協力する。 (3)ワークショップ「沖縄で健康と病の歴史を考える」にて、私は市民参加型企画の講師として、日本住血吸虫症の制圧の歴史を参考にしつつ、参加者にCOVID-19の自分史を考えてもらい、グループディスカッションと発表をしていただくという企画を実施した。健康をめぐる歴史研究を身近なものと実感していただくことを目的とした。参加者が積極的に議論して世代や職業を跨いだ有意義な交流と歴史研究の発信ができた。 (4)共編著『感染症でまなぶ日本と世界の歴史』を刊行する(清水書院、2024年6月刊行予定)。私は回虫症や日本住血吸虫症の対策の歴史からみえてくる、20世紀の日本の人々の暮らしやジェンダー、日本・台湾・韓国の国際関係について概説的な論考を執筆した。
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