研究課題/領域番号 |
20K12913
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
|
研究機関 | 富山高等専門学校 |
研究代表者 |
久保 陽子 富山高等専門学校, その他部局等, 講師 (10813701)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
|
キーワード | 寺山修司 / 少女表象 / くるみ割り人形 / 唐十郎 / 少女仮面 / 観客席 / 身体 / 少女 / 読者投稿 / For Ladies シリーズ / アングラ演劇 / 演劇 / ジェンダー / セクシュアリティ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、寺山修司(1935-1983)が劇団結成前に創作した若い女性向けの作品群-<女性もの>と呼ぶ―を研究対象にし、作品における女性表象や読者との交流の様相の特質を、少女文学の系譜とも関連づけながら明らかにするものである。加えて<女性もの>の創作が、いかに後の演劇的表現および手法へと繋がっていくのか、寺山のジェンダー/セクシュアリティにおける批評意識の形成の様相を探求する。それにより、寺山作品における<女性もの>の意義を再検討するのみならず、少女文学が持ちうる性差への批評的な視座を問い直し、そのアングラ演劇への影響関係を明らかにする。
|
研究実績の概要 |
今年度は寺山修司の未刊行作品「くるみ割り人形」について、少女の冒険譚に書きかえられた物語において、夢における性のメタファーや少女と母親の関係性についてジェンダーの観点から研究を行った。原作のホフマン「くるみ割り人形」ならびに「砂男」との比較をしながら、<不気味なもの>が少女の性の発達段階における、子捨て、子産み、初潮に対する不安として書き加えられ、少女の心身の成長段階における不安定な心情が、作品において顕在・潜在していることをテキスト分析から明らかにした。加えてサンリオ製作の映画について、後に寺山台本を踏まえ製作された辻信太郎脚本「くるみ割り人形」(1979年)と増田セバスチャン監督「くるみ割り人形」(2014年)におけるアダプテーションの方法を、<カワイイ文化>に即して考察を行った。この研究成果については、口頭発表「寺山修司の人形ファンタジー「くるみ割り人形」」国際寺山修司学会第27回初夏大会2022年6月26日(zoom開催)を行った また昨年度に引き続き、唐十郎の戯曲「少女仮面」について、同時代的な文脈を調査し、作品の成立背景にある少女漫画や児童文学の隆盛や、1960 年に花開いた少女文化との関連性を明らかにした。その上で主人公の<少女性>について、性役割としての従属性から脱し、職業を持ち主体的に生きる女性の表象可能/不可能性を、宝塚という装置に着目しながら考察を行った。この研究の成果は、論文「少女という装置―唐十郎「少女仮面」論」『富山高等専門学校紀要』第10号(2023年3月)として発表した。 また全身に包帯が巻かれた少女をポスターとして用いた寺山修司の演劇作品「観客席」(1979年)について、観客の身体の拘束性や制度としての身体の告発の方法を、テクストから明らかにした。また観客に着目した本作において、同時代的な観客/論の調査も行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は寺山修司の演劇作品を対象に研究を進める計画であったが、さらに同時代的なアングラ演劇作品についても研究を展開できている。加えて今年度は寺山作品の研究も十分にできたが、論文発表には至っていないのでその成果をまとめ発表したい。
|
今後の研究の推進方策 |
現在研究している寺山修司の2作品「くるみ割り人形」「観客席」について、論文発表を行う。 また唐十郎に続き、アングラ演劇人の<少女>を扱った作品について研究を行い、寺山の<少女>観との比較からその特異性をより鮮明化する。
|