研究課題/領域番号 |
20K12921
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 武蔵野大学 (2022) 群馬県立女子大学 (2020-2021) |
研究代表者 |
室田 知香 武蔵野大学, 文学部, 教授 (80650861)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2022年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2021年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 時間 / 和漢比較 / 万葉集 / 馴る / 古る / 飽く / 小町 / 花の色 / 掛詞 / 連想 / いたづら / 身 / 世 / 平安和歌 / 恋歌 / 恋愛 / 婚姻 |
研究開始時の研究の概要 |
平安時代に入って盛行する恋愛観としてよく知られるものに、恋はいつかは終わるものとする恋愛観がある。しかし、平安時代の男女間の和歌の表現を調査してみると、男女関係の推移に関し、そのような恋愛観と拮抗する別種の時間意識の存在も認められ、特に平安中期の一時期、これら二種の時間意識の葛藤が顕著化する様相が押さえられる。本研究は、この二種の時間意識が具体的にどの世代におけるどのような文学集団と表現の中で確立し、定着するに至ったかを検証する。また、それらの表現それ自体の機構と実際の男女関係への影響力を解明する。そして、婚姻史の考察にも応用可能であるような、恋愛文学史の新しい概念の獲得を目指す。
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研究実績の概要 |
当初の研究計画調書における2022年度の予定は、「歌ことば「あき(飽き/秋)」の成立と展開の様相、その転換点を明確化する」ということが中心であった。が、2021年度実施状況報告書に記したように、2021年度中に上代から中古にかけての「古る」「馴る」等の語彙について中国漢詩文との比較の作業から新たな着眼点を見出すことができたことを受け、2022年度は上代以来のこれらの語彙の展開や中国漢詩文との共通性及び差異についての考察を整理することを主たる課題の一つとして据え直した。2022年度はその計画どおり、その成果をまとめ、論文雑誌に投稿し、年度末に論文を刊行することができた。この過程で得ることができたのは、上代においてはいまだ熟しているとはいいがたかった時間推移と人間の魅力との相関関係をみつめる眼差しが、中国漢詩文の表現を踏まえた大伴家持の試みやその後の平安前期頃の文学作品の表現においては「馴る」という和語の特質に依拠しながら深化していき、時間推移の持つ多義性を掘り下げていくことのできる素地が生まれている、という文学表現史上の経緯の具体的な把握であった。2021年度実施状況報告書に「着眼点をさらに明瞭化した上で論文としてまとめ、今後の分析の土台としたい。」と言及していた点は実行することができたと思われる。 2020年度の積み残し課題である歌合・私撰集における「古る」「馴る」「飽く」の用例調査はあまり進展していない。歌ことば「あき(飽き/秋)」の成り立ちについての考察とともに2023年度の課題としたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度から2022年度にかけて、本研究課題において注目している語彙「古る」「馴る」「飽く」等の日本文学における表現史上の展開のあり方と中国漢詩文の様相を比較する試みを進めることができた。この点では着実な成果が得られている感がある。が、当初の研究計画調書においては2022年度は「飽く」「あき(飽き/秋)」の用例に関する分析をある程度かたちにする予定であった。この点はまだ達成されておらず、これから深めていく必要がある。2022年度から移籍したこともあり、研究環境を整え直すことが必要であったといったことが背景にある。歌合・私撰集における「古る」「馴る」「飽く」の用例の分析も今後の課題として残っている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は昨年度に引き続き、必要な書籍の配架など、現在の本務校における個人研究室の環境を整えることを急ぎたい。その上で、 ①歌合・私撰集における「古る」「馴る」「飽く」の用例の調査・分析 ②歌ことば「あき(飽き/秋)」の成り立ちとその後の展開についての考察 を着実に進めたいと考えている。 当初の研究計画調書では、2023年度の課題は「『蜻蛉日記』や『源氏物語』などの散文作品において「古る」「馴る」「飽く」の類義語的な語彙を拾い、それらについても用例調査を行なう。」ということであった。そして、「男女関係における時間経過やそれをめぐる男女の態度の問題」を考え、「男女関係上の時間意識に関わる語彙の体系的な把握とその影響力の検証を行なう。」ということであった。現状の本研究課題の進展状況の上では、2022年度までに得た着眼点をいかし、まずは「飽く」「あき(飽き/秋)」の韻文・散文における用例に関する考察を進めながら、日本の平安時代前中期固有の状況をさらに模索するようにしたい。文学作品中に現れた新しい表現が実際の男女関係における男女双方の態度にどのような影響をもたらすようになったか、また、その時期はいつ頃のことであったかにつき、2020年度時点よりも具体的な観点から分析を進めることができるよう取り組みたい。
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