研究課題/領域番号 |
20K12907
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01080:科学社会学および科学技術史関連
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研究機関 | 広島修道大学 |
研究代表者 |
宮川 卓也 広島修道大学, 人間環境学部, 准教授 (00772782)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 沖縄・琉球の暦 / 『諏吉便覧』 / 亀島有功 / 朝鮮との比較 / 資料収集 / 沖縄暦書の先行研究整理 / 暦書 / 近代沖縄 / 旧暦 / 時の近代 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は「琉球処分」から米軍占領期を経て現代に至るまでの近代沖縄において、旧暦が生き続いている要因・文脈について科学社会史的に分析する。それを通じて本研究は、東アジアにおける「時の近代化」の様相が各地でどのような差異を示すのか、「時の近代化」とは何であったのか考察する。現代でも沖縄の多くの人々は日常生活を新暦で送りつつ、旧暦に基づいたさまざまな年中行事を実践している。民俗学では沖縄の「伝統的」な慣習の内容を詳細に記述してきたが、本研究は暦のあり方をめぐる科学的議論、沖縄で流通していた暦書に焦点を当て、なぜ沖縄では旧暦が生き残ったのかを問いを軸に、東アジアの「時の近代」の様相を浮かび上がらせる。
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研究実績の概要 |
本年度は従来計画における最終年度であったが、先行研究の幅広い渉猟を継続して行いつつ、いくつかの史料を確認・検討しながら9月に国際ワークショップで発表を実施した。それまでの二年間に現地に赴いての史料調査を全く実施できなかったため、発表内容は、前研究課題との比較をベースとしつつ、現行課題の初歩的な調査内容についてである。すなわち、前研究課題(2016-18年度若手B)である植民地朝鮮における新旧暦と、現行課題である近現代沖縄・琉球における暦書の変遷を比較検討した。 前者は、大韓帝国期から統監府・朝鮮総督府期における旧暦の使用状況と人びとの思想、生活、植民地権力による時制介入を論じたもので、それらを公式の暦書の内容変遷から追跡した。一方、明治政府による併合を受けた琉球においても、本土での改暦を受けて強制的な時制変更を迫られたが、なかなか徹底されず、新暦の存在すら知られていない沖縄県内の村・地区もあった。1910年には公式の暦書から旧暦がすがたを消すこととなったが、沖縄では独自に編暦・発行まで行なう者もいた。久米島旧士族の亀島有功である。亀島は 『諏吉便覧』(のちに『選吉必鑑』と改称)と題する暦書を編纂し、1926年逝去後は孫の如玉が継承して編暦・発行が続けられた。こうした個人による編暦は、公式に旧暦を含む暦があった朝鮮とは異なり、旧暦が排除された本土の暦書の使用を強制された沖縄独自のものと見ることができるだろう(むろん、朝鮮でも亀島のような人物が存在した可能性は高いが、前課題では発見できなかった)。ただし、現時点では、亀島がいかにして暦学・天文学に関する知識を会得したのか明らかでない。多くの史料が戦争により焼失してしまったこと、過去二年間に調査がほとんど実施できなかったことが主な理由である。今後の調査課題としたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍により、過去二年間を通じて現地調査を全く実施できなかったことが主な理由である。数少ない先行研究や、関連性があるか定かでないが復刊資料を可能な限り入手して調査を進めようとしたものの、沖縄にしか所蔵・保管されていない資料も多く、計画通りの研究遂行は難しい状況が続いていた。 三年目となる本年度は、調査旅行の規制がいくぶん緩和されたものの、まだ自由な研究の実施は容易でなかったため、当初想定より進捗は芳しくない。 一年間の期間延長により、できるだけ早く研究を進めたい。
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今後の研究の推進方策 |
三年間、一度も実現できなかった現地資料調査を早急に実施し、研究を進めたい。 その成果は、まずは23年8月にドイツで予定されている学会において発表し、その後、論文執筆へとつなげていく。
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