研究課題/領域番号 |
20K12930
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 法政大学 (2021-2022) 早稲田大学 (2020) |
研究代表者 |
佐藤 未央子 法政大学, 文学部, 助教 (50827475)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 日本近代文学 / 映画 / 谷崎潤一郎 / 女優 / 検閲 / 演劇 / 日本文学 / アダプテーション / 大映 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、谷崎潤一郎の小説の映画化について、戦時下・占領期・復興期の三期に分け、各時期の代表的作品にみられる問題性を検証する。国際的評価の高い映画会社大映での映画化を例として、映画化する際に働いた時代的なバイアスや表現規制と、女性(女優)の演出に焦点を当てる。文学が映画化によって持つ新たな相貌と波及効果および、女優が社会状況を反映して表象される様相を実証することを目的とする。戦時下・戦後映画界において谷崎作品が再生産されていく過程を検証し、歴史的に意味づける。
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研究実績の概要 |
前年度から継続して、『映画(キネマ)旬報』『日本映画』『大映映画』といった映画雑誌の網羅的な調査を行った。戦前・戦後大映の製作方針や戦略を整理し、映画の評価・批評文や興行収入といった観客の反応を通してその妥当性を検討した。具体的にはまず、戦時下に製作された野淵昶監督の映画『お市の方』(1942年、原作は谷崎潤一郎「盲目物語」)に関する研究成果を、日本近代文学会春季大会で発表した。質疑をふまえ、論文投稿に向けて再検討を行っている。 また、谷崎潤一郎の脚本「蛇性の婬」(1921年)について、原作(上田秋成『雨月物語』「蛇性の婬」)との詳細な比較を行い、スチール写真の場面を特定した。また製作側の言説や批評を調査し、古典文学のアダプテーションに対する意識差を分析した。『雨月物語』は戦後大映で、谷崎と交流の深い川口松太郎の脚色、溝口健二監督により映画化されており、主題面・表現面の系譜を明らかにすることが課題である。溝口は前掲の野淵と作風面で重なるため、溝口の文芸映画(主に泉鏡花作品)に関する資料も収集して検証した。 映画倫理規程に基づく原作改変や成人映画指定の実態も継続して調査を進めた。映画『痴人の愛』は1949年、60年、67年の各バージョンを比較した。映画『卍』(1964年)は原作との比較、増村保造監督の発言や宣伝用資料、脚本の調査や、イタリア・ドイツでの映画化(リリアナ・カヴァーニ監督、1985年)との比較を行った。以上を通して、セクシュアリティ表象の時代差・地域差による批評性の差異を検証した。 以上の主要な研究に加え、谷崎が猫のような女性(女優)を好んだことをふまえ、東京映画『猫と庄造と二人のをんな』(1956年)の資料も収集した。その一部を、猫や映画、美容を主題にした戦前の短篇小説に関する論文に活用した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、資料収集や検討・分析において、これまでの後れを取り戻すことができた。「研究実績の概要」で述べた、戦前・戦時下・戦後という時間軸にもとづく各作品分析は大幅に進展したものの、成果の公表まで至らなかったことが課題である。
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今後の研究の推進方策 |
実施期間を2023年度まで延長したため、研究内容の正確性を高めたうえで、学会発表や論文投稿を行う。具体的には、日本近代文学会(『日本近代文学』)、昭和文学会(『昭和文学研究』)等での公表を目指す。映画関連資料の収集に際しては、引き続き古書店から入手するほか、川喜多記念映画文化財団や早稲田大学演劇博物館、国立映画アーカイブ等の協力を得る。また、これまで調査してきた関連資料や、谷崎の映画化作品の一覧をリスト化あるいはデータベース化し、公開する計画を立てている。ほか、谷崎の映画言説に関する資料を紹介する論文の作成・投稿準備も進めている。
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