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日本近現代文学における〈世界〉概念の変遷とその表象

研究課題

研究課題/領域番号 20K12925
研究種目

若手研究

配分区分基金
審査区分 小区分02010:日本文学関連
研究機関福岡女子大学

研究代表者

坂口 周  福岡女子大学, 国際文理学部, 准教授 (20647846)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
キーワード世界文学 / ポストヒューマン / 語りの構造 / 国木田独歩 / 大江健三郎 / 宮崎駿 / 倫理と美学 / 現象学 / 世界表象 / 感情移入 / 正岡子規 / 村上春樹 / 文学理論 / 現代小説 / 近現代文学 / 世界 / メディア文化 / 思想史
研究開始時の研究の概要

本研究は、近現代日本文学によって表象されてきた「世界」の意味を系譜学的に探求することで、従来の文学史を異なる角度から理解することを目的とする。通常、文学の世界性としてイメージされる「世界」が地理的な拡がりであるのに対して、「私」の主観の拡がりを表す意味での「世界」も等分に扱って、両者の関係性を問題にしている点が特徴である。近代小説は、グローバルな現実の「世界」意識の登場と同時に、虚構の「世界」を人間の主体性によって囲い込む人間中心主義的な表現形式として隆盛した。二つの「世界」の連動を解き明かすことで、近代の政治・経済・文化の各様式の変遷を統一的に語る視座を文学研究から探るのが狙いである。

研究実績の概要

本研究課題の集大成として、令和6年度中に学術単行本の出版を計画しているが、その脱稿に向けて既に執筆した分に対する大幅な修正と加筆を施した。口頭発表を極力控えることにし、依頼原稿を含めて研究の手薄な部分にできるだけ関連付けたテーマを設定して個別の論文執筆及び公表を行い、その際に得た新たな認識と成果を単行本の加筆修正の作業にフィードバックする形で進めた。論文執筆は4本で、タイトルはそれぞれ①「「人間」を定義する文学―ポストヒューマン時代における「あいまい」な人間性― 」、②Kunikida Doppo and the Phenomenological Turn at the End of the Nineteenth Century、③「倫理を問いかけるアニメーション――『君たちはどう生きるか』の「世界」」、④「世界」文学試論―貧乏的世界文学の系譜と村上春樹―」である。内容は、単行本原稿の各所に直結しており、特に④は単行本全体の議論の枠組を決める序章(あるいは1章)の後半分に新たに追加するものとなり、最も重要な成果といえる。①と③は依頼原稿だが、両者とも単行本執筆に資するよう主題を調整し、実際に予想以上の知見を得た。①に関しては、既に単行本中にも相当量を割いて大江健三郎を論じる箇所があり、議論の整理と加筆修正に役立った。③に関しては、「世界」がジャンルを超えて適用可能な理論的視点であり、逆に比較を通して物語芸術の各メディア的特性を論じうる概念であることを証す良い例となった。具体的には、アニメにおいては容易に表象可能な「世界」それ自体の変化を文学で描くのに如何なる形態がありうるのか、新たに考察を拡大するきっかけとなった。なお間接的な成果として、令和5年度中に「印象を描く時代―日本近代の文学と美術―」と題した所属大学主催の公開講座を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

前年度の「今後の研究の推進方策」では、令和5年度中に出版が適い、それを前提に各種学会やシンポジウムに参加してフィードバックを得ることを計画していたが、実際に出版するには内容の洗練が不十分とみて、途中でエフォートのほとんどを論文の執筆および改稿に充てる計画に切り替えた。結果は功を奏し、4本の論文発表という具体的な成果をみた他、単行本用の原稿の構成や密度も大幅に改善した。大きな修正必要箇所は最終章の第6章を残すのみとなった。本書の最終的な改稿に必要な考察は、令和6年度前半に行われる学会発表を通して深める予定であり、1月にプロポーザルは無事に選考を通過した。実際の出版を経た後に控えている計画事項は、1年間の延長によって実行する予定である。コロナ禍による遅れが尾を引いて計画を二度三度と調整変更する必要があったが、その上での最終的な全体の進捗状況は90%ほど達成したといえ、概ね順調と考える。

今後の研究の推進方策

令和5年度が本助成事業期間の最終年度だったが、一年間の延長願いを提出し、承認された。よって令和6年度は持ち越していた計画事項の完遂を予定する。具体的には年度前半に昨年度から予定されていた海外の学会発表一つ(及び同学会プロシーディングへの投稿)と急遽予定として入ったシンポジウム登壇の成果を踏まえて、単行本原稿の最終章の修正を7月前半までに済まし、全体な最終調整を夏季中頃までに終了、8月中旬までの脱稿を目指す。8月下旬に校正を開始し、9月中旬までの出版を予定する。また、同書の第一章に相当する論文の英語訳を本助成事業の初年度末に作成済みだが、修正と校正を施して学内紀要論文に投稿する予定である(10月)。同論文掲載誌の発刊予定月は年度最終の3月のため直接の活用は適わないが、年度後半は単行本の成果に対するフィードバックを国内外から得て、今後の研究方針の修正と検討に充てる。順調に進めば、当初計画の主要目標は概ね達成したことになる。

報告書

(4件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 2020 実施状況報告書
  • 研究成果

    (13件)

すべて 2023 2022 2021 2020

すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件)

  • [雑誌論文] 「人間」を定義する文学―ポストヒューマン時代における「あいまい」な人間性― 2023・7臨時増刊号(総特集*大江健三郎)2023

    • 著者名/発表者名
      坂口周
    • 雑誌名

      ユリイカ

      巻: 第55巻第10号 ページ: 480-488

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [雑誌論文] KUNIKIDA DOPPO AND THE PHENOMENOLOGICAL TURN AT THE END OF THE NINETEENTH CENTURY: AN INTERFACE BETWEEN EMPATHETIC AESTHETICS AND THE MODERNIZATION OF NARRATIVE STYLE2023

    • 著者名/発表者名
      坂口周
    • 雑誌名

      PAJLS

      巻: 22 ページ: 27-35

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] 倫理を問いかけるアニメーション――『君たちはどう生きるか』の「世界」2023

    • 著者名/発表者名
      坂口周
    • 雑誌名

      現代思想

      巻: 第51巻第13号 ページ: 92-101

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 「世界」文学試論―貧乏的世界文学の系譜と村上春樹2023

    • 著者名/発表者名
      坂口周
    • 雑誌名

      文藝と思想

      巻: 第88号 ページ: 21-54

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] 小説家としての子規―共感的モダニズムを先駆する「写生」―2023

    • 著者名/発表者名
      坂口 周
    • 雑誌名

      文藝と思想

      巻: 第87号 ページ: 17-47

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 世界文学の中の村上春樹―日本近代文学の環世界―2022

    • 著者名/発表者名
      坂口 周
    • 雑誌名

      立命館言語文化研究

      巻: 第34巻2号 ページ: 105-117

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 坪内祐三『慶応三年生まれ 七人の旋毛曲り――漱石・外骨・熊楠・露伴・子規・紅葉・緑雨とその時代』再読2020

    • 著者名/発表者名
      坂口 周
    • 雑誌名

      ユリイカ

      巻: 第52巻第5号 ページ: 398-406

    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 現代小説と感情移入の機制―理論的共生としての「演技」の系脈―2020

    • 著者名/発表者名
      坂口 周
    • 雑誌名

      昭和文学研究

      巻: 第81集 ページ: 2-16

    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
  • [学会発表] Kunikida Doppo and the Phenomenological Turn at the End of the Nineteenth Century: An Interface between Empathetic Aesthetics and the Modernization of Narrative Style2022

    • 著者名/発表者名
      坂口 周
    • 学会等名
      AJLS (UCLA)
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] 世界文学の中の村上春樹―日本近代文学の環世界―2022

    • 著者名/発表者名
      坂口 周
    • 学会等名
      早稲田大学国際文学館 Open Talk
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 「世界文学」を解離する方法に向けて―比較文学の可能性?―( シンポジウム「二つの「世界文学」の間―いま比較文学は何ができるのか―」)2021

    • 著者名/発表者名
      坂口 周
    • 学会等名
      日本比較文学会 第83回全国大会
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 翻訳的日本近代と純粋言語の夢―村上春樹と先行者たち― (パネル「世界文学再考――『生まれつき翻訳』のアクチュアリティ」)2021

    • 著者名/発表者名
      坂口 周
    • 学会等名
      世界文学・語圏横断ネットワーク(CLN)第14回研究集会
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] 〈第一部・第二部を中心に〉(合評会シンポジウム「佐藤春夫を現在に展く:河野龍也『佐藤春夫と大正日本の感性―「物語」を超えて』を端緒に」)2021

    • 著者名/発表者名
      坂口 周
    • 学会等名
      「私」から考える文学史の会主催(オンライン開催)
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 招待講演

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公開日: 2020-04-28   更新日: 2024-12-25  

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