研究課題/領域番号 |
20K12924
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 高知県立大学 |
研究代表者 |
田中 裕也 高知県立大学, 文化学部, 准教授 (30769138)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 三島由紀夫 / 生成論 / 草稿研究 / 思想と文学 / フロイト受容 / 戦後文学 / フロイト / 日本近代文学 / 三島由紀夫文学館 / 美と性 / 間テクスト性 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の概要を下記の三点に分けて簡潔に示す。 1、昭和二十年代後半から昭和三十年代の三島由紀夫の小説を分析し、小説の中に潜む思想の変化を明らかにする。 2、昭和二十年代後半の三島の思想的根拠となった資料、フロイト『文化の不安』と和辻哲郎『ニーチェ研究』第三版が小説の中でどのように用いられたかを分析する。 3、昭和三十年代の三島文学のテクストを分析し、昭和二十年代との思想的変化を明らかにする。三島の思想的変遷をドイツ観念論から実存主義へと移行するドイツ哲学史の中で議論されたいわゆる〈自己同一性〉の問題から三島文学と〈ナショナリズム〉の関係性を読み解く。
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研究実績の概要 |
今年度は山梨県山中湖の三島由紀夫文学館において、『金閣寺』の原稿について4日間調査・研究をおこなった。日程が限られているため3分の1程度の原稿を確認し、必要部分の翻刻と分析をおこなった。まだ全ての調査が終わっていないために次年度も調査の必要があるが、先行論文での報告以外に、新たに明らかになった部分も多い。『金閣寺』柏木の人物造形をめぐって、仏教系のテクストだけでなく、フロイトの思想を通した〈性〉と〈美〉の問題が用いられていることや、谷崎文学との関連性があることなどが見えてきた。次年度の調査によってより明確な問題点を抽出し、論文を執筆し発表する予定である。 また三島由紀夫の蔵書について、2点を購入した。戦後の三島由紀夫はフランス文学について積極的に発言しているが、フロベールについてはそれほど多くない。しかし三島はフルベールの「文体」に関する発言について、積極的に線を引き・メモをしている。これらについてもさらなる調査が必要だが、次年度に「研究ノート」等で報告する予定である。 ただし今年度も昨年度に引き続き、新型コロナウイルスの流行により、急遽出張ができないことが2度ほどあった。そのため本来は今年度で『金閣寺』の原稿の調査・研究を終える予定であったが、次年度にも引き続き調査・研究せねばならない。三島由紀夫の草稿やメモを調査・研究し、三島由紀夫文学の生成を中心とする本研究には、コロナ禍の影響が大きくあったと付け加えておきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究だが、やや遅れていると言わざるを得ない。その理由は3年間にわたる新型コロナウイルスの影響によって、三島由紀夫文学館への調査・研究に行くことができなかったことと、三島由紀夫文学の受容に関する調査ができなかったためである。三島由紀夫文学館での調査は1回につき、1週間ほどの日程が必要である。そのため大学の授業日程上、ゴールデンウィークや夏期休暇を使用せねばならないが、それらのタイミングで新型コロナウイルスの流行の波が来てしまったため、調査を急遽中止せざるをえなかった。 また学内外の役職等の業務が平日以外にも及んでしまったことと、代表者が1ヶ月体調ほど不良であったため、どうしても研究に割く時間が取れなかったことも要因の一つである。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は新型コロナウイルスが5類に移行するので、三島由紀夫文学館での調査・研究がスムーズにできる。昨年度からの調査を再開し、『仮面の告白』と『禁色』『金閣寺』に関する論文を執筆し発表する予定である。この成果によって三島由紀夫がなぜ文学作品のなかで〈性〉を扱わねばならなかったのが明らかになると考えている。
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