研究課題/領域番号 |
20K12928
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
小泉 夏子 (徳永夏子) 日本大学, スポーツ科学部, 講師 (00579112)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 女性雑誌 / 投稿雑誌 / メディア / ジェンダー / セクシュアリティ / 少女 / 近代日本文学 / 抒情 / 吉屋信子 / 近現代日本文学 / モダニズム絵画 / 少女雑誌 / 女性文学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、少女投稿雑誌『令女界』の特質を明らかにし、女性の書く場を構成する言説論理を解明する。『令女界』の資料を整備し、編集部と投稿者の交渉や、ジェンダー及びセクシュアリティに関する規範の生成と流動化の諸相を明らかにすることで、雑誌の運動体としての側面を解明する。また、同時期の他の女性投稿雑誌との比較を行い、大正期後半から昭和戦前期において女性たちのメディアへの参加がどのような構造のもとで可能となったか(あるいは制限されたか)を解明する。
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研究実績の概要 |
本研究は、未整理である『令女界』を調査し、「モダニズム絵画とレズビアン・セクシュアリティを題材とした小説の分析」(課題①)、「投稿文の分析と読者層の変化によるジェンダー規範変容の解明」(課題②)の2つの課題を解明することを目指していた。このうち2023年度は、課題②を実施する計画であり、資料の分析とともに、研究会(「第2回『令女界』と戦後の女性雑誌に関する研究会」2023年7月10日、於日本大学、Zoom併用)を開催し、課題②のテーマを進展させた。 研究会では、前年度に開催した同テーマの研究会での議論を踏まえ、「1945年前後の『令女界』における女性イメージと文化現象」と題して、戦前戦後の『令女界』における女性表象の変容について報告した。特に母娘言説に着目し、近年のジェンダー研究におけるシスターフッドの理論から母娘表象の捉えなおしを図った。その結果、山岡荘八や白川渥などの評論で説かれる母娘関係が、読者投稿欄にみられる母娘イメージとは明らかに異なっており、認識のずれがあることがわかった。出席者から、同時代の女性雑誌と比べてみると、そこで浮かび上がった特徴が、『令女界』の特異な機構による独自の表象であるという助言を受け、『令女界』にみられる読者と認識のずれがどのように発展していくのか、周辺のメディア状況を勘案しつつ、視野を広げて研究を進めていく必要があるという認識に至った。 また、研究会では戦後の女性雑誌の研究を行なっている井原あや氏に講演を依頼し、専門的知識を提供してもらうことで、複合的な観点から雑誌を捉えることができた。特に、同時期の女性関連雑誌に対するGHQの検閲に関する助言を受けて、『令女界』の検閲の特異性が明らかとなった。議論を通じて、そこで生じた女性表象が、女性文化全般の問題と関連しており、新たな戦後女性表現史の構築につながる重要な視点であるという認識を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、大正期後半から昭和戦前期において女性たちのメディアへの参加がどのような構造のもとで可能となったか(あるいは制限されたか)を、少女投稿雑誌『令女界』を対象として解明することを目的としている。そのため、雑誌『令女界』の特徴をあぶり出し、メディア史上の位置づけを明らかにするだけなく、女性の文学が生産され享受される〈場〉全体の構造を解明することを目指した。 研究課題期間内に『令女界』の投稿の様相や、ジェンダー及びセクシュアリティに関する規範の生成と流動化の諸相を明らかにし、雑誌の特性と、それが置かれた状況の一側面を把握することはできた。だが、〈場〉の構造を考えるには、複合的な観点から状況を捉える必要がある。そのために国内外の関連領域の研究者との学術交流と資料調査が不可欠であるが、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、渡航や現地での研究が計画通りに実施できなかった。シンポジウムや学術セミナー等をオンラインで開催し、専門的知識の共有を図ったが、充分にはできなかったため、研究期間の延長を希望した。
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今後の研究の推進方策 |
まず、既に行った「モダニズム絵画とレズビアン・セクシュアリティを題材とした小説の分析」(課題①)、「投稿文の分析と読者層の変化によるジェンダー規範変容の解明」(課題②)を論文にしてまとめ、研究の公表に努める。 さらに、計画通りに実施できなかった国内外の関連領域の研究者との学術交流と資料調査を行う。具体的には、課題①で検討したモダニズム画の輸入先であるフランスの女性雑誌を調査し、その共通点と差異を明らかにするとともに、同時代の文化的状況・言説といかに切り結ぶのか、どのような揺れがあるのかということについて究明する。さらに、女性投稿雑誌に詳しい小平麻衣子氏(慶應義塾大学)、またフランスの日本文学・文化研究者クリスティン・レヴィ氏(元ボルドー第三大学教授)等を招き、1930以降の女性の書き手を取り巻くメディア状況についての国際会議を開催する。
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